絵は謎のプレゼントに戸惑う空夢風音。
ミハエルの自嘲めいた呟きに、カーラは槍の柄を握りしめながら、苦々しげに言葉を重ねた。
「でもカーラの言う通りだよな。この前のGvG、わざわざ無敵の効いてない復活地点まで来て、わたしたちを何度も皆殺しにするくらいの念の入れようだったぞ、クレカ勇者の奴ら」
とミハエルは頷き、肘掛け椅子から身を起こした。
「わたしら、復活地点で何度も殺されたもんな? なあ、冬華にさゆ?」
窓辺に立っていた冬華は、肩をすくめて
「まあね……」
とだけ答え、さゆは扇子で口元を隠しながら、
「ええ、それはもう、執拗に」
と楽しそうに付け加えた。その二人の反応は、屈辱的な記憶でさえ、どこか過去の武勇伝のように語る余裕を感じさせた。
「でさ」
ミハエルは魔導端末を操作し、新しい画面を宙に投影した。
「移住先、いいのがありそうなんだが」
そこに映し出されたのは、壮麗な城と飛竜が舞う、美麗なグラフィックのタイトル画面だった。
「これ、新規サービスインした『スタートライバル』ってMMORPG。ヴァルキリーオンラインと違って等身は高いけど、服も色々あるよ」
「あら、ファッションが楽しめるのはいいわね」
フィオラが、磨いていた爪を眺めながら興味深そうに言う。
「現実と違って、クローゼットが破裂する心配も要らないものね。冬華みたいに」
その言葉に、ゲームのギルドの部屋の隅で落ち込んでいたエレナ=オブ=メノーシェが、おずおずと顔を上げた。緑色の瞳が、不安と期待の入り混じった光をたたえている。
「えっと……ギルドの皆で、そのスタートライバルってゲームをするんですか?」
「そう」
ミハエルは彼女に優しく微笑みかけた。
「そうすれば、チャットソフトとしても継続して使えるってわけだ、ゲームしながらな。ねえ、ギルマスさん? スタートライバルに、ギルドごと移住ってことでいいよね?」
彼は、いつの間にか部屋に入ってきていた、ギルド「ヴァーレンスのハゲ」のマスター、クラウフォーイに視線を向けた。彼は人の好さそうな、しかし芯の通った目をした常識人だ。
