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誰のために

小説を読むことが好きだ。
書店や図書館に行けばわくわくして一日中でも過ごしていられた。本の中に引き込まれ寝食を忘れるほどに。
小説を書くことも好きだ。
暇さえあれば文字を紡ぎ創作に没頭した。湧き水のように様々な物語を想像した。
本だけではない。絵を描くことも、ドラマを観ることも、映画を観ることも、アクセサリーを作ることも、好きだと思ったことはのめり込めた。
しかし、私の中の泉は枯れてしまった。
何をやり始めるにもまず「なぜ」「何のために」「誰のために」が浮かび躊躇する。
私は、私のために没頭することをやめた。誰にどう思われるかを第一に考え、やることの全てに成功が失敗かの二択のみがつきまとい、意味を見出だせないことをやらなくなってしまった。
それで良いと思っている。私には守りたい家族がいて、それは私にとってこの上ない幸せだから。
しかし、時々ふと不安に襲われる。
見守るだけの立場になった時に、私には何が残るのか。
私は、私のために生きていけるのか。
子供の私が書いた物語を読んで、その眩いきらめきに大人の私は涙する。もうあの頃の私はどこにもいない。

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