かくよむゆーざーもすなる近況ノートといふものを我もしてみむとするなり———
除夜の鐘が鳴る……とは言うがそんな重い金槌音はちっとも聞こえてこない。代わりに喧騒極まる花火が打ちあがり、喧嘩極まれりなカラフルチャイルドが平手で宙を叩きつける……年明けとはそんな程度の日常。
嘘です地元の田舎に帰ったので除夜の鐘も聞こえたし花火も上がったし騒がしい若者の声は別に聞こえてきませんでした。平和な町です。めでたいぜ新年。
さて今回は先日完結した流天の剣/女の第一章、佐々木迷宮のあとがきをしたためようと思います。
佐々木迷宮は流天の剣/女の導入、天と瀬古逸嘉の日常を第三者である近衛槙の視点から描いて、裏の世界の入り口へとみなさまを案内する、という目的がありました。
当初のプロットでは近衛槙のサポートもありながら天が怪異を撃退する、というだけの筋書きでしたが、その怪異、「佐々木迷宮」の主である佐々木瑠璃の成り立ちを考えるに当たって自然と別のテーマを描こうと思うようになりました。
それは、「嗜好の押し付け」です。
昨今では多様性だ個人主義だとか言って世界全体に対して一個人の在り方を、半ば強迫的に認めさせようという動きがあるような気がしますよね。
今回の話の場合は、佐々木姉弟の両親が特定の性癖を子供にも強要するという形でそれを表現しようと思いました。ちょっと雑になってしまった気もしますが。
しかし家族といえど、趣味嗜好や性格は必ず引き継がれるわけではない。でも幼年期に受けてしまったことは、生涯心身を脅かす呪いになる。佐々木和俊はその象徴として書きました。
結果は対話での解決ということになりましたが、まあ、やっぱり話し合いが一番だよねって感じです。
さて佐々木迷宮はこんな感じですが、流天の剣/女の本筋には全然触れていません。この作品は、天という一人の少女の「生きる」道を描くことが目的です。
次回の「海の玉並べ」篇では天の人間性に近衛槙が触れる話になります。
テーマは「知る罪」と「知られる嫌悪」です。
簡単に言えば、見知らぬ誰かが突然カメラを向けてきたときに抱く不快感。
「何いきなり撮ってんのやめてください」
「でもあなたのことを撮らないといけないんです。あ、許可してもらえますか?」
をとことんやる話にします。
前回情景描写に力を入れすぎて人間ドラマに注力できていないという批評をいただきましたのでその反省を踏まえて書こうかと思います。
最後に、即興で考えた「海の玉並べ」の厨二キャッチコピーを書いて終わろうと思います。
———生きたくば、知れ。
———知りたくば、見ろ。聞け。
さざ波の音。鈴の音。
暗がりの窟。揺れるオトギリソウ。
然るに、知見は海への第イッポ。