本来の髪色

「 ルークの本当の髪って、どんな色?」
 とある休日の午後。
 お茶を飲んでソファでまったりしていたアヤトが、俺の髪を見るともなしに見つめながら、そう尋ねてきた。
 俺の髪は、髪染めの魔法薬でいつも地味な色に染めている。アヤトには本来の髪色を見せたことがないから、疑問に思ったのかもしれない。
 俺の本来の髪色は白金だが、見る人によっては銀や金に見えるようだ。茶系の髪色が多い街中にいると、やや目立つ色である。元勇者だと勘繰られるのも煩わしくて、ずっと染めていたのだが。
「……見たいか?」
「見たい! ルークの本当の髪の色、知りたい!」
 アヤトは目を輝かせて食い気味にそう答えた。
 髪色を解除するのは、わりと簡単なことである。少しぐらいならば見せても構わないかもしれない。というか、アヤトにまで本来の髪色を隠す必要はないのだ。
「分かった。ちょっと待ってろ」
 俺は洗面所へ行き、髪色を本来の色に戻す魔法を施行して、アヤトの元へと戻った。……のだが。
「ふぁぁ……」
 アヤトの様子がおかしい。
 俺の姿を、目と口をポカンと開けて驚いたように見上げる。それから口を閉じると、紅潮した頬で「かっこいい」と呟いた。
「ルーク、格好いいね」
 もう一度、アヤトは俺を見つめてはっきりとそう言って、少し照れたように、だけどにこにこと嬉しげに笑んでいる。
「……あ、ありがとう」

『格好いい』
 アヤトからそんな言葉をもらえるなんて。
 今までは、目立つことのデメリットにばかり意識が向いていたのだが、実はこの髪色は、とても幸運な色なのではなかろうか? 同じ髪色を持つ田舎の父に、なんだか急に感謝したい気分になってきた。 
 ……ああ。アヤトがキラキラとした愛らしい瞳で俺を見ている。
 しばらくは、このままの髪ですごしてみようか。






2件のコメント

  • 髪染めの魔法薬を使うと、体毛も色が変わっちゃうの?
  • コメントありがとうございます!!
    髪染め魔法薬は、付けた部分の毛だけ色を変えられます。(使用時には少し魔力が必要)
    ・・・ということは、髪以外のルークの体毛(あんな場所やこんな所のおけけ)は本来の色ってこと(゚д゚)!?
    アヤトは気づいていなかったのかな? 
    うむむ。たぶん、恥ずかしくてあんまりじっと見れなかったのでしょう。それとも、なんか色の薄いおけけだなぁ、と思いつつ気にしていなかったかな☆(^▽^)
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