お世話になっております。
糸織り乙女、流石に今から展開が変わることはないだろう、と油断できましたので、少し裏話と言い訳などを、半ば備忘録として書いておきたいと思います。
現状連載中のパートがどうしてこんなに時間がかかったのか、というお話。
もしくは、現実に激突されるとはどういうことか、ということについて。
現状連載しております王都編ですが、連載を開始した当初の予定では、実は王都に疫病が流行るはずでした。
赤死病の仮面とか、異民族が病を流行らせたんだと対立感情が……みたいなことが起こるはずでした。意図して作られた病!みたいなアレもありました。鵺という妖怪をご存知ですか。権力者に病を引き起こすんですよ。王宮魔術師さんとその弟子が医療者なのも活かせますしね。
赤土風邪という疫病です。実は冒頭から仕込んであったのですが……
「やめましょう!?」
やめました。
現実で不安な日々を過ごしている方が読まれるものにそれはない。
残りのプロットをまとめ、次に起こすはずだった展開は、下層民の暴動です。
階層間での隔意が高まる中、どちらの視点も持てるので暗躍しつつフランス革命を起こさずになんとかしよう、みたいなやつです。
「差別される階層の暴動は……」
やめました。さくらんぼは実りません、駄目です。
政治的意図などない作品です。ただでさえ民族間対立だとか、混血ネタだとか、本になる時に沢山編集様を泣かせたのですから(その際はどうもありがとうございました、本当にご迷惑をおかけいたしました)。鳥の民の象徴色にその手の寓意はありません。
ならば闘争です。
ぶっちゃけそのネタは前半から温めてあったんです。
外国勢力の不穏は幼児パートの頃からずっと描いてきました。
当然兵士流入からの侵略戦争が起こ……
「だめです」
だめですね。どうしてくれるんだ北国の伏線とか出しちゃったんだぞ。
北の帝国のはずでした。ええ。帝国といえば北。それ以上の意味はありません。
となると陰謀です。戦争を起こせないならやはり演奏会の方向性を尖らせていく、そうに決まっています。暗殺です。王権奪取を狙う不届き者は、やはり王を狙うものでしょう。
ところで、あの世界は火薬の発展が遅れているという伏線がはられていました。ネーゲの先進技術というものも。石板を求める不逞勢力。そして宗教指導者にまとめられた不平士族が……
つまり、密造銃が式典の最中に
「洒落になりません」
仮にも商業作品として世間に出たものがやってはいけませんね。いえ、文学の自由という観点からのみ見るならば偶然のこと、いけないわけではないとは思うのですが、ねずみとしてはちょっと力量も度胸もありません。
そちらの方向に舵を切ったのが確か第二王子と絡んでいた頃でした、やっちまう前で良かった。北の帝国というイメージは今は抜きましたが当時は残っており、サラエボ事件のイメージだったんですよ。
宗教ネタはもはや抜けないのでなんとか宗教方面の展開を極力抑えました。本当は結構大きいのがあるはずだったんですが、洒落にならない。
この時点でこれまで張り巡らせてきたつもりのものは見事に凄いことになっています。バッキバキです。いえ、その形でなく将来的に活かすつもりはあるのですが、少なくとも動乱は起こらない、そういうことになりました。
すべての展開は伏線を張り、流れを作り、あとはなだれ込むだけというところで発生していたりします。ピタゴラ装置を途中から新造するがごとく。
ある程度進んだところから方向修正するもので、あちらへ行き、こちらへ行き、あれをなかったコトにし、これは起こる結果を変え、結果うねうねと曲がりくねった道が長く続いてしまい、読者の皆様を困惑させたことかと思います。
そこからうなり、ころがり、ようやくまとめたものが現状となります。
ええ、本当に。本当なんですよこれ……。ガチなんですよ。なんででしょう。
七転八倒するねずみ、お楽しみいただけますれば幸いです。
もう変えない。もう変えない。というかだいぶファンタジーに寄ったので流石にもうどうもなるまい……