『はじめまして、フユカさん。いきなり僕が現れてとても戸惑っていることでしょう。でも、怖がらないで。僕は誰よりも貴方のことを大切に想っています。君も僕になんでも打ち明けて下さい。僕の名はナツキです。』
「はじめまして。お返事が遅くなってごめんなさい。少々戸惑っていたものですから。でも、私のことを想ってくれる人がいるなんて思いもよらなかったのでとても嬉しいです。家族は皆、私を化け物の様に扱いますから…。」
『お返事ありがとう。僕のことを認めてくれてありがとう。家族の貴方への扱いの酷さは知っています。でも、僕は貴方の味方です。君はきっと気が付かないけれど、僕は君のことを全力で守ります。』
「ありがとう。毎日貴方とこの様に繋がれることが生きる糧になっています。末永くよろしくお願い致しますね。ところで、私が閉じ込められている部屋の窓から見える桜の美しさはもう堪能なさったかしら。」
『桜、見ましたよ。とても美しいですね。そして、どんなに苦しい状況でも桜の美しさを感じられる貴方の心も美しいですね。』
「心が美しいなんて初めて言われました。とても嬉しいです。こんなに心が安らぐのはいつぶりでしょう。」
『僕の言葉などで心が安らぐならば、何万文字でも貴方のために綴りましょう。今日は詩を書いてみました。良ければ暇つぶしにご一読下さい…』
中略。
「嗚呼、ナツキさん。どうして貴方に会うことが叶わないのでしょう。私の理解者は貴方だけなのに。今日もあの男の所に連れて行かれました。ジロジロと観察され、質問攻めに遭い、身体を弄ばれました。もう、貴方からいただいた言葉を脳内で反芻することで生きながらえています。」
『フユカさん。僕はその男がとても憎い。僕が彼を睨むと、彼は心底嫌そうな表情を見せました。そして、執拗に僕を観察し、しつこく質問をしてきます。君に手を出すなと何度も言いました。でも、奴は汚物を見る様な視線を僕に送っただけでした。僕は消されてしまうかもしれない。でも、君のことは、フユカさんのことは必ず守ります。』
「ナツキさん、ナツキさん。何故何日もお返事を下さらないの。毎日のようにあの男は私の身体を汚します。繰り返される観察と質問にも耐えられなくなってきました。どうか、いなくならないで、私を守って。」
『きっと僕に残された時間は長くはありません。ですが、ぼくはあなたの中にいます。ずっとあなたを想っています。忘れないで。あなたのことをだれよりもあいしています。どうかいきのびて。どうかにげ』
「ナツキさん、一言でかまいません。言葉を、私に下さい。私の心を守る一言を下さい。ナツキさん。たすけてたすけてたすけて」
『そばにいる。あなたの中で眠るから。』
以上が日記(?)に記されていた内容である。