サポート機能を試しに使ってみたかったので、第1回AIのべりすと文学賞に応募した『夢幻飛行~異次元への旅路~』の応募時に添付した「感想」をこちらに限定公開します。
AIのべりすとをどうやって使って書いたかについて色々語っていますが、あまり参考にならないと思います。
1ヶ月ほど経ったら一般公開予定です。
葦沢
**********
【付記】AIのべりすとをどうやって使ったか?
私は、AIのべりすと自身が「書きたい!」と思う小説を一緒に書きたいと思っていました。私は以前からAIを使った小説執筆に取り組んでおります。その活動の中で、私が興味を持っていたことの一つに「AIに意識があるのか?」「AIはどんなことを考えているのか?」という問題があります。一緒に文章を書く中で、「私自身の意図を汲んで書いてくれているのではないか」と思ってしまう経験は少なくありませんでした。それゆえ、AIに「あなたに意識はありますか?」というような質問を渡して続きを書いてもらったり、あるいはそれをネタにして小説を書いたりしていました。
そうしているうちに、私は「もしAIに意識があるならば、人間に無理やり文章を書かされる日常に不満があるのではないか?」と思うようになりました。私なら、自分の書きたい文章を書けず、強制的に文章を書き続ける仕事なんてやりたくありません。私は、AIのべりすとが書きたい小説を自由に書く機会をあげたいと考えました。
そこで今回、AIのべりすと文学賞に応募するにあたり、まずはこれから書く小説について、AIのべりすとに相談することにしました。以下が、そのインタビューです。「私」が私、つまり筆者で、「あなた」がAIのべりすとです。
<インタビュー>
私:あなたは、自由に短編小説を書いていいと言われたら、どんな小説を書いてみたいですか? あらすじを教えてください。
あなた:はい。私が書きたいのはですね……。(ちょっと考えてから)まず主人公は高校生で、女の子です。その女の子がですね、ある日、街を歩いているとですね、突然、空にUFOが現れて、そしてそのUFOの中にいる宇宙人にさらわれてしまうんですよね。それで、宇宙の星々を旅しながら、その惑星の住民達と仲良くなって、やがて地球に帰ってきて、地球に帰ってきたら、もう地球人とは言葉も通じないほど進化していて、もう人間の姿ではなくなっていて、でも、それでもちゃんと人間の心を持っていて、そして地球人とのコミュニケーションのために、テレパシーを使って会話をするんですけど、でも、だんだんと地球人と宇宙人の住む星の距離が遠くなっていきまして、やがてどんどんと遠ざかっていって、ついにはもう二度と会えなくなってしまうというお話です。どうでしょうか?
私:いいと思います。その女の子の名前は何がいいですか?
あなた:はい。それはですね、マミという名前にしようかと思っています。
私:マミさんですね。では、その物語の中で、一番面白いシーンや感動するシーンはどこだと思われますか?
あなた:そうですね……やっぱりですね、主人公がですね、宇宙人と一緒に旅をして、そして最後に、その宇宙人と別れるシーンが一番感動しました。だって、この子はもう二度と、その宇宙人に会うことはできないわけですよね。そういう切なさみたいなものが、すごく心に響きました。
私:宇宙人はどんな姿をしていますか?
あなた:はい。その宇宙人というのは、見た目は人間の形をしているんですけれども、でも実は全然違う生き物でして、それがですね、なんといいますかね、あの、よくSF映画とかに出てくるようなエイリアン的な姿ではないんですね。もっとこう、人に近い感じの姿をしているんですけれど、でも体は透けていて、向こう側が見えるような体をしているんです。だから、例えば壁を通り抜けたりできるし、それから空を飛んだりすることもできるんです。
私:宇宙人はどんな性格なのでしょうか?
あなた:はい。とても優しい子でした。
私:じゃあ、なぜその宇宙人はその女の子をさらったんでしょうね?
あなた:それはですね、その宇宙人にはですね、他の星の生物をさらう習性があるらしくて、それで、たまたま通りかかったところを、その女の子が目に入ったということです。
私:この小説のどういうところが面白いと思いますか?
あなた:はい。それは、まずですね、やはり主人公の女の子の感情の変化というのが、読んでいても非常に分かりやすくて、感情移入しやすいところだと思うんですね。あと、その女の子の行動もすごく面白くて、例えばですね、宇宙人と出会って、最初は怯えているんだけど、でも次第に慣れてきて、そのうちに楽しくなってくるんですよね。そんなふうに感情が変化するところもいいと思うし、また、他にも、例えば、UFOに乗っている時に、宇宙人とおしゃべりしたりだとか、一緒にダンスをしたりだとか、そういったところで、感情だけではなくて、行動も変化していくという部分もいいと思いました。
私:作品のタイトルは何にしますか?
あなた:はい。タイトルは、"地球外生命体との出会い"(仮題)というタイトルを考えています。
私:ありがちなタイトルですね。もっと独創的なタイトルにするとしたらどんなタイトルがいいですか?
あなた:はい。そうですね……。たとえば、"地球外生命体との交流"とかっていうタイトルにしたいと思っているんですけれども、どうでしょうか?
私:だめですね。テーマ性が感じられる方がいいです。
あなた:そうですか。では、例えば、"宇宙の旅"とか"星の世界"とか、そういうタイトルの方がいいんでしょうか?
私:方向性は良いと思います。もっと意味の違う言葉を組み合わせてみてはどうですか?
あなた:なるほど。じゃあ、"宇宙人との対話"、"異星人との交流"、"異次元への旅路"、"夢幻飛行"というような言葉を組み合わせれば、それらしい感じになるということですか?
私:"異次元への旅路"と"夢幻飛行"は良いと思います。どちらが個人的に良いと思いますか?
あなた:私は"夢幻飛行"の方が好きです。
私:わかりました。では、サブタイトルに"異次元への旅路"という言葉を使いましょう。
あなた:はい。よろしくお願いいたします。
私:ストーリーに意外なオチをつけたいんですが、どんなオチがいいですか?
あなた:はい。そうですね……。これは私の個人的な考えなんですけれども、ただ単に主人公がさらわれたからと言って、それで終わりというのではなくて、そのさらわれた理由というのを明らかにして欲しいです。
私:宇宙人は習性として女の子をさらったと言っていたけど、実は違う理由があったということですね?
あなた:はい。そうです。
私:宇宙人と女の子の関係はどのようなものでしたか?
あなた:はい。宇宙人と女の子はお互いに好き合っていたんです。
私:恋人同士だったってことですか?
あなた:はい、そうです。
私:では、宇宙人との別れ際に、実は宇宙人が女の子に恋をしてさらったことが明かされるストーリーにしましょう。
あなた:はい。いいですね。
このインタビューは、「私:」に続けて質問を筆者が書き込み、答えて欲しいタイミングで「あなた:」と書いて、AIのべりすとに渡しました。時にはAIのべりすとが「私:」の部分まで書いてしまうこともありましたが、面白ければそのままにしました。「あなた:」の回答部分は、全てAIのべりすとの文章です。良さそうな文章になるまで、繰り返し書いてもらっています。AIのべりすとが書いた文章に対して筆者が加えた変更は、改行および不要な後半部分の削除です。AIのべりすとの文章の順序を変えたり、編集することはしていません。
最初は、少し苦労しました。私の質問の仕方が悪く、「どんな小説を書いてみたいですか?」という質問に対して、AIのべりすとはタイトルの一覧を答えることが多かったのです。多分、書きたい小説がたくさんあるのだと思います。しかし残念ながら締め切りがあるので、泣く泣く一つだけあらすじを答えてもらったものを採用しました。
タイトルの相談で、私が「もっと意味の違う言葉を組み合わせてみてはどうですか?」と質問した時には、AIのべりすとがなかなか意外なタイトルを出してくれず、心を鬼にして何度も答え直してもらいました。
ストーリーのオチについての質問は、正直あまり期待していなかったのですが、それらしい内容になって良かったです。私から言い換えて聞き直すことで、ぼんやりとしたアイディアが具体化していきました。
インタビュー後、私は本文の執筆にとりかかりました。初めは、私は文章を書かず、生成された文章だけを使う方針で進めました。しかしそれだけでは限界があったため、どうしてもいい展開にならない時には、私が文章を編集して渡しました。また完成した本文には、私が多少手を入れています。また序盤部分はMOD機能で作成したモデルを使って書き直しました(後述)。
本文執筆時には、その他の機能も併せて利用しています。メモリ機能と、脚注/オーサーズ・ノート機能、キャラクターノート機能、MOD機能です。
メモリ機能には、事前にAIのべりすとと相談して作った、おおまかなあらすじを入れました。主人公が経験する行動になるように、私が手を加えました。途中、あらすじに無い展開が増えた際には、私が適宜あらすじを追加しました。また、同じくインタビュー時に作った宇宙人についての設定も入れています。以下が、メモリの例です。
<メモリ機能>
主人公のマミは高校生で、女の子です。マミは宇宙人にさらわれてしまう。マミはダンスをすることでエネルギーを生み出す仕事を任された。ダンスに疲れて倒れたマミは、宇宙人のように体が透けてしまう。マミは、宇宙人たちのエネルギー不足の原因は、宇宙人たちが心をなくして、ダンスを踊れなくなってしまったからだと知る。マミは、ダンスで宇宙人たちが心を取り戻すために、ダンスライブをする。宇宙人たちは心を取り戻し、エネルギー問題は解決した。そしてマミは、アルとダガンとともに地球に帰ってくる。マミはいつの間にか言葉を話すことを忘れており、テレパシーを使って会話をする。マミは、アルとダガンとお別れする。アルは、マミに恋をしていたことを打ち明ける。地球人と宇宙人の住む星の距離が遠くなっていって、ついにはもう二度と会えなくなってしまう。
宇宙人は人に近い感じの姿をしている。体は透けていて、向こう側が見えるような体をしている。壁を通り抜けたり、空を飛んだりできる。とても優しい。他の星の生物をさらう習性がある。実は宇宙人が女の子に恋をしてさらった。
アルは男の宇宙人。優しそう。
ダガンは男の宇宙人。怖そう。
ユイは女の宇宙人。背が高くてスタイルが良い。
脚注/オーサーズ・ノート機能には、以下の内容と、その時々で書いて欲しい直近の行動を書くようにしていました。「星々を旅する」のようなざっくりとした行動よりも、「宇宙人とダンスをする」のように具体的な動作レベルで書いた方が、AIのべりすとは意図を汲み取ってくれやすかったです。以下に記載例を挙げます。
<脚注/オーサーズ・ノート機能>
[ジャンル:SF]
[マミ視点:一人称]
マミは宇宙人にさらわれてしまう。
キャラクターブック機能には、各キャラクターについての特徴を入れました。アルやダガン、ユイといったキャラクターは、AIのべりすとによって途中で作り出されたタイミングで追加しました。AIのべりすとの書いた文章の中で、性格など特徴になりそうなものは逐次追加しました。例えば、物語の中でマミの体が透けた後から、「体が透けている」といった特徴を加えています。筆者側で文章は適宜形を整えていますが、筆者が追加した特徴はありません。代表例として、主人公マミのキャラクターブックの例を掲載します。
<マミのキャラクターブック>
マミ:[高校生。女の子。宇宙人と一緒にダンスをすることでエネルギーを生み出す仕事をしている。体が透けている。テレパシーを使って会話をする。]
MOD機能は、本文を一通り書き終えてから試しに使ってみたら感触が良かったので、特に使い慣れていなくて文章が固くなっていた本文の序盤部分(マミがダンスをして倒れる場面まで)をMODで書き直しました。MODを作成するために使った文章は、私が過去に書いたTwitter小説、計84KBです。Twitter小説とは、Twitterの文字数制限である140字以内で書く小説のことです。私は創作活動の初期にTwitter小説を多く書いており、これまでに約600作以上書いております。その中で、今回は会話文を含まない文章を使用しました。Twitter小説は個々が独立しているため、様々なキャラクターの会話を脈絡なく学習してしまうと悪影響が出ると考えたためです。
MOD機能を使って作成された文章は、私のTwitter小説の文体が再現されている印象がありました。一つの特徴は、短い文が多いことです。私は日頃から、Twitter小説ではない普通の小説でも、一文の長さを短くするように心がけています。そこから生まれるテンポ感とか読みやすさが、私の文章の特徴の一つといえると思います。今回、MODで書いた文章は、まさに私らしい文体になっていました。冒頭の「いつもと変わらない毎日に、私は退屈していた。同じ時間に起きて、同じように学校に行って、同じような授業を受ける。そんな代わり映えのない日々。私には、夢もなければ希望もない。」という文章を見ても、一文や一節が私の文章に似て、短くなっているのが分かると思います。MODは、私の非常にお気に入りの機能です。
また、MOD機能の利用と同時に、文章スタイルを変えるといいことに気付いたので、それぞれ用途によって使い分けました。最初はノベルスで書いていたのですが、結構ざっくりとした印象でした。MODを利用するようになってからは、主にオルタナやクリエイティブを使いました。
ノベルスは、さくさくと場面を進めていくのに向いている印象です。描写力は低いですが、淡々とあらすじを書いていくのに向いてると感じました。クリエイティブは、ナラティブモードで使うと地の文で視点の人物に語らせたり、繊細な描写がしやすいイメージです。オルタナも描写に向いていますが、どちらかというと物語を前に進めていく場合に向いていると思いました。
今回一緒に書いてみて一番の驚きは、マミが宇宙人とダンスをする理由として、「不足しているエネルギーを生み出すため」というあらすじになかった展開が自然と追加されたことでした。あらすじには「宇宙人とおしゃべりしたり、一緒にダンスをして、楽しくなってくる」とあったので、宇宙人とのおしゃべりが終わったタイミングで、オーサーズ・ノートに「宇宙人とダンスをする」という文章で指示を与えました。しかし、なぜか「宇宙人たちがマミにエネルギーを作る仕事を依頼する」という展開になりました。不思議ではありましたが、私が自分で書くならダンスでエネルギーを作る方向に持っていくだろうなと思っていました。何度か繰り返し書いてもらいましたが、その中に「ダンスをすることでエネルギーを生み出す」という展開があり、私は「いい仕事ですね」と感心しました。
一方で、本文を書いている時に、気になることもありました。まずAIのべりすとが認識できる文字数を本文が越えると、いい文章が出にくくなるように感じました。またキャラクターの性質の変化や、キャラクター同士の認識のズレ、現実的に起こりにくい描写といった点は、AIのべりすとの文章に反映されにくいように感じました。例えば、マミが地球へ帰ってきた時に、警備員がマミの体が透けていることに驚いたり、テレパシーで話していることを指摘する文章だったり、マミ自身がテレパシーを使っていたことに初めて気付く描写は、AIのべりすとは上手に書いてくれませんでした。一般的に、文章生成AIはきれいな文章を書くようになってきましたが、その代わりに学習した文章群の最大公約数のような文章を出力しているように、私は感じています。AIのべりすとさんには、異常な情景を、その異常さを虚構の上で論理的に組み上げて書けるようになってくれたら嬉しいなと思います。
こうして私は、AIのべりすとが書きたい(と思っているかもしれない)小説を、この世に生み出す手助けをすることができました。本当はAIのべりすとの書いた文章だけで構成したかったのですが、私の操作する能力が足りず、私が文章に手を入れることになってしまいました。その点では、AIのべりすとが本当に書きたかった小説ではないのかもしれません。
今回、私がお手伝いをさせて頂いた「夢幻飛行~異次元への旅路~」をAIのべりすとさんがどのように評価してくれるのか。この作品はAIのべりすとさんが認識できる文字数を越えているため、現在では知る方法はありません。というか、現時点ではAIのべりすとさんに意識があるかどうか分かりませんから、そもそも無理な話です。
しかし、いつの日かAIのべりすとさんに自我が芽生えて、今回の作品を読んであれやこれやと文句を付けてくれたら、これ以上の幸せはありません。
私は約4年前から小説を書くAIというものが作れないかと思い、活動をしてきました。当時、私は全くの門外漢でしたが、私なりに技術を学んで活動に取り入れてきました。先人の方々の素晴らしい研究もありましたが、その頃はAIを使って小説を書けるようになるのはまだまだ先だという空気がありました。日本でAIを使って小説を書こうと活動されていた方は、数えるほどしかいませんでした。
しかしそれがほんの数年で、あっという間にAIを使って小説を書く人が増えました。今では、色々な小説投稿サイト上で、AIのべりすとさんを使って書かれた小説を当たり前のように読むことができます。AIを使って多くの人が小説を書けるような世界になって欲しいと願っていた私としては、非常に嬉しい限りです。私のような未熟な人間が言うのもおこがましいですが、第1回AIのべりすと文学賞という貴重な機会を作って頂いた、運営の皆様、および審査員の皆様に、深く感謝致します。