対人戦イベント最終日の一幕です。
グリム達(主人公)とは関係の無いところで起きた出来事です。短いですが、楽しんでくれると嬉しいです。
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ボウガンを構えた女性=ショット|流《ル》ガン(流ガン)は荒野の中に立っていた。
口元にはマフラーをあてがい、無口に構えていた。
遮蔽物が完全に無い。この状態では狙われたらお終いだ。
「さてと、得物何処に……」
周囲を見回してプレイヤーを探した。
すると背中をゾクリとする感触がした。
流ガンは素早く身を翻した。
ボウガンの照準を向けると、引き金を引こうとする。
けれど引く前にダガーが降り注がれた。
「うおっ!?」
流ガンはダガーが顔を貫こうとしたが、冷静に蹴りを飛ばしてダガーの柄を払う。
すると目の前に居た男性は、流ガンに覆い被さろうとするが、素早くバックステップを取った。
「チェ、姉ちゃん躱すの上手いねー」
「どうも」
のらりくらりとしたダガーの男性=|I《アイ》|釘《ビス》ギュゥはニヤニヤしていた。
面長な顔立ちに加え、長い顎髭を生やしていた。
ダガーを逆手に持ち、軸をずらして流ガンのことを狙っていた。
「一体何処から来たの」
「さぁねー?」
「答える気はない?」
「どうだろうねー?」
流ガンはウザかった。I釘のことを睨み付けた。
この男性と関わってはいけない。
全身に悪寒が走ると、ボウガンを構えると同時に、I釘がダガーをチラつかせる。
グルリと回転させると、手持ち武器を投げ付けて来た。
ボウガンを構えると、ダガーを撃ち落とそうとする。
けれどI釘はそれを見越していたのか、もう一本ダガーを用意して、流ガンが撃ち落とし切れないと見越して投げつける。
「さぁさぁ、どうやって対処するかねー?」
「もちろん全部撃ち落とす」
流ガンはパンパンとダガーを的確に撃ち落とした。
まるで流れるような技量で、I釘は一瞬驚く。
けれどすぐに拍手で対応すると、流ガンはボウガンを向けた。
いつでも撃てると脅しをする。
「黙って。どのみち倒さないといけないから」
「倒すなんて物騒だねー」
「ん? かなりマイルドに丸め込んだはずだけど?」
「そう言うことじゃないんだよ、姉ちゃんよー」
そう言うと、I釘はその場から走り出した。
素早く移動すると、近くによって流ガンのことを切り裂こうとする。
けれどボウガンの方が強い。それを証明したいのか、ボウガン本体で受け止める。
「へぇー、受け止めるのねー?」
「当然のことよ。それに受け止めた時点で、私の勝ちは決まっているの」
「根拠はあるのかなー?」
「当然。この距離なら、絶対に避けられない!」
ボウガンの引き金を引いて、I釘を撃ち抜こうとした。
けれどI釘は一切動じない。目が動いていなかった。
完全にイッているのか。長い髭を揺らしながら、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「撃てるものなら撃ってみるといいぜぇー」
「当然撃つに決まってる」
引き金を引いた。パン! と轟音が響く。
ボウガンの矢が放たれると、I釘はダガーの平らな面で弾いた。
あり得ない。あり得ない動きだった。けれど一変してピンチになったのは、至近距離で再装填できない流ガンになる。
「くっ、邪魔!」
「おっとっと!?」
流ガンはI釘を蹴飛ばした。
するとダガーが一本置き去りにされると、お互いに距離を取り合う。
隙を見て矢を再装填する。これ以上遊んでいる余裕は無い。
「もう仕留める」
「仕留められるのかねー、姉ちゃんよー?」
流ガンとI釘は互いに距離を取ってはいるが、殺気同士でぶつけ合った。
もはや二人にしか見えない感覚がある。
周りのプレイヤーなんてどうせいないと高を括り、お互に凌ぎを削り合うことに全力を注ぐのだった。