こんにちは。
いつも読んでいただきありがとうございます。
書いてはみたけれど、入れないことにしたお話をここで公開することにしました。
もしかしたら、そのうち小説の方へ移動させるかもしれません。
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「おかえりー。あら、夏牙は? 一緒じゃなかったの?」
古びた家の戸を開けるとよく聞き慣れた声に出迎えられる。きっと燈依は居間でダラダラとした休日を謳歌しているのだろう。
果たして、学校の生徒がこの燈依の怠けっぷりを見たらどう思うだろうか?
「多分、庭の方から部屋に入ったよ」
すっかり濡れてしまった服を絞って洗濯機に入れつつ答える。
あの姿の夏牙はすぐ調子に乗るから困ったものだ。
「散歩に行っただけでしょう。って、成雨《せいう》、なんでそんなに濡れてるの?」
「あいつが川に飛び込むから。一応飼い主としては回収しに行かないわけにはいかないだろう?」
この問題行動の多い狐は今はさぞご機嫌だろう。
「・・成雨、何かあったでしょう。しかも良い事」
「あの子に会ったよ。4人で川遊びしてた」
事情を理解してくれたらしい燈依はあからさまにため息をつく。
「それで夏牙が走って行ったのね。・・成雨、今4人って言った?」
「本当、誰かに似てあの子も執着がすごいよね。まあ、あっち2人の仕業な気もしなくもないけど」
あの子には燈依との関係は家族のようなものと言ったけれど、実際のところは同志に近いと思っている。
「少しは、毎日私がどんな気持ちで見ているかわかってくれたかしら?」
「わかってる。あ、今度遊びにおいでって言っといたから、燈依よろしく。彩夜ちゃんも夏牙に興味を持ったみたいだし、相性が良いんだろうね」
「・・中学生相手ににやけたらただの不審者よ? 分かってるわね?」
燈依の視線がとても冷たい。心なしか気温も数℃下がったように感じるのは気のせいだろうか?
「来る時は菓子でも作っておこうか」
「あの子のお兄ちゃんは料理上手だから舌が肥えてるわよ。元が料理上手でも今は練習中なんだからやめておくべきね」
とは言いつつも、燈依もどこかあの子がやってくるのを楽しみにしているのは手に取るようにわかった。