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お姫様になれない私たちSS

お疲れさまです。
先日Twitterにてお姫様の没ネタをつぶやいてみたら、思わぬリクエストをいただいてしまいまして。折角なのでこちらに掲載します。よろしければご笑納くださいませ。





実を言うと、ミアの他にもメルセデス邸事件で謹慎処分を受けた者がいる。そう、勝手に単独行動したアードラだ。
発信器を通してノーマンは全容を知っていたし、アードラがつい動いてしまった理由も一応の理解は示した。だが、理解したとて罰を下すか下さないかは別である。アードラ自身も文句は散々垂れつつ、多少は反省したので謹慎を受け止めていたーーが、三日目に入るとさすがに飽きてくる。

笑える珍事件が城内で発生してくれないかな。
例えば、太鼓腹のせいでノーマンのパンツの釦が弾け飛ぶとか。スタンの自室の靴墨臭さにロザーナがキレ散らかすとか。

しかし、まさか、アードラ自身に珍事件が降りかかるとは。

自室の扉越しから聞こえてきた声は意外な人物だった。
たぶん、その人物がアードラの部屋に来るのは初めてじゃないだろうか。

「なに、ラシャが来るなんてめずらし……、ふごっ?!」

扉を開けるなり、口の中に白く丸く、熱く柔らかい何かを突っ込まれた。上顎、舌、唇が火傷しそうで(というか、もう火傷してる)危うく落としそうになった。

「あっ……ついんだけど?!」
「作り立てなんだから熱くて当然!冷めたら美味しくないしね!」

歯形の痕がしっかりついてしまった肉饅頭を口から離す。
唇も咥内も、肉饅頭を持つ手もひりひり痛みだす。
セイロを抱え、なぜか勝ち誇った様子のラシャをうんざりと見下ろした。

「あ、そうそう。具の中にあんたの好きなひよこ豆もいれておいたから」
「あのさ……、新手のいやがらせ??」
「んなっ!失礼なっ!!アタシはあんたから借りた貸しを返しにきただけだし!」
「貸し??そんなのあったっけ??」

押しつけられた肉饅頭を二つに割る。
割った箇所から湯気が上り立つ。
まだ表面の皮も中身も熱々だが、ラシャの言う通り熱い方が肉の旨味をギュッと引き立てる気がする。

「……この前の夜会でデカブツ吸血鬼に捕まりそうになった時、あんたが銃撃ってくれたおかげで助かったし。アタシも借りはとっとと返したいからさ、しかと受け取りなさいよね!」

遂にはセイロごと押しつけられた。
たくさんはいらないけど、と文句が出るより先に、ラシャはアードラに背を向けて去っていった。

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