「あなたのために〇〇します」と言われて、嬉しいと感じるか、あるいは重荷に感じるか。
特に〇〇の中身が自己犠牲を伴うものだった場合、どこまで重たく感じながらも相手の意思を引き受ける覚悟を持てるか。
今日はそんなお話でございます。
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おがきちか「Landoreall」は気付けば20年以上続く長寿作品となっているのですが、とてもとても面白い作品です。
ご参考までにあらすじはこちら⇒ https://ja.wikipedia.org/wiki/Landreaall
良いセリフがいくつもあるなかで、ダントツぶっちぎりで好きなのが、このセリフ。
単体で切り出しても良さが伝わらないので、前後含めて引用すると、こんな具合です。なお場面は、主人公DXが前王の孫娘ユージェニに剣を向けるところです。
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「天翔ける蹄と英霊の名に尽いて…我が剣ヴォリフォレアと」
「ふん 騎士見習いが傭兵の剣に何を誓うか」
「いいえ 真祖の正統クラウスター家のメイアンディアが叙す DX・ルッカフォートは我が剣であり我が守り手 アトレの火矢が汝の魂を我が騎士とする あなたは私の騎士よDX!」←コレ!!!
「イエス マイレディ」
(おがきちか「Landreall」26巻、Act.146)
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もう少し詳しく、どういう場面かというと。DXは主君に剣を向けることの正当性を咎められて、それを別の正当性で上塗りする、という場面です。
もー、すごくいい。何度読んでも痺れる名セリフです。
このやりとりに至るまでにはいくつか段階があります。
作品の当初、DXは戦いの前に名乗り(天翔ける蹄~)をあげることの意義を見出せずにいました。しかしいくつかの出来事を通して、立場のある人間の言葉は魔法のように他者に影響力を持つこと、名乗ることで正当性という政治的影響力を持てることを学びました。
ところがこの場面では、相手が前王の孫娘であるために、「自分の剣はアトルニア王国の騎士として国のために振るう剣である」という正当性が否定されてしまっています。
そこですかさず現王の妃であるメイアンディアが上記の通り宣言することで、DXの剣が正当なものであることを保証し、DXは憂いなく戦えるようになった、という具合です。
で、メイアンディア視点で捉えると、これはDXが剣を振る理由を自分自身で引き受けるということです。戦いの結果、DXやユージェニが死んだりその他深刻な結末になったとしても、その責任を引き受けることに他ならないです。「DXがメイアンディアのために命を賭けて戦う」という構図を受け入れるというわけですね。
別のエピソードでDXの妹イオンがこの種の構図にたじろいでしまった描写があるからこそ、自分が他者の行動の理由になることの重さが際立ちます。
このような構図は本来色々な場面で見られるものです。
自分個人のことであればさっさと逃げ出してしまうような場面でも、「家族のため」「恋人のため」「友のため」「国のため」「神のため」など、身を挺してでも守るべき他者を口実に持ち出すことで、困難に立ち向かう動機になる場合があります。そのような動機付けで踏ん張ってもらわないと困る場面も多々あります。
で、そういう時とは、頑張る口実にされた側からすると、冒頭の通り「あなたのために〇〇します」と言われている状態なわけですね。自分を口実にされる重みを拒否すると、いよいよもって拒否された側は頑張る理由を失ってしまいます。
偶像(アイドル)として大義名分の象徴に据えられるというのは、ある種の契約状態にあると言えます。すなわち、「私はあなたのために働いたり戦ったり死んだりするから、あなたは私の行いが意義あるものだと承認してほしい」というもの。
人の上に立つ者なら例外なくこの種の責任を負います。が、自分自身が役職の長として実務上の権限を有していれば、自分の差配で成功裏に終わらせることで象徴でいることの責任を軽減することができます。
しかし実務上の権限から切り離されて、大義名分の象徴でいることだけを求められる場合、結果に干渉できない一方で道義的責任を負うことだけを求められて、逃れる術も軽減する術もありません。目の前で自分のためにばったばった人が死んでいったとしても、それを止めることも目を背けることもできない――たとえばそういうこと。
現実世界でいえばたとえば各国の皇族王族はそのような立ち位置にあると言えるでしょうし、フィクションの作品内でも聖女等の肩書で崇拝される人々などもそのような象徴としての重みを背負っているのだろうと思います。本来は。
ジェンダー論を絡めると話がややこしくなるのでそろそろ止めますが、お姫様でいるってすごくしんどいことだよなー、と個人的には思います。
だからこそ、メイアンディアのあのセリフ「あなたは私の騎士よDX!」が痺れるほどかっこよく見えるわけですね。
ところで私の「砂漠の幻葬団 第5章」に出てくるカシュートという子は、自分が象徴であることを積極的に引き受けようとした人ですね。
サイドエピソード集は本編が落ち着いたら書きたいです。はい。
さて。
Landreallはいいぞ。
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(という話をしていたら肝心なことを忘れていました。追記です:8月23日)
和歌地ビールさんより(スピラの旅日記 おばけと図書館とチョコレート)
https://kakuyomu.jp/works/2912051605724659983/reviews/2912051606718066757
一気読みしていただきありがとうございました。
最上階を共創していく過程は夢があって、私も書いていてたのしかった箇所ですね。
しれっと「スピラの旅日記 おばけと図書館とチョコレート」が完走していました。
https://kakuyomu.jp/works/2912051605724659983