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漆黒の闇

私が中学生の頃に出会った本、谷崎潤一郎先生の「陰翳礼讃」にすっかり魅了されました。漆器に見える暗闇、私も暗闇が好きでした。デパートに行き、漆黒の什器を買い求めようとしましたが高価で諦めました。何か漆黒を感じれるものはないかと考え、近所の山へキャンプに行く事にしました。もちろん、山頂にはキャンプ客など居なく、1人でテントを張りました。太陽が落ちた時、漆黒の闇が訪れました。ランタンが無ければ手元も見れません。本当の暗闇です。

しかし大きな誤算がありました。山の夜は騒がしいのです。風に揺られる木々が騒がしく、何かの動物の鳴き声も聞こえます。真の漆黒とは静寂でもあるという事を真夜中、1人で思いました。

最近は暗闇がありません。どこにも街灯があり、明るい。谷崎潤一郎先生の仰る漆黒はどこにも見当たりません。少し悲しいですね。

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