~小説『マルッセル劇場へようこそ』
最新話より 一部抜粋~
そう言って、彼は俺にその写真を渡すと
ポケットから取り出したヨレヨレの煙草に火をつけ吹かしはじめた。
「…あんたも若かったんだな。」
写真を見ながら思わずそう呟いた俺に向かって、男は高らかに笑いながら答えた。
「はっはっはっ!お前さん、面白いなぁ~!そりゃあ若くも見えるさ!なんせもう八年も前の写真なんだから―――――…」
男がそう言いかけた瞬間、俺は思わず写真の入った小銭入れを強く握りしめながら勢いよくベンチから立ち上がった。
…八年前…!?
八年前といえば…
「ど…どうしたんだね…突然…。」
突然立ち上がった俺の行動を心配して男が戸惑いながらそう声を掛ける。
「なぁ…!!バリー・アンダーソンがこの病院に入院してるって噂は本当なのか!?」
ものすごい気迫で詰め寄る俺に対して、男はさらに戸惑いながら答えた。
「あぁ…バリーなら、妻の病室の近くに入院していたから本当だと思うよ。入院してしばらくは連日沢山の人がお見舞いに来ていてね…多分劇団関係者とかじゃないのかな?あまりにも収拾がつかなくなったんで、今は家族しか面会が出来ないハズだよ。」
そう答える彼の言葉に俺は瞳を輝かせながら言った。
「ありがとう!俺の名前はダグラス・カイン!あんたの名前は?」
「私の名前はデリック・ハーマンだ。」
「本当にありがとう!デリックさん!
このご恩は一生忘れないよ!」
そう言って俺は、戸惑い続けるデリックさんの手を両手でぎゅっと握りしめると、再び病院に向かって走り出したのだった。
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