遥か太古に遡り。
悪魔が人族との間に生した子供が、魔人となって子を産み増やし、人々を蹂躙して世界の八割を征服した。
しかし、世界征服を目前に、人族に生まれ落ちた〔眷族〕によって魔人の領土は大きく失われ、極寒の大地の光の届かぬ地の底へと追いやられる事になる。
人族を奴隷やゴミの様に扱い、圧倒的に裕福に暮らしていた魔人達は、幾度と無く人族の領土に攻め入って、かつての覇権を取り戻そうとしたが〔眷族〕の力は圧倒的で、それに加えて勇者や英雄などと呼ばれる者達も現れ始め。
代を重ねる事に、悪魔の血が薄まり、力が弱まった魔人達は、いつの日からか地の底で大人しく平穏な日々を送る事になっていた。
皮肉にも、力を弱める事で、地上を諦める事で、平穏な日々が訪れたのだったが、それも長くは続かず。
第一次悪魔大戦に巻き込まれた魔人達は、一人の〔眷族〕の出現で再び覇権を求めた。
〔眷族〕は、魔王を名乗り、人族や魔獣や獣人達から領土を奪い、地上へと出て来た。
そして、第一次悪魔大戦を制したのは、魔王が率いる魔人の国〔魔王国ベルザ〕だった。
悪魔大戦を制した、魔王が悪魔に成る際に〔魔王国ベルザ〕に産み落として行った魔獣が、〔灰土樂—— ドリエラ〕だった。
産まれ落ちたばかりの時は、粘土の様な土塊だったが、多くの血肉を吸い力を得ると、悪魔となる前の、魔王の姿に形を変えて、まるで魔王の再来の様に言葉を発して振る舞った。
第二次悪魔大戦の際には〔眷族〕が不在ながら〔魔王国ベルザ〕の領土を守りきった、先代の魔王と瓜二つの魔獣に対して、人々は畏怖の念を込めて転魔の名を与えた。
転魔灰土樂——てんまドリエラ
そして、現在——
再び魔族の中に生まれ落ちた〔眷族〕の成長を見守りながら、第三次悪魔大戦を誘発すべく、水面下で動いている。
灰色の肌に、血の様に赤い髪。
先代魔王〔女性〕の姿を忠実に再現している為に、女性らしい身体つきに、ドレスが似合う程よい胸の膨らみ。
子を産む事は出来るが、大きく力を失ってしまう為に処女を貫き通しながら、〔眷族〕を我が子の様に可愛がり、〔眷族〕を産んだ魔人の王族夫婦と家族の様に寝食を共にしている。