理宇

敗戦の将軍は、責任追及を逃れるために狂人を装い、白亜の精神病院へ送致される 。 彼に課されたのは、「白い壁を、ただ白く塗り続ける」という奇妙な作業療法だった 。 穏やかな笑みを浮…

戦の煙が晴れきらない荒れ地を移動しながら、父は小さな家の間取りを描き、娘は壊れかけの“明日”を拾い集めている。争いを終わらせるための“穏当な方法”は称賛されもするが、同じだけの反…

戦時下の街。 父の看病をしながら絵を描く女は、薬を買うために闇市へ向かうが、 手にしたのは──ウルトラマリンブルーの絵の具だった。

プロパガンダのポスターを描く男の弟が、戦死した。 火炎放射器で焼かれた弟の遺品は、炭化した筆一本だけ。 ある夜、締切に追われた男は、黒い絵の具が足りないことに気づく。 机の上には…

機関銃座。鉄条網。引き金。 繰り返される日々の中で、兵士は描き続けた。 敵兵のポケットから回収したボールペンで。 白いノートを埋め尽くす、黒い鉄条網の絵。 「これからは、もっ…

母に強制された卓球。 母に隠れて続けた卓球。 やめたい零子と、続けたい光。 勝っても負けても、二人の卓球は今日で終わる。 インターハイ準々決勝、デュース。 2.74メートル先の彼…

「野球とは手放す競技である」。 引退、敗北、そして勝利――そのすべての瞬間に、何かを失い、何かを得る。