あとがきです。
【第二部を読んでくださっていることを前提に話をします。黒幕の話とかをしているのでご注意ください。】
まずこんな超大作にお付き合いいただきありがとうございます。読むのも大変だったかと思われますが書くのも大変でした。
なんでこんなことになったのかというと登場キャラクターと必要エピソードが多かったからです。プロットを立てた己を何度か呪った。「これ面白いけど書くの私だぞ、わかっているのか?!」を10回は言った。
でも心の底から面白いと思ったアイディアは書いたほうがいいなと思ったんですよ。私が大変なだけなら頑張ればいいので…。
などとイキったことを考えていたら書いても書いても終わらない(なぜなら25万字近くあるから)ので本当に死ぬかと思いました。
一応販促小説だったので締切があり、締切を設けて長編小説を書くのはこれが初めてで、しかもこの量で、終盤は「西尾維新先生も週刊連載やりながら単行本作業を頑張っていらっしゃるんだから負けてはいけない…。京極夏彦先生も3ヶ月で鵼を上梓しているのだから私にもできる…」などと神をも恐れぬ呪詛(レジェンドと己を並べる)を唱えながら進行し、書き上げたときはふつうに安堵で泣きました。
次は絶対余裕を持って書き上げようと心に誓った。
本作は一部から登場しました梁飛龍と鹿苑旭にスポットを当てた話です。
例によって月浪縁と芦屋啓介はろくな目に遭っておりません。
割とゲーム的な話になったなと思います。禊の名刺はすごい便利アイテムでしたね。また各章各人が怪異を呼ぶ、払うときの「起きろ」「来い」「滅べ」「戻せ」「燃えろ」の口上はBLEACHっぽくて気に入っています。
ちなみに梁の口上で伏せ字になっていた部分には『画竜点睛の龍』が入ります。
梁飛龍の設定は一部の頃から決めていました。今回どうしても梁と張僧繇の話が書きたかったのです。張僧繇が史実の人ということもあり、とにかく要求される知識が多くてキレそうになりながらここだけのために資料をかなり読んでいます。
縁に対する偏愛について、そもそも梁は張僧繇のことが大大大好きだし、縁に張僧繇と近しい境遇、才覚を与えたので、好感を持ちやすい下地を作ったのは梁自身だぞと思いながら書いていました。すべておまえの自業自得です。
人間に擬態しているときと本性で口調が変わるのは、素で対応してしまうと縁に対する好意を隠し切る自信がなかったので演技をしています。
ちなみに梁は画竜点睛の逸話が伝わっている国の言葉は全部喋れます。Google翻訳みたいな奴ですね…。
鹿苑旭はいわゆる天才なんですが、天才だからって何もかも上手くいくかというとそうでもないよなと思ったので、そのように書いています。鹿苑が喫煙者なのは入神の影響も大きいです。言動に反して繊細で一途な人です。アホに見せかけてアホではないです。決して嫌いじゃないんですが本当に全てに恵まれている男なので書いていてしばしば腹が立ちました。でも4回死んでいるので許してやってもいいと思います。
酒巻虎徹は関西弁で和服という要素の多いキャラですね。
酒巻にとって鹿苑は本当に癪に障る嫌な奴だろうなと思いますが、と同時に鹿苑が卒業後、密に連絡を取るのは酒巻のような気がしています。くたびれているのが異様に似合う設定でいかせてもらいました。新キャラの中で一番凝ったデザインの人なのでそのうち絵も描いてみたいです。
鳳アンナも私は鹿苑とは違う方向の天才だよなと思いながら書いていました。
潔癖な人です。「作家と作品は別」と思うことができれば楽ではあるんでしょうが、それができないからこそ鳳は作家なんだろうとも思います。ゆるゆるの私とは似ていないタイプです。
泥亀伊吹を書くことで私の思う「強い女の人」の幅がちょっと広がった気がしました。少しずつでも前に進もうとする人はみんな強いです。鹿苑に失恋しましたが、鹿苑にはもったいない人だと思います。泥亀の衣装は縁への変身願望で少女趣味っぽくなっており、そこそこ似合ってはいますが完全ではない感じです。
月浪禊についても軽く触れねばと思います。私の趣味を詰め込んだ人です。強い!怖い!!!家族を心から愛している人なんですが、色々な要因でそのように振る舞えない人です。ある意味で禊が中華百鬼夜行の要因でもあるなと思いますし、禊もその自覚はありそうです。
今回芦屋啓介に関しては、一番まともで正しい人であるところの彼が月浪縁のそばにいる、ということが絶対的に重要なのでそのように書いています。なんかカクヨム版だと芦屋が透明な床にビビり散らかす回だけ異様に読まれていてちょっと面白かったです。
月浪縁は本当にろくな目に遭わないのですが今回も半ギレになりながら立ち向かってくれました。捻くれていますが優しい人なので最後は対話を望んでいます。縁視点だと梁に対しては終始「なんなんだ君は…」という感じだったので「ちゃんと話そうよ」と思っているみたいです。
人外が芸術と一人の芸術家を心から愛して慕った結果をどうしても読者にお見せしたくて本作を書きました。
私は、作ることは悍ましい一面もありつつ、美しい営みだと信じています。その所信表明のようなお話になりました。我ながら青臭い。新人じゃないと書きにくい話なのかもと思ったので、新人のうちに書いておけてよかったなと思います。
百鬼夜行は閉幕です。
かなりの怪作だったかと思われますが楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
ちなみに書籍版では梁飛龍と鹿苑旭の描写がかなりマシマシに加筆されているので気に入った方は書籍版もよろしくお願いします。カクヨム版より二人ともかなり喋ります!そして書籍版はカクヨム版より読みやすいです。(当社比)
ではでは、最後になりましたが、ホラーもホラー以外もチャレンジしていく所存です。
これからも己が面白いと思う小説を書くのに心血注いでいきますので、ご縁があればよろしくどうぞ!