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天才(災)軍師ゼノン250PVの突破感謝SS

 いつも応援していただき、ありがとうございます。天才(災)軍師ゼノンが250PVを超えました。これもひとえに応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。
 お礼になればと思い、閑話を投稿します。
 ロゼが七歳、ゼノン十六歳のお話になります。
 少しでも楽しんでいただければ幸いです。


 ~花園の思い出~

「姫君、今日は遠出をしてみませんか?」
 正式にミストリア伯爵家に仕えることになったゼノンは、毎日せっせとロゼの世話を焼く。そのことに戸惑いつつも、ロゼもまた、少しずつゼノンの存在を受け入れていた。
「遠出? お父様のお許しはもらったの?」
 まだ七歳のロゼに許された行動範囲は非常に狭い。むしろ、ほとんど邸の敷地内だけと言っていい。
 そんなロゼが遠くに行けると聞いて、期待しないはずがなかった。
(どこに行くのかしら? 何があるかな?)
 期待に目を輝かせるロゼに、にっこりと微笑んだゼノンが頷く。
「ええ、もちろん。お父君のご許可はしっかりいただいておりますよ。さて、姫君さえよろしければそろそろ出発いたしましょうか?」
「ええ、そうね。連れていってちょうだい。」
 知らない場所に行けると聞いて、ロゼは大喜びでゼノンの手を取った。そのままひょい、と馬の背に乗せられる。
「少々遠いので、馬で行きます。しっかり私に掴まっていてくださいね?」

 馬に揺られてたどり着いたのは、美しい花々が咲き乱れる場所だった。
「……わぁ……!」
 天国のような光景に、歓声をあげてロゼは足早に歩き出す。
「すごくきれいね。ここは楽園なの?」
 その問いに、後ろからゆっくりとついてきたゼノンがくすくすと笑った。
「いいえ、姫君。ここはただの花園ですよ。お気に召しましたか?」
「ええ、とっても! 我が家の庭にも負けないくらい素晴らしいわ。」
 嬉しそうに花を見てまわるロゼの姿に、ゼノンはほっとため息をついた。
「よかった……貴方が喜んでくださって、何よりです。」
 そのゼノンの態度に、ロゼもうすうす理解した。おそらくゼノンは、自分を元気づけるためにここに連れてきたのだろう、と。
(私もゼノンに何かお返しできないかしら?)
 一面に咲き誇る花を見渡して、そういえばとロゼは思い出した。亡き母に教えてもらった、花冠の作り方を。
「ねぇゼノン、ここの花って摘んでも大丈夫かしら? 誰かの持ち物とか……、」
 いちおうゼノンに花を摘んでも問題ないか確認すると、何故かゼノンは嬉しそうに頷いた。
「構いませんよ、姫君。そんなにここの花がお気に召しましたか? ふふ、貴方に気に入っていただければ、花も美しく咲いた甲斐があったというものでしょうね。いっそ羨ましいことです。」
 ……とりあえず、摘んでも問題はなさそうだ。ありがとう、と頷いてロゼは花園の中へ歩き出す。

「おや、姫君。それは花冠ですか? さすが、お上手ですね。きっとそれをつけた姫君は花の精霊のように美しいのでしょうね、」
 ようやく花冠ができあがると、微笑ましげにゼノンがロゼの手元を覗き込む。
「……あげる。連れてきてくれたお礼よ。」
 はい、とロゼが花冠を差し出すと、驚いたようにゼノンは目を見開き、まじまじと花冠を見つめてーーとろけるような笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、私の姫君。一生、大切にいたします。」
 そこまで喜ばれると思っていなかったロゼは驚くが、悪い気はしなかった。
「ですが私だけもらうというのも気がひけますね。……少々お待ちいただけますか?」
 何かを思いついたのかゼノンはきょろきょろと花々を見回し、一輪の艶《あで》やかな花を摘み取った。
「よろしければ、お受け取りください。」
 花はあっという間に輪っかを作って、指輪になる。恭しげにロゼの手を捧げ持ったゼノンは、するりと花の指輪をはめた。

 ……ロゼの、左手の薬指に。

「かわいい! ありがとう、ゼノン。」
 嬉しそうにはしゃぐロゼは知らない。
「姫君さえよろしければ、また来年もここに来ませんか?」
 左手の薬指にはめる指輪の意味も、
「いいの? ありがとう、ゼノン!」
 この花園がゼノンの私有地であることも、
「いえいえ、こちらこそありがとうございます、姫君。」
 遠出を許可した父は、オゼロの街を散策するぐらいだと思っていたことも、
「末永くーーよろしくお願いいたしますね?」
 花の指輪に口づけて微笑む、ゼノンの思惑も。

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