• 異世界ファンタジー
  • 現代ファンタジー

その②▶︎究極鬱展開です

【神樹転生—— 最恐の吸血鬼と望まれない子供達は異世界で無双する】

ネグレクト——
少年は生まれた時から一人で生きて来た。
最初の記憶は公園のゴミ箱の中だった。
通りすがりの警官に「臭い——」と悪態をつかれながら、保護されて。
施設に預けられるが、直ぐに祖母が迎えに来て。しかし、食うも眠るも全て一人で出来た少年は誰からの愛情を受ける事も無く。
腹が減れば、菜園やスーパー、コンビニで盗みを繰り返し空腹を満たし。
眠くなれば、誰も居ない家で寝る。
学校には行かず、同じ様な仲間達が集まる橋の下や、公園で過ごす事が多く。
そんな生活を過ごして十数年。
最恐と出会ってしまう。

ホロコースト——
青年は生まれた時から、自分は周りの人とは違うと気付いていた。
学習をすれば、どんな事でも一度で全て記憶出来て、運動をすれば誰よりも優れた結果を残し。
しかし、それらは全て夜の出来事で。
昼間は、誰よりも弱く、意識は白濁としていて。特に日光の当たる場所では、まともに歩く事も出来ずに。
低血圧と、教師や友人からは馬鹿にされる事もあったが—— 彼等は決まって夜になると後悔する事になった。
青年が覚醒したの、高校三年の夏の夜だった。
彼はそれまで、普通では無い身体で普通に生活して来た。
友達と遊んだり、勉強したり、恋をしたり、そんな普通の毎日を。
しかし、夏の夜、歩きスマホをしていた一人の男と肩がぶつかった事をキッカケに運命の歯車のタガが外れてしまった。

「どこ見てんだよ!? あん?」

歩きスマホをしていたハズの男が、青年を突き飛ばし。
それだけで済んで居れば良かったものを、青年と一緒に居た女達に手を出し始めて、終いには青年がずっと恋心を抱いていた女性の乳房を鷲掴み、スカートの中に手を入れて。
それを見て青年の歯車が壊れてしまう。
もしくは、この場合、正常にハマってしまったという方が正しいのか——

気付くと、歩きスマホをしていた男の頭は飛んで、首からは血が吹き出していて。
その血を浴びて、青年の瞳はルビーの様に赤く染まり、それを甘く心地よいと感じてしまった。

「殺す——」と、言って既に殺しているのだが。首から血を吹き出しながらも仁王立ちしている男の心の臓を貫いて、流れでる血液を啜る。
身体に漲る力を感じて、泣き叫び逃げ惑う周りの人々を狩り尽くし、気付くと意中の女性も手に掛けていて。
それでも、全く罪悪感は無く、反対に犯して啜るその行為に凄まじい快楽を感じていた。

歩きスマホを殺し——
電車で煩い奴を殺し——
自転車で歩道を進む奴を殺し——
歯向かう国家権力を殺し——
殺して犯して啜って——

「あぁ、俺は人じゃあ無かったんだ——」

そんな事に悦びを感じていたのだが、その世界においての遺物を女神は見過ごす事はなかった。

『随分と派手に暴れましたね?』

「誰だテメェ? 殺すぞ?」

言った時には既に殺していた。
いつもでアレば。
しかし、そこには凛として立つ女性の姿があった。

「何をした? もしかして同族か?」

『貴様の様な低俗と一緒にするでないぞ』

襲い掛かったのは、女神の方だった。
しかし、通りすがりの少年には女性が襲われている様に見えて。

「やめろー——」と、飛び出したは良いものの、少年の胸は女神の腕が貫き。少年の首は、青年が切り落とし。
ゴロゴロと転がる景色の中で、何が起きたのかと混乱していると、女神が憐れみの声を掛けた。

『どうなってる? ん? 私、もしかして殺っちゃった?』

「見りゃあ、分かるだろ?」

青年の笑った声が耳障りで、次の瞬間には青年の頭部は吹き飛んでいた。

『黙れ。貴様のせいで善良な少年が—— そうだ、こうしよう!』

————

「俺は、死んだのか?」

青年にある最後の記憶は、女神の腕が自分の頭部を貫通する光景で。痛みと熱が押し寄せて、倒れそうになるが、体は動かず。

「どういう事だ!?」

『おまえは樹に転生させた。生前の悪行を悔いて朽ちるまでその世界で過ごす事だな』

「樹だと?! ふざけるな! 今すぐ元に戻せ!」

————

『何があったんだ?』

少年は訳も分からず、気付いた時には、優しい女性の腕の中に居て。

『声も出せない。どうなってる? 身体が縮んだのか? それとも、こいつらがデカいのか?』

状況を理解するのに数日を費やした。

『生まれ変わったのか?』

その世界は、少年の知らない愛で満ちていた。
優しい母親、逞しく頼もしい父親。
裕福な家庭では無かったが、いつも笑顔に溢れていて。
しかし、そんな幸福は長くは続かず。
野党に襲われて、母親は輪姦されて、父親は斬り裂かれ、生まれたばかりの妹は拐われてしまった。

「俺から全てを奪うのか! だったら、俺は世界の全てを奪ってやる!」

『…………』

そんな少年に、女神は声を掛ける事は出来ずに、見守る事しか出来ずに。
それでも、既に力は与えてしまっていて。
その事に気付いた時に運命は逆転してしまう。

心優しい不遇の少年は、吸血鬼の力を手に入れて世界に復讐を誓い覇道を進み。

残虐な青年は、全ての力を失い、人の優しさに触れて世界と自身を取り巻く人々を救おうと、何も出来ない樹の力で足掻き。

二人が出会った時、物語は動き出す。

少年が世界を滅ぼすのか。
青年が世界を救うのか。

そんな物語が動き始める——

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する