「あー、もうそんな時期だっけ?」
昼食の買い物をしようと思い、ネットで割引がないか探している時のこと。ホームに大きく「バレンタインデー」と見出しがつけられており、僕は意図せずとも目に入ってしまう。
万年陰キャの僕にとってのバレンタインは、りーの手作りチョコが食べれるという至福の時間だった。が──。
「……はっ! り、りーが……いな……い……?」
な、なんということだ。1年に1度のことなのに、それがないとなると──。
「……ら、来年は実家に帰ろっかな……」
死にそうなほどのショックを受けつつも、そう決心した。
☆
決心したからって、ショックからはそんな簡単に立ち直れないよね。
自炊する気をなくした僕は、今日は家で1人だという祐希を誘って近くのファミレス店で昼食を済ませた。
そして現在、僕の部屋には祐希とみのがいます。
……なんで?
「凪くん凪くん、多分心の声だと思うけど、声になっちゃってるよ?」
「これは失敬」
「それにしても、どうしたんだ?」
ファミレスから帰ってる時。祐希と「アニカーしようぜ」という話になっていると、偶然みのと遭遇。もちろん、帽子を深く被ってバレないようにした格好で。
「せっかく仲良くなれたので、友チョコ、作ってみたんだ!」
少し前からではあるけど、やっぱり学校では敬語の人がタメ口で話してくれるのって、なんかラブコメっぽくて最高ですね。
「え、マジで?! ってか、みのも料理できんの?」
「人並み程度だけどね」
「人並みって言う人は上手な人じゃん……」
「ちなみに凪は?」
「ま、人並みかなと」
「う、うぜぇ」
「そんな祐希は?」
「……ま、俺も人並みかなって☆」
「うわっ、このチョコめっちゃおいしい!」
「あ、ほんと? よかったです……!」
「うおぉぃい?!」
「え、祐希食べないの?!」
「いや食べるけど!! ってうまっ!?」
☆
みのは「それじゃ、他の友だちのところにも行かないといけないから!」と言って帰っていった。
そして祐希とアニカーを始めよう、となったその時。祐希のスマホに電話がかかる。
画面にはそうらの文字が。
「あれ、優奈からだわ。出るぞ?」
「んー」
「もしもs」
『変態さん今どこです?』
「せめて最後まで言わせてくれ……今凪の家にいるぞ?」
『あ、そういうことですか』
「どうかしたの──」
ブーブー。
「切るのはえーよ……」
「祐希ついに変態さんにツッコまなくなったんだね……」
「無駄ってこういうときに使うって知ったからな!」
そうしてアニカーの準備を終わらせ、試合が開始する。
スリー。ツ……。
ピーンポーン。
僕はすぐにゲームを中断する。
「全然始まんねえ!!!」
玄関を開けると、優奈が立っていた。
「あれ、優奈どしたの? 連休ってわけでもないのにここまで来て」
「せっかくのバレンタインなので零様……じゃなくて凪さんにチョコ渡しに来ました!」
「え、ほんと? ありがとー! とりあえず中に……」
「あ、あと1つプレゼントです!」
「ん? プレゼント? どのチョコしか持ってなくない?」
チョコだけでもめちゃくちゃ嬉しいのに、プレゼントまであるなんて。でもそれらしいものなんて──。
「──わっ!」
と、その時。家で毎日聞いていた声とともにりーが僕の目の前に来る。
「わっ……っと。あれりーじゃん! 学校大丈夫なの?」
「今日このあと高速で帰ればだいじょーぶっ!」
「凪ー、まだかー……ってあれ優奈とりーちゃん? どしたん?」
「璃奈っちと一緒にチョコ作ってきたんです。一応、一応ですが、祐希さんにも義理の義理の義理の義理チョコを作ってきましたよ」
「多くね?」
「私は友チョコだよ?!」
「りーちゃん、ありがと……ちなみに凪に対しては何チョコ?」
「ガチ恋チョコですかね?」
「お兄ちゃん好き好きチョコ、かな」
「今泣きわめいてもいいと思うんだが」
「あ、あはは……」
あとがき
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隠し部屋の特別編は6時頃に公開する予定です!