僕は「おやすみプンプン」という漫画が好きです。
読んでからそれほどの月日は経っていないのに、僕がこの漫画のことを忘れてしまうような人間なのならば、いっそ人生を終わらせてしまおうかと思うくらいです。
「少年のアビス」「不滅のあなたへ」「進撃の巨人」を読んだときに、何か僕のそばにやってきて語りかけてくれるような暖かさを感じたけれど、どれだけ優しくても結局は赤の他人、という感覚が拭えませんでした。
ただ、「おやすみプンプン」は生まれて初めて「これは僕だ」と感じました。
「登場人物に自分にそっくりなヤツがいる!」といった話ではありませんし、作者の「浅野にいお」さんと僕の考えは同じだ!といった話でもありません。
この作品で描かれている世界がまさに僕が生きている世界そのものだったからです。空気感というか、概念というか、価値観というか、なんだかどの言葉を選んでもしっくりこないような、何かです。
"物理現象"、という表現がややマシかな、と感じたのでこちらを使ってみることにします。
そういう意味で、僕はプンプンの世界に非常に現実感を感じてしまいました。
現実世界よりも現実的だったんです。
おやすみプンプンという作品には、「七夕」にちなんだメタファー的表現や、作者が漫画内に登場する「メタ構造」などが使われていますが、それがギミックとして上手いとか下手だとかそういうことはどうでも良いと思ってしまうくらいに、「ああ、これは僕の生きている世界そのものだ」と思わせられてしまいました。
そして、僕はプンプンや愛子ちゃんが羨ましくて仕方がありません。
僕の世界にはプンプンも愛子ちゃんも存在しないからです。
「プンプンみたいな人」とか「愛子ちゃんに似てる子」とかいう話ではありません。
なにか大事な物理現象が陥没してしまった欠陥世界に産み堕とされて生きていくしかないのだという、そんな感覚です。
そして僕は、その欠落した物理現象をどうにかして再構築したいという気持ちになってきました。そのうちまた物語を書きたいです。