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取り敢えず序盤だけ書いてみるシリーズ2「ひまじんっ!」

 俺の名前はひまじん。暇人じゃないぞ、間違えるなよ。火の魔人で火魔人だからな。名前ですでに出落ちみたいだけど、この物語はそんな俺と俺を召喚しやがった無能力者の女の物語だ。未だに何故俺様がただの人間に召喚されちまったのか分からない。番狂わせもいいところだ。
 
「なーにそんなところでボケっと突っ立ってんの、やっぱりあんた、暇人でしょ」
「いやちょっと待て、俺は暇人じゃねー! 火魔人だっつの」
「だから暇人でしょーが。する事ないならお使い行ってきて」
「テメ調子に乗んなよ! 俺様が本気になればな……」

 俺を召喚した女、俺はいまこいつにこき使われている。俺様は人間の街ひとつくらい軽く火の海に出来る力を持っている。本来なら貴族、いや、王の扱いが相応しい。
 なのに何故居候扱いに甘んじているかと言うと、俺が召喚された側だからだ。ただそれだけの条件で俺はただの人間の女に頭が上がらないのだ。

「は? あんた私に逆らえるとでも?」
「ぐ……」

 召喚された俺に召喚した側の女の言葉が呪縛となって脳に響く。命令に従わないと強烈な頭痛でのたうち回る結果が待っている。俺としてもそんな事態は何としてでも避けたい。

 召喚されたばかりの頃、女の言葉に逆らったばかりに、発生した痛みで俺はまるっきり記憶を失ってしまった。
 身体は痺れるし、胸も痛くなるし、目の前は真っ白になるしで、まだ命令を聞いた方がマシだとしか思えないほどの苦痛がずっと襲い続けるのだ。あれはどんな拷問より酷い苦痛だった。

「お、お使いだったか? 任せろ」

 魔界では名門だった俺は雑事を何もかも召使いに任せ、戦いにだけ集中する事が出来た。そんな俺が人間の小間使いのような事をやらされるとは……。屈辱以外の何物でもない。
 俺が命令を受諾すると、女はエコバッグとメモ容姿を渡してきた。

「はい、あんたまだ慣れてないだろうからしっかりメモしておいた。頼むわね」
「ふん、この程度の雑事余裕だとも」

 この世界では俺を必要とするほどの災厄は発生していない。そう、俺の戦闘力はまるっきり必要とされていないのだ。なのに何故俺は召喚されてしまった? 何もかも分からない中、今日も俺は女の命令に従う日々を続けている。

「えーと、店はここでいいんだな?」

 俺は命令された仕事を黙々とこなしていく。俺様レベルになるとお使いなんて目をつぶっていても完遂出来る楽勝ミッションだ。
 この日もそんな下らない命令をこなすだけのつまらない時間が過ぎていくだけだと、そう思っていた。

 俺が買い物を済まし、家に戻ろうとした時にその事件は発生する。ふと見上げた空に見慣れないものを見つけたのだ。それは普通の雲と違って、何かの塊のように見えた。そうしてその塊は流れ星のように尾を引いて、ある一点に向かって落ちるように伸びていく。その落下先は――俺の家じゃねーか! 

 この謎のトラブルで女が死ぬのは一向に構わねーが、もしそうなったら俺はこの世界に取り残されてしまう! 冗談じゃねぇぜ!

 俺は急いで家に向かって駆け出していく。どうか間に合ってくれよ!

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