お疲れ様です。いよいよ本格的に寒くなってきましたね。体調を崩すことなく健康に楽しく過ごして行きたい年末です。
カクヨムコン書く方では参加できるか分かりませんが、読みにはいかせていただきます。フォロワー様の作品なるべく期間中に読んで応援したいと思っています。
□桜々
新連載始めました。
プロトタイプの作品があって、それは最後まで完成しているので途中で終わることは無いと思います。実は児童小説系の賞でそこそこのところまで残して貰ったことのある作品です。児童小説と言いつつも最後まで見たら大人向けなのかも知れないと思っていてジャンル分けを悩む作品となってます。とりあえずプロトタイプ作品を大改造しながら更新中。春までには終わらせたいがどうなるか分かりません。
□君の旅路
武蔵野の短編の時に会話文だけだったので、会話文なしに挑戦した作品。あとは想われている側が想ってくれている人のことを考えている作品にしたかったので、こういう感じになりました。ちょっとCMっぽいなと思っています。
□龍
あらすじとかキャッチが適当過ぎたので改造中です。自己PRとかが苦手なので、これからはそう言うところも頑張っていきたい。
□短編集
隙を見て投稿していきたい。
以下、感謝の小話(ちょっと長い)です。
ある静かな雪の夜のこと。薄暗い部屋で対峙する男と少年。
「違うって言ってるだろ」
そう主張する男は椅子に座らされて後ろ手に拘束されている。
「いいや絶対にそうだ」
それを否定する少年は立ってはいるが背が低く目の前の男とちょうど目線の高さが合っている。
「違う」
「違うものか」
二人の主張は平行線をたどり一向に歩み寄る気配がない。
溜息を吐いて少年に諭すように言う男。
「なあ、たかし君、どうやったら信じてくれるんだい?」
「あはは、何を言っているんですか。こんなにも僕はあなたのことを信じているじゃないですか」
「いや、そう言うことじゃないんだよ」
「いえ、むしろそれ以外にあるんですか?」
男はもう一度、今度は僅かに困惑が混ざった溜息を吐いた。
「違うんだよ、たかし君」
「いいえ、あなたです」
「違う」
「あなただ」
「だから違うと言っている」
「違くない」
「違うんだ! 私はサンタじゃない!」
「違くない! あなたはサンタだ!」
荒げた呼吸を鎮める二人。少しの沈黙のあと男が落ち着いた口調で言う。
「じゃあこうしよう、君が言う通り仮に私がサンタだとする。君はその証拠を示せるのかい?」
男の言葉に少年がニヤリと笑った。
「ええ、そんなことは簡単です。まずはそう、あなたのその服装だ」
「服装? 何かおかしなところがあるかい?」
「こんな日にそんな赤い服を着ている人がサンタ以外に居ますか!?」
「いやいやいや、それくらいいくらでも居るだろう」
「それからその真っ白な髭はどう説明をするんですか?」
「これはたまたまだよ。それに白いひげを蓄えた人だってたくさん居るだろう」
「それだけじゃない、中身の詰まったその大きな白い袋、シンプルな黒いベルト、赤い三角の帽子、室内なのにブーツ!」
語気荒く言い切った少年に対して、男はまだ余裕の笑みを浮かべる。
「たかし君、これはただの仮想衣装だよ。今日はクリスマスだからね。パーティーに行く途中だったのさ。さあ早く解放しておくれ、もうパーティーは始まっているよ」
しかし少年も怯まない。
「そうですか、あなたはパーティーに行く途中に僕の部屋に寄ったと言う訳ですね。だったらそのパーティー先を教えてください。僕が遅くなった理由を説明して差し上げますよ」
「いやいや、それには及ばないよ。君に申し訳ない」
「ふふふ違うでしょう。パーティー先なんてないんでしょう。さあ、白状してください。さあ」
「たかし君、だから違うと……」
「何度否定したって無駄だ!」
少年は叫んだ。そして大きな身振り手振りを交えて感情を吐き出す。
「僕はあなたを信じてた! 信じてたんだ……。だけどみんなが言うんだ。サンタなんていないって、あんなものは嘘だって。だから僕は考えた。決心した。だったら僕がサンタを捕まえて存在を証明してやるって」
天を仰いで笑う少年。
「それからは大変でしたよ。まずは一年間いい子でいなくちゃいけない。言いつけを守って、お手伝いもした。宿題も忘れずに、テストでいい点だって取った。それとあなたのことを信じていないなんて言うクラスメイトとも仲良くしたさ。今日も夜更かしをするために眠くもないのにお昼寝までしたんだよ。ねえ、知ってるでしょう、すぐ眠くなる子供が夜更かしをする難しさを」
「たかし君そこまでして……」
「頑張ったさ、頑張ったよ、でもそのかいはあった、あなたがまんまと僕が用意した煙突型の罠に引っ掛かったのだからね。ええ、申し訳ないと思いますよ、だって煙突に入ってしまうのはサンタの習性みたいなものですからねえ」
「たかし君、君はどうして私を、いや、そんなにしてまでサンタを……」
「僕はあなたを、あなたを尊敬している。信じているなんて、そんなのは当たり前の前提だ。僕は、僕はサンタになりたいんだ。あなたみたいな。だから、どうしてもあなたに会ってそして伝えたかった」
少年は俯きこぶしを握る。
「たかし君?」
「僕を、僕をあなたの弟子に――」
その時、眩しい光が差し込み部屋中を照らした。クリスマスツリーと壁の装飾が煌めいた。
「なんだ!?」
少年は逆光の中、窓の向こうにそのシルエットを見る。
男が言った。
「ルドルフ遅かったじゃないか」
ルドルフ、そう呼ばれたトナカイは男に頭を下げた。
「さてと、じゃあそろそろ私も行こうかな」
男はそう言って簡単に拘束を外し椅子から立ち上がる。百均の結束バンドが床に落ちる。
「な!? 待て! 逃げるのか!?」
「申し訳ないねたかし君。私を待っている人は世界中に居るんだ。あまりゆっくりはしていられなくてね」
「待て、待って、待って下さい! くそ! 眩しくて近寄れない!」
「あ、因みに、たかし君、さっきの話だけれど、私の弟子になるには君はちょっと早すぎるかな」
「そんな」
「子供はサンタさんを待っていなくちゃいけないからね。まあ、もしも君が大人になっても私のことを信じてくれていたら考えてあげなくもないけどね。じゃあ私はこれで」
窓からトナカイの背に乗る男。
「行かないで! くそ! せめて連絡先だけでも!」
「駄目だ、連絡先はあげられないな。だって君が欲しがっていたのはナンテンドウスウェッチだろう」
男はそう言って枕元の大きな靴下を指差す。その中には少年が欲しがっていたゲーム機があった。
「え、本当に! あ、でも、あ、うわあああ!」
様々な感情の狭間で叫ぶ少年。
「ホッホッホ、メリークリスマス。さあ行こうトナカイたち、次の町へ」
いつの間にか男はソリに乗りソリの前にはルドルフと八頭のトナカイが。
少年はなんとか正気を取り戻し窓に駆け寄る。しかしその時にはもう遅くそこに男の姿は無かった。
「くそ! 来年こそ絶対に弟子にしてもらうからなあ!」
雪の夜空にはそんな少年の声とベルの音だけが響いていた。
感謝の小話、十二月のある夜の出来事