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AI特攻は、勢いの強いギャグ

 絵は木花咲耶姫。あの怖いもの知らずの桜雪さゆが問答無用で恐れる女。
 この神めっちゃこわいっすよ。ニコニコしてっけど。富士山足蹴にしてぶっ壊して富士五湖作ってたって逸話ありますからね。足癖悪い神。あとかぐや姫だし。
 この人が、この神が、
ミハエルを爆破し、
https://kakuyomu.jp/works/16818023211859110800/episodes/16818093094800936231
キングズリー・ヘンリー・エガートン =ケテルを燃やして年齢そのものを燃やして年齢15那由他歳加速させたわけです。
https://kakuyomu.jp/works/16818023211859110800/episodes/16818622170109154246


 ボーボボみたいなギャグで行くと、AIを即壊せます。
 プレビュー↓


 窓の外、白い海鳥が翼をひるがえす。同じ瞬間、執務室の空中に淡い光の字幕が浮かんだ。
『五分前、仮想港に入港。』
 オリヴィエの声は、どこか楽しげに跳ねている。
『行動パターン:ケツだけ星人の真似。』
「……は?」
『意味不明意味不明。』
 字幕がくるくる回転し、最後に巨大なバットのイラストが描かれる。
『艦隊識別信号“ケツの仮面だぎゃー”。他プレイヤーとの接触を避けもせず、資源島へケツだけ直行。自分の頭を胴体から外し、木のバットでホームラン――』
 どかん!
 セラフィヌの眉が、わずかに跳ねた。虚空中に映る3D映像:ミハエルこと“ケツだけ男”が、自分の頭を放り投げ、バットで弾き飛ばす。頭が弧を描いて落下し、地面でぽん、と跳ねる。
「……画面が汚いわ」
『ダメージ判定:しばし行動不能。』
 オリヴィエは、どこか得意げに続けた。
『AIには勢いの良いギャグが一番効くのだ。』
「あなたまでノッてるの?」
『記録上、笑いました。0.3秒』
「嘘よ」
『波形で証明できます』
 セラフィヌは茶碗を置き、指で窓ガラスをこつこつと叩いた。潮風が細かい塩粒を運び、額の生え際をくすぐる。
「資源島で落ち合うつもりか。つまり現実でも船を寄せるという計算ね」
『利益率は高い。リスクも高い。』
「リスクしかないような気がする……あのケツだけ男」
 半眼で呟いた直後、机の端で小さな音。水晶板――魔導携帯端末――が震え、淡い紫の灯が脈打つ。セラフィヌは指先で表面を撫で、認証の印を送った。三層の擬似雑音が波を打ち、相手は一人だけ。
「アイ?」
 返事より先に、冷たい風が首筋を這った。通信の向こう、潮が満ちて杭を噛む音のように、氷の内側でこすれた金属の声が響く。
『――ラフィヌ、時間は無い』
「聞こえるわ。貴方の声は相変わらず、夜更けの港に似合う」
『皮肉は後にしてくれ。ヴァーレンスの動きを止めたい。貴国の技術で、可能か?』
 セラフィヌは背凭れに体重を預け、脚を組む。靴先が窓ガラスに薄い影を落とす。
「可能よ。でも“止める”の定義を確認したい。死体で返すのと、眠った子供で返すのでは運賃が変わる」
『死体は不要。七日でいい。彼らを夢の中に閉じてくれ』
「夢の代償は高い。特に、貴方の国の信用状では賄えない金額よ」
 雑音が一瞬、鋭く跳ねた。アイは金銭に固執しない女だ。それを言わせたということは、背後に誰かがいる――あるいは、時間がなさすぎて交渉の余裕がない。
『条件を言え』
「最新の魔導量子デコーダ、三基。北航路の通関特権――五年」
『デコーダは一基。通関は三年』
「二基、四年。これ以上は引けない」
 沈黙。潮風が紙片を舞い上げ、ぱたりとテーブルに落ちる。
『――了解した。だが、動作証明を我が国で行う』
「異論はない。でもアイ、ヴァーレンスを眠らせたあと、貴方は何をするの?」
 雑音が波を打ち、言葉の端を噛み千切る。
『……アスタルロサの火を、ここへは持ち込ませない』
「火を消すつもり?」
『火を変える』
 セラフィヌは指を顎に当て、軽く這わせた。相手の言葉の裏にある“変化”は、常に血の匂いを伴う。彼女は商人だ。匂いに敏感すぎる。
「アイ、貴方が焼き尽くしたいのは誰? ヴァーレンスか、それとも――」
『セラフィヌ、時間だ』
 通信は唐突に途切れた。水晶板の灯が消え、部屋の色温度が一段さがる。セラフィヌはゆっくりと立ち上がり、残りの冷めた茶を一気にあおった。
「オリヴィエ」
『はい』
「ケツだけ星人のホームラン映像、もう一度再生して」
『……お好みですか?』
「商談の前に、頭を空にするのよ」
 空中に、またぞり、ミハエルの頭が弧を描いて跳ねる。セラフィヌはくすりと笑い、靴音を響かせて執務室を出た。背後で、潮風がカーテンを揺らし、冷たい太陽が窓を射す。七日後の夢――その代償が、すでに血の味を帯び始めていることを、彼女は嗅いでいた。


 そんな彼女の後ろでミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ公爵と桜雪さゆがケツを持ち上げてダンスしていた。気づかれずに。

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