ぬるい風が吹き抜けていく
黄金色の海
空の高さを見上げる
静かになった昼下がり
物語は停滞している
いつから立ち止まっていたのだろう
トンボたちが遊んでいる
目で追ってやがて見失う
季節関係なく車が走っている
踏切は暇を持て余している
彼岸花は一斉に紅いラインを引いていて
僕はただクラクラする
1人で観る景色を
僕はずうっと独り占めしている
世界中から秋が降り注いで
振り返っても誰もいなかった
物陰で猫が様子をうかがっていて
知らない間にいなくなっていた
工事の機械が峠の途中で休憩していて
その道の先には桜の葉が風に揺れていた
ぬるい風が吹いている
コスモスたちを揺らしている
静かな時間が記憶の中で滲んでいく
何度繰り返しても忘れてしまうように
いつしか日が暮れていく
やがて空が紅く染まっていく
今日もいつの間にか沈んでしまう
もう虫たちはなき始めていた