色々ありまして「苔から始まる異世界生活」の第126話と127話を大幅に改変いたしました。
作者も色々学びながら、たくさんの読者の皆様に楽しんでいただけるように頑張っていきたいと思います。(偉そうに書いてますが、基本は素人ですので……)
せっかくですので、改変前の文もこちらに置いておきたいと思いますので、見比べてみて感想なんかいただけると今後の糧になるかと思いますので、よろしくお願いしますm(__)m
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「は? お前さん、突然出てきて何言うてんねん? 着てるもの? ほんまもん以外に何があるっていうのや? それともあれか? この服と装備は偽もんで実は裸でしたーって落ちか? そんな変態おるか!」
うぐぅ、クリティカルヒット……
エクセルの返答が僕の胸に突き刺さった。
正直、幻惑のスキルがあるから『服を着なくても……』って気分になってしまうんだと信じていた。このスキルさえなければ、『服を着ずに外に出たい』なんて思わないはずって。逆に言うと、このスキルを持っている者が他にいれば、きっと同じ気持ちになるんだって自分に言い聞かせていた。
それが今否定されてしまった。
そして僕は膝から崩れ落ちる。
そんな僕をよそに、オッチョさんとエクセルの戦いが始まった。
今、僕は自分の心を整理するのに精一杯なのだが、並列思考と思考加速のスキルが周りの情報を勝手に拾ってきてしまう。
オッチョさんは愛用の棍を使いエクセルに連続攻撃を仕掛けていくが、エクセルはヒラリヒラリと躱してしまう。この辺りは敏捷の差が出ているな。
それに、オッチョさんは決勝戦での怪我は治っているけど、体力の方は戻っていないみたいだ。先ほどより動きが鈍い気がする。もちろん、エクセルもそれを狙って、わざわざこのタイミングで仕掛けてきたんだろうけども。
お、エクセルが魔法を使い始めたか。炎魔法に闇魔法、風魔法に土魔法ときたか。あ、さらには時空魔法まで使ってるな。しかし、そんなに魔法を連発して大丈夫か? 転移魔法でこっちにきたみたいだから、かなり魔力が減っていたけど。
オッチョさんもさすがに魔法対策はしているようで、手に持った棍で魔法を弾いたり軌道をそらしたり、上手く対応している。しかし、時空魔法のクイックとスロウには対応できず、動きが鈍ったところを狙われ徐々に身体の傷が増えていく。
あ、まずい。黒ローブの集団がオーロラを狙っている。ここはいっちょ僕が華麗に助けるとしよう。
その前に、スノウが手を出さないように伝えておくか。
〈やっほー、僕だよ、覚えてる?〉
〈やっぱり、ミスト様でしたのね。ワタクシがミスト様のことを忘れるわけがありませんわ〉
〈よし、ありがとう。時間がないから単刀直入に言うね。オーロラは僕が守るから手出し無用でお願い〉
〈わかりましたわ。ドラゴンゾンビがなかなか手強いので、こちらとしても助かります〉
よし、これでスノウが手を出してくることはなくなったな。
オーロラを助けるという使命を得た僕は、ようやくやる気を取り戻し素早く動き出した。
ガキィィィン!
オーロラに迫った凶刃を、僕のクリスタルソードが受け止める。
「きゃ!?」
オーロラの叫び声がかわいい。
「大丈夫か?」
一応、まだ素性をばらすつもりはないのでそれだけを呟く。
「あ、はい、ありがとうございました。フォッグさんでしたよね?」
僕はオーロラを襲った黒ローブを、死なない程度にそっと蹴り飛ばし、オーロラの方に向き直る。今までは下から見上げるばかりだったからか、上から見下ろすオーロラは新鮮だ。
「にゃー」
「…………」
間違えた……盛大に間違えた。昔の癖が出てしまった。恥ずかしい、超恥ずかしい。あまりの恥ずかしさに僕は固まってしまった。
「あの……私を安心させるために言ってくれたんですよね? すごく嬉しいです。私、少し前まで一緒に過ごしていた、とっても強くて、優しくて、かわいい猫がいたんですよ。その猫のことを思い出しました!
それにフォッグさんでしたよね? 初めてあったはずなのに、すごく懐かしい感じがするんです。まるでずっと一緒にいたような……って、何言ってるんだろう私!?」
おお、さすがオーロラ。めっちゃ優しい! 先ほどまでの羞恥心が嘘のように消えていく。
「そう言ってもらえると嬉しい」
言葉は少ないが、今できる精一杯のお礼をしておこう。
「もし、よろしかったら今度一緒にお食事でもどうですか?」
なんと!? 女の子からの食事のお誘いだと!? 少々年齢が低い気はするが、人生……新人類生? 初めてのデートのお誘いだ! これは気合が入るぞ!
「喜んで」
よし、俄然やる気が出て来たぞ! 残りの奴らをさっさと片付けて、細かい日時の打ち合わせをしなくては!
そう心に決めた僕は、まずはスノウが戦っているドラゴンゾンビを狙うことにした。
なんか横の方で、『そんな、オーロラは僕のことが……』とか何とか聞こえるけど、まあ気にしないでおこう。
「|光其全照出者也《ひかりそれはすべてをてらしだすものなり》」
ドラゴンゾンビを前に僕がイメージしたのは、手に錫杖を持ち3対6枚の羽を持つ光輝く天使だ。僕の目の前に光の塊が現れ、徐々にイメージ通りの姿に変わっていった。
突如現れた光の天使の神々しい姿に、戦っている者達も思わず手を止めている。
その光の天使が目にも止まらぬ速さでドラゴンゾンビへと突撃し、跡形もなく消滅させてしまった。さらに光の天使は、シャドウマンティスとポイズンスパイダーを消滅させてから姿を消した。
「キェェェェ!」
全ての召喚獣を倒され気が触れたのか、奇声を発しながらテオドールへと襲いかかったサミュエルは、その胸をダライアスに貫かれ、最後はあっけなく事切れてしまった。人の死は悲しいけど、これだけのことをしでかしたんだから、仕方がないことなのかな……
続いて僕の目に留まったのは、ヨルムガンとアジダハの竜人コンビだ。もともとハヤトとルサール、そしてイグニートさんの3人で優位に戦いを進めていたので、時空魔法で竜人コンビの動きを遅くすることで簡単に決着がついた。
黒ローブの集団も、手の空いたテオドール達やハヤト達に任せておけば問題ないだろう。
後はオッチョさんと戦っているエクセルだが、こいつは僕に任せてもらおうか。
「オッチョ殿、交代だ」
「ふぉ、フォッグさんかぁ? 面目ない、お任せするんだなぁ」
この場で唯一満身創痍のオッチョさんを下がらせ、僕はエクセルの前に立ち裸った。あ、いや間違えた。立ちはだかった。
「ちっ、いいところやったのに。またお前さんか。もう今度は見逃さへんで。爆ぜろ、エクスプロージョン!」
いいところで割って入られたせいで悪態をつくエクセルが、オッチョさんへのとどめ用に用意したであろう炎魔法第2階位"エクスプロージョン"を僕に放ってきた。
僕は爆発地点を魔力探知で見抜き、水魔法で覆い尽くすことで爆発を防ぐことに成功する。
「な、なんやねん!? おかしいやろ? ワイの魔法攻撃力は三千超えやで!? お前一体何者やねん!?」
ふっ、驚いてるな。何せ僕の今の魔法攻撃力と魔法防御力は3600を超えているからね。こんな芸当もできるのですよ。
おや、オッチョさんも驚いてるね。ああ、そりゃそうか。オッチョさんとは剣で戦ってたから、僕が魔法の方が得意だなんて知らなかったもんね。
さて、奇怪のエクセル君とやら。幻惑持ち仲間として倒してしまうのは忍びないが、僕とオーロラの輝かしい未来のために、生贄となってもらおうか。
僕はエクセルとの距離を一瞬で詰め、その顔面を右手で鷲づかみにする。そしてその手のひらから瘴気を吹き出してやった。
「うごぉぉぉ、ぐぅぇぇぇぇ、ごばばばばばぁ!!」
僕の瘴気をもろ顔面に受けもだえ苦しむエクセル。各種耐性はLv30だったみたいだけど、状態異常をつけることはできたかな?
…………あれ? 状態異常はついてないみたいだ。全てレジストされてしまった。なのになぜあんなに苦しんでるんだろうか?
「ごぼぼぼぼぼぉ、げばばばばぁぁぁ、くっさぁぁぁぁぁ!!」
あっ、なるほど。臭かったみたいだ。そう言えば、ジャバウォックも臭いにやられていたな。あまり大勢の前で臭い臭いと言われるのはショックが大きいけど、本当にそんなに臭いのだろうか?
僕は気になって、ちょっとだけ自分の手の臭いを嗅いでみた。
「うぼぉぉぉぉぉぉげぇぇぇぇぇ!」
めっちゃ臭い!? 超臭い!? これはやばい!!
エクセルと僕があまりの臭さにのたうち回っている姿を、その場にいる全員が冷ややかに見つめている。
「ま、まさかワイがここまで追い詰められるとは、ハァハァ。ワイが用意した手駒達もみんなやられてもうたみたいやし、ウプ。目的も達したさかい、ここでお暇させてもらうわ。ほなさいならぁうぉぷぉごぼぇぇ」
まずい、先に立ち直ったエクセルが、口から何かを吐き出しながら転移魔法で逃げてしまった。しかも、仲間は全滅しているというのに、『目的は達した』とか言って。
まてよ? あいつの目的は邪神の復活だよね? もしかして、あいつは囮でここで僕等を足止めさせておいて、今まさに他のやつが邪神を復活させている最中とかじゃないよね?
だとしたらヤバい。すぐに|悪魔の門《デビルズゲート》行かないと。
嫌な予感がした僕は急いで|悪魔の門《デビルズゲート》へと転移した。
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