主人公が生産魔法を使って領地経営をする小説を構想しています。出だしの試し書きをしてみましたので、限定で公開します。
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◆第一話 父の死◆
日本から異世界へ転生して十三年がたった。
異世界は日本に比べて文明の遅れた世界で、俺の髪の毛はアニメのような青い髪だった。
いまだに慣れない。
俺は、レオ・ハイアット。
異世界の貴族ハイアット男爵家の跡取りだ。
もう、間もなく『跡取り』から『当主』へ、自己紹介が変わってしまいそうだ。
「父上。しっかりして下さい」
「レオ……私は……もうダメだ……」
ベッドに横たわり苦しそうに息をしているのは、俺の父であるロイ・ハイアット男爵だ。
父は病に冒させれ手を尽くしたが回復しなかった。
土気色の顔を見れば、医学に素人の俺でも余命がわずかだとわかる。
ここはハイアット男爵家の館にある父の寝室だ。
ここ数日、俺と妹が交代で父の看病をしている。
往診に来た医師によると、いよいよ父の最期が近いと言う。
ベッドサイドには、妹の十歳のエミリーがいて、目に涙を浮かべている。
父の呼吸が段々荒くなった。
「レオ……、エミリー……、すまぬ……」
「父上!」
「お父様!」
父は一度深く息を吸い、吐きだした。
それっきりだ。
医師が父を診察し、俺と妹のエミリーに告げた。
「ご臨終です」
*
――二月初め。王都。
父の死から一月後、俺は王都に来た。
俺は十三歳の少年だが、ハイアット男爵家を継ぐことになった。
爵位を継承するには、王様の承認が必要になる。
俺は葬儀を終えるとすぐに王都へ向かい、王様と面会することになった。
王宮にある謁見の間で、王様と対面する。
俺は王様が座る玉座の遥か手前でひざまずき、王様から声がかかるのを待つ。
「レオ・ハイアット! 面を上げよ!」
「はっ!」
俺は王様を直視しないように、王様の足下の辺りを見るように顔を上げた。
事前に王宮の侍従にレクチャーされた通りに、王様に失礼がないように、俺は作法に則って振る舞う。
王様からいくつか言葉がかけられ、俺が誓いの言葉を述べる。
俺の爵位継承は、無事に認められた。
(レオ・ハイアット男爵か……)
前世の俺は、商社勤めの二十九才会社員だった。
男爵家の当主なんて、俺には荷が重い。
だが、頼りになる家臣もいるし、立地の良い領地やちゃんと税を納めてくれる領民もいる。
何とかなるだろう!
「ところでハイアット男爵よ。余は、そちに頼みがあるのだ」
俺が退出の許しを待っていると、王様が予定外の言葉を口にした。
頼み?
何だろう?
王宮侍従からの事前レクチャーには、王様の頼みごとなどなかった。
俺は、どう答えるのが正解か分からず、とりあえず『ハッ!』とだけ短く答えた。
「余の領地とそちの領地を交換してくれぬか?」
「えっ!? 領地を交換ですか!?」
俺は素で驚いてしまい、思わず王様の顔を見てしまった。
領地交換!?
聞いてないですよ!
◆第二話 領地交換◆
俺は王様から領地交換を相談されて、どう答えれば良いのかわからないでいた。
多分、軽くパニックを起こしている。
だが、王様は俺の気持ちなどお構いなしに、領地交換の話を進めてきた。
「余は、そなたの父の死に心を痛めておるのだ」
「は……はい……」
「ハイアット男爵の領地は北にあり寒い。そうだな?」
「そ、そうですね……」
ハイアット男爵領は、王都の北方にある。
確かに冬は寒いが、極寒というほどではない。
雪だって、それほど降らない。
体感だが冬の寒さは、日本の東京と大して変わらないと思う。
「きっと寒さが、ハイアット男爵の命の炎を消したのであろう……。そこでだ! 余の領地の中から、南にある暖かい土地とそちの領地と交換してやろう!」
「は、はあ……」
「暖かい土地であれば、年老いたそなたの母も長生きできるであろう?」
「母は妹を産んだ時に亡くなりましたが……」
この王様は何を言っているのだろう?
理由をつけて、ハイアット男爵家の領地を取り上げようとしているように感じる。
「ゲフン! ゲフン! あー、そうであったな。御母堂は早世されたのであった。あー、その、なんだ。妹と暖かい地で暮らせば、二人とも長生きできるであろう?」
「えっと……あの……」
「どうだ? 余の頼みを聞いてくれるか?」
王様は四十五才。
でっぷりと肉がついた中年で、豪奢な服を着て、指には宝石のついた指輪をこれでもかと言わんばかりに、沢山はめている。
成金趣味で悪趣味だ。
正直、忠誠心を捧げたくない相手だが、この国の王様であることは間違いない。
王様の隣に控えている年輩の太った男、宰相をチラリと見た。
宰相は目を閉じ静かにうなずく。
どうやら『逆らうな!』と言いたいらい。
爵位を継いだばかりの十三才の新米男爵が、王様に逆らえるわけがない。
俺は仕方なく、領地交換を受け入れることにした。
*
王様との謁見の後、俺は王宮の紋章官と面談することになった。
交換する領地について、説明を受けるためだ。
紋章官は文官の一種だが、かなり特殊な職業だ。
国中の貴族の名前、領地、家紋、家族構成を記憶している。
王宮の一室で紋章官と対面する。
立派なテーブルの上に、王国の地図が載せられていて、地図には貴族の領地と紋章が手書きで描かれている。
所々、絵の具で塗りつぶし書き加えた跡も見られる。
俺が住んでいる国は、プランタジネット王国という。
大陸の中央にある大国だ。
テーブルに載せられた地図を見ると、国土の形がよく分かる。
プランタジネット王国は、トランプのダイヤ『◆』に近い形で、ダイヤの中央にあるのが王都だ。
俺の領地、ハイアット男爵家の領地は、王都から北へ馬車で一週間の距離にある。
北部と王都を結ぶ街道沿いにある好立地だ。
男爵家なので領地自体は、それほど広くないが、ハイアット家の領都が街道沿いにある。
領都は交易が盛んで、商業税が得られる。
この良い領地から、交換するのは、どんな領地だろうか?
真面目そうな顔をした短髪に眼鏡の紋章官が、地図の最南端を指さした。
「陛下から賜った新たな領地は、ここです」
「えっ!? 遠い!」
「王都から馬車で一月の距離です」
紋章官はニコリともせずに答えた。
王都から一週間の距離にある領地から、一月の距離にある遠方の領地へ。
日本の会社員で例えると、ド田舎に左遷だな……。
俺は紋章官に領地替えの理由を聞いてみた。
「あの……。なぜ、陛下は領地替えを? 何か聞いていませんか?」
「あくまで王宮内の噂ですが……。貴殿の魔法……『生産魔法がダメ魔法だから』だそうです」
ええ!?
そんな理由で!?
◆第三話 生産魔法はダメなのか?◆
この世界には、魔法が存在する。
それもかなり身近な存在だ。
怪我をすれば回復魔法を使える魔法使いが治療するし、戦闘では火魔法や風魔法などの攻撃魔法を使える魔法使いが活躍する。
魔法はスキルの一つで、神様から与えられるといわれている。
十二才の時に、みんな神殿にお参りする。
十二才のお参りの時に、神官からスキルが告げられるのだ。
剣術や鍛冶などのスキルの場合もあり、このスキルで人生が決まるといっても良い。
もちろん、スキルがない人もいるが、貴族はスキルを得られることが多い。
スキルは遺伝しやすいようで、水魔法の貴族家、剣術の貴族家など、各貴族家でスキルに特色がある。
我がハイアット男爵家は、風魔法の貴族家だ。
順当に行けば、俺も風魔法のはずだったのだが、転生者だからだろうか? なぜか生産魔法になってしまった。
「生産魔法は、ダメなのか?」
俺は王宮の廊下を歩きながら、ブツクサと独り言をつぶやく。
この大陸では、争いが絶えない。
国同士の戦争もあるし、貴族家同士の小競り合いなどしょっちゅう起っている。
だから、貴族の間では、戦闘スキルや戦闘に強い魔法を重視する傾向がある。
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⇒ここまでです。
試し書きの段階では……、
1 女性キャラの登場が少ないので、主人公の秘書、執事役を女性キャラにする。
2 1~3話の流れがピンとこない。スキルを授かるシーンと「役立たず!」で追放的なテンプレシーンにしても良いかも。
3 もっと王様は最低の人物にしたい。
4 追放王子や蛮族転生と似た路線なので、二作品がもう一段落してから連載で良いかも。