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『あるカラビニエと大神官』世界の武器と戦いについて

 このノートでは『あるカラビニエと大神官』の武器や戦い方について説明します。
 この作品は架空の世界ということではファンタジー作品ですが、軍事的な技術面は18世紀後半から19世紀前半、つまり、ナポレオンとその少し前の時代をベースとしています。他のジャンルと比べて、少し馴染みのない方が多いかも知れません。
 人気コンテンツで一番イメージが近いのは、某カリブの海賊の映画だと思います。あれと同じ時代です。
 できるだけ作品中でわかるように心がけていますが、こちらでもざっくりとした解説をしたいと思います。
 『あるカラビニエと大神官』では長いので、このノートでは『あるカラ』とします。略称と一緒に流行んないかなという下心もあります。

 ちなみに先に断っておきますと、私は残念ながら“ナポレオン詳しい、まかせろ!”とはとても言えません。もっと研究の深い方がカクヨムにもたくさんいらっしゃいます。
 本ノートはあくまであまりマスケットの時代に馴染みがない方向けに、あるカラ世界の戦闘について、浅学ながらざっくりとした説明を加えるものです。


【どんな武器があるのか】
 剣と魔法の世界といった作品では、弓、槍、剣等の武器がありますよね。細かく言えば槍っぽい物だけでも手槍、長槍、スピア、ランス、ハルバード、ジャベリン、戟、戈、片鎌槍、十文字槍etc.と何種類もありますが、大別すれば槍、刀剣、弓だと思います。騎兵の存在感もかなりありますね。
 現代物の仮想戦記では刃物といえばナイフか銃剣で、後はひたすら銃と大砲、そしてガソリンで動く現代兵器が活躍します。戦場における騎兵は馬からバイク、戦車、装甲車等に乗り換えています。
 あるカラ世界はこの中間、刀と銃・銃剣と大砲の世界です。長い銃の先に銃剣が着いているので、槍の出番はありません。

■マスケット(火打ち石式)
 大河ドラマや博物館で火縄銃を見たことはあるでしょうか。大体のイメージは、火縄銃でOKです。
 いわゆるライフルというのは銃身の中にライフリングという螺旋の溝がある銃で、マスケットは溝がない銃です。そういう意味では、火縄銃もマスケットといえます。
 では火縄銃と何が違うのかというと、火薬に火をつける方法が違います。
 火縄銃は火がくすぶっている縄を火薬に押し付けて着火しますが、火打ち石式(英称はフリントロック)は、引き金を引くと火打ち石が金属に打ち付けられて火花が散り、それが火薬に火を点けます。
 銃があるならひたすら撃てばいいじゃない、と思ってしまいますが、少なくとも3つ問題があります。

・撃つのが遅い
 マスケットも昔のライフルも前装式、銃口から弾を込める方式の銃です。今の銃のように弾がたくさん入ったマガジンを装填するのではなく、槊杖(さくじょう)という棒を使って、1発ずつ火薬と弾を銃口から突っ込んでいます。
 油紙で弾と火薬をセットにした便利アイテムがあるのですが(あるカラでも標準装備)、それでもなお、ものすごく速い人でも14秒ぐらいかかります。
(YouTubeで物好きな方がやってます)
 作中では1発20秒で速い速い言ってますが、何百人もいて20秒で全員撃てるのは立派な部隊です。

・当たらない
 マスケットの有効射程、つまり、まあまあ当たるし、それなりの怪我をしてくれる距離は100メートル以内といわれます。ガンアクションに出てくるような1キロスナイパーなんて想像もできない世界です。
 そして、銃身に溝がないことも問題です。
 ライフルは弾が横に回転して、空気を切り裂きながら進んでいくので、真っ直ぐ長く飛んでいきます。
 マスケットは弾がバックスピンしながら飛んでいくので、空気抵抗も大きい上に、ちょっとフワッと上に逸れたりもします。
 遠くの敵に当てるのは、今の時代よりも難しいのです。

・弾が貴重
 これは武器そのものの問題ではないですが、全体に現代世界よりは生産が少ないので、大量の鉛と火薬を揃えるのも難しくなります。あるカラはナポレオンベースではありますが、物量はかなりの大盤振る舞いです。レグルス達はナポレオンのフランス軍と比べて、かなり充実した装備で戦っていると思います。

■サーベル
 みんな大好き、刀です。
 中世は色んな刀剣がありましたが、ナポレオンの自体は陸軍の人と海軍士官はサーベル装備でした。海軍の兵卒は、カットラスというサーベルよりも短くて太い刀を使っていました。これは、狭い船内で振り回すのに便利だからです。
 レイピアもあるにはあるのですが、戦場で振り回すには貧弱で、組織的な戦闘でレイピアで戦うということはありませんでした。
 “無い”と言い切った場合の反証は調べればたくさんあるでしょうが、大軍団の標準装備ではないよね、というご理解をお願いします。
 あるカラは陸上の話なので、基本的にサーベルを使っています。
 サーベルも真っ直ぐな物から反りの強い物まで、刀身の反り具合で3種類に分かれます。真っ直ぐな物は突き中心、反りの強い物は斬撃中心の使い方になります。
 レグルスが使っているのは反りの強い物なので、手首や腕をしならせて、曲線的な動きで敵の刀を払って腕を切るような戦い方が得意です。

■大砲
 某人気海賊漫画や、カリブの海賊の映画で出てくるような大砲です。マスケットと同じように砲口から火薬と丸い砲弾を突っ込みます。
 大砲の後ろの方に長いロープが伸びていて、これを勢いよく引っ張るとバネ仕掛けの留め具が外れて、火打ち石で火花を起こして発射します。ここはマスケットと似てますね。
 大砲はマスケットと違って、しょっちゅう濡れたモップを突っ込んで砲身内部を掃除します。こうしないと、残った火薬が変な所で爆発して危ないです。
 砲弾は色んな種類がありますが、陸上でよく使うのは丸い鉄球です。飛んでる間も怖いですが、バウンドすると結構な勢いで跳ねながら転がっていくので、足を怪我しそうで怖いです。


【どんな戦い方をするのか】
 ナポレオンの戦い方を細かく調べて細かく書けば、1冊の本になりそうな恐ろしいテーマです。
 ここでは、おおまかなイメージをお伝えします。
 あるカラ世界の基本的な戦いの流れは、

 砲撃&歩兵前進
 ↓
 マスケットの撃ち合い&撃てる所には砲撃
 ↓
 銃剣突撃

 のようなものとイメージしてください。
 騎兵が書いてないぞ、と叱られそうですが、単純化して書くのが難しかったのでご容赦ください。

 騎兵の仕事はとても重要で、敵歩兵の陣形が乱れた所に突撃して、部隊を壊滅させます。逃げる敵を追撃するのも大事な仕事です。
 それまでは何をしているか、ですが、それはその騎兵隊の位置付けによって変わります。
 高額な装備と長い訓練が必要な重騎兵は、切り札としてここぞという時まで温存されます。
 そして、当然敵も良いタイミングで騎兵突撃をしたいと思っているので、敵騎兵を倒すことも求められます。さらには、脚が速いので伝令や偵察にも役立ちます。こうした仕事を重騎兵以外の騎兵でこなします。
 ナポレオンのフランス軍等では騎兵の種類がとても多いのですが、あるカラでは重騎兵、軽騎兵、騎銃兵(カラビニエ)の3種類に絞っています。
 ちなみに騎銃兵よりは竜騎兵というもののほうが、エンタメ的な知名度はあると思いますが、あるややこしさがあるので避けています。
 というのも、竜騎兵は時代によって戦い方が異なり、レグルス達のように馬に乗ったまま射撃する時代もあれば、移動は馬、戦闘は徒歩ほ時代もあったようで、人によっては“降りて撃てや!”と思うかもしれません。
 その点、騎銃兵という訳語は誤解の余地が少ない言葉だと思います。

 ちなみに作中ではよく歩兵が3列で横に並んでいますが、これはマスケットの遅さと当たらなさを補うためです。バラバラに撃っても大して当たらないので、密集して一斉に撃とうという発想ですね。
 撃ち合いをして数を減らしたり陣形を乱したりして、タイミングを見て銃剣突撃を仕掛けます。
 では横隊でだけ戦っていたのかというとそうではなく、縦隊、縦に長い隊列もあります。
 横隊は銃撃戦には都合がいいのですが、素早く移動させるとすぐに陣形が乱れます。運動会での記憶があるかと思いますが、大勢で横一列で歩くのは難しいです。
 そこで、突撃隊列として5列縦隊等を用意します。縦隊は横の人数が少ない分、より速く動けます。そして、横隊と縦隊では、隊列に厚みがある分横隊よりも突撃に強いです。
 あなたが3列横隊の1列目にいて敵が突撃してきた場合、敵が3列なら自分に向かってくる敵は3人ですが、縦隊では何十人にもなります。

【部隊の規模はどれぐらいか】
 ミリタリー物でわかりにくいものの1つに、部隊の規模があると思います。小隊だの大隊だの師団だのというやつです。
 同じ“大隊”でも、現実では時代と国で変わりますし、同じ時代・同じ国でも戦争中かそうでないかで変わります。
 軍隊にも予算の都合があるので、戦争をしてない時は少なめにするんですね。
 さて、あるカラ世界では特に面倒な師団、旅団、連隊という言葉は出ていません。こいつらは数万、数十万の軍隊ではあったほうがいいですが、作中ではあまり必要性を感じないからです。

 作品の話をします。
 作中で一番の基本的な単位は中隊です。
 あるカラでは1個歩兵中隊=200人の編成です。
 密集していれば、指揮官が大声を出して統制できる数。かつ、それなりの戦闘力がある数です。
 そして、4個小隊で中隊、4個中隊で大隊としています。具体的には以下の通りです。

 歩兵
 小隊:50人
 中隊:200人
 大隊個:800人

 騎兵
 小隊:30人
 中隊:120人
 大隊:480人
 
 長々と書いてしまいましたが、戦闘シーンのイメージはつきやすくなったでしょうか。細かく見ればいくらでも抜けがあると思いますが、今まで馴染みがなかった方への手引ですので、寛容の精神で見逃してください。

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