小説の練習も兼ねて、日記を書くことにした。新しく思いついた表現やただ口触りがいい言葉をコレクションしたり、日々あったことを小説っぽく書いてみる。常に一人称視点の日記に、ひょいと三人称視点が入ってくる。小説は難しい。
日記を小説化する試みで最も感じるのは、言葉が足りない、ということである。例えば、ある日映画を鑑賞したことを日記に書こうとする。単に「面白い映画だった。」と書くのではつまらない。もう少し踏み込んで、「〇〇のシーンが~~という思い出を想起させ、懐かしい気持ちになった。」と書く。これも悪くないが、感想文っぽくなってしまう。感想文は「自分」ありきだが、小説はそうはいかない。自分が感じたボヤっとした感情を、適切な言葉を適切な順番で並べることで完璧にとはいかないものの、できうるかぎり精密にデッサンすることが求められる。「こんな感じ」では済まされない。中途半端な語彙力では、小説の中の世界には原始的な感情しかなく、モノクロになってしまう。小説における言葉は、絵画における絵具であり、音楽における楽器である。しっかり理解し、使えないと意味がない。
今日も、自分の世界が彩を持つように言葉を探す。