「人間は考える葦である」 ブレーズ・パスカル
僕の名前は常人(つねと)。何事も平々凡々な高校一年生だ。勉強も運動も芸術も何もかもが平均な僕、そんな自分にあまり誇れるものは無いが、唯一誇れることがある。
「それ何読んでるの?唯花(ゆいか)」
「パンセ、常人君も読む?」
「うーん……僕はいいかな」
「そう」
それは美少女である唯花さんとお付き合いしていることだ。高校に入学して早々、僕は唯花に一目惚れした。黒髪眼鏡の文学少女、いつも本を読んでいて近づきがたい存在の唯花さんだが、僕は勇気を振り絞ってアタックしその甲斐もあってかお付き合いすることになった。
あぁ……今日も唯花は可愛いなぁ……。
本を読み進める唯花を眺めながらにやにやする。周りからやばい奴と思われるかもしれないが、僕は大好きな彼女を眺めているだけなので何も問題はないのだ。
「ねぇ常人君」
「ん?どうしたの唯花」
時は変わって放課後、いつもと同じように帰路を共にしていると唯花から声が掛かる。
「常人君は人間は考える葦である、という言葉を知っているかしら?」
「考える……足?」
「多分常人君が思っている足じゃないわよ。植物の方の葦」
「へぇ……やっぱり唯花は物知りだね。それでその言葉がどうしたの?」
いきなりこの言葉を知っているかと聞かれたが、どうしてその言葉を聞いてきたのかがいまいち分からない。そんなに大事な言葉なのかな……?
「この言葉はね、人間は葦のように弱いけど考えている。つまりこの世界で見れば人間は弱い生き物だけど思考を巡らせている偉大な存在なんだっていう意味なの」
「そうなんだ」
「そう、でも私はこの言葉を聞いて考えたの」
そう言うと唯花はピタリと俺にくっつく。
「ゆ、唯花!?」
「葦は弱い、でも弱い者同士くっついたらほんの少しは強くなるんじゃないかって」
唯花との間にあった距離が無くなり、彼女の体温が直に伝わる。まるで走った後のように心臓がバクバクと大きな音を奏でる。くっついているせいで歩きづらいが、この歩きづらさにこの上ないほどの心地よさを感じる。
「そ、そそそうだよね!3本の矢ってよく言うもんね!」
「ふふ、全然3本じゃないけどね」
「はは……ねぇ唯花、手を繋いだ方がもっと強くなれるんじゃないかな?」
「そう……ね……うん、そうかも」
少し恥ずかしそうな表情を見せたが、嬉しそうにはにかみながら俺の手をきゅっと握ってくれる。そんな彼女の手を俺もしっかりと握り返す。いつもの帰り道がいつもよりも色鮮やかに感じた。
いかがでしたか?こんな感じで哲学を言い訳にしながらイチャイチャしていきます。もし良いなって思ったらこれからも見てってね~。それと遅くなってすまん……。