本編が終わってからで何ですが、内容が内容でしたので本編終了後のSS投稿になりました。
久しぶりのショートストーリーです。
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『真夏の盆踊り』
アンデッドの氾濫が起こった翌年から、国内のあちこちの村や街で
『案山子祭り』というモノが開催されるようになった。
開催される時期は地域によってバラバラであるが、概ね夏の夜に行われている。
皆がアンデッドのような仮装をして、夕刻から焚き木の周りを輪になって踊り明かす。
子供は途中で家に帰らされるが大人は夜通し踊る。
それが1〜3日続くのだ。
日本で言う盆踊りに近いが、ハロウィンの仮装をした盆踊りと言えばよいだろうか。
あのアンデッドの氾濫の後、バフォメットに似せた案山子が村や街に立てられるようになった。
それが西の山脈から降りてくるアンデッドを防いでくれると、実しやかに囁かれたのが始まりだ。
一年間立たされた案山子はボロボロになってへたる。
なので毎年新しい案山子を作る。
そして祭りの最後の夜に古い案山子は火に焚べられる。
「一年間村の守りをありがとう」
「お疲れさま、火になって天へ帰ってくれ」
大人は真剣に祈るが、子供は楽しくて仕方ない。
夜遅くまで祭りのご馳走があり、踊って夜更かしが出来る。
「俺、来年はバフォメットさまを作る組に入れてもらえるんだ」
ちょっと年嵩の少年が自慢げに話すのを幼い子らは羨ましげに見つめる。
ムゥナの街は少し違う。
稀人がバフォメットに変身して踊るのだ。
最初の2〜3年はよかったが、年配組は少々しんどくなってきた。
女神像では変身スクロールが作れないため、変身リングを若者に貸してバフォメット変身をさせている。
「お父さーん、カボチャが固くて上手く彫れないよ」
「んー?ほら、これ使ってみろ」
「ミスリルナイフ?」
「よく切れるから手を切るなよ」
ムゥナの街では祭りが近づくと、カボチャの灯篭があちこちで飾られる。
どこかで見た事があるようなないような風景だった。
終わり