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本日発売! ライブラリアン②(発売記念SSジョセフの庭づくり)

皆様こんにちは。
南の月です。

前回告知させていただきましたライブラリアン2巻が本日発売です。
https://www.es-luna.jp/bookdetail/38librarian2_luna.php
これからしばらく、そわそわする日が続きそうです。
良かったら手に取ってみてくださいませ。

また発売記念としましてss書きましたので、お読みください。





【発売記念SSジョセフの庭づくり】

お嬢様と俺は、植物仲間だ。
きっかけはお嬢様が本を片手に庭を歩き回り、植物について調べはじめたことだ。
それから少しずつ俺とお嬢様は植物について教えあう仲になった。
大の植物好きの俺も知らないことがあったりして、お嬢様との話はとても楽しかった。

そんなお嬢様が誘拐されかかった。
それもこの庭で!
お嬢様が誘拐されかかったのはもちろん許せないことだが、その現場がこの俺が管理する庭だった。
誰も俺のせいだとは言わないが、庭で起こってしまった事件なだけに俺は言いようもない罪悪感を抱えていた。
俺の管理する庭で、こんなことになるなんて……。

俺は庭の管理を任されているただの平民だ。
罪悪感を感じたところで、俺にはお嬢様を苦しませたスキル狩りを解決する力はない。
だが、ベルン様は違う。
ベルン様をはじめ、マティス奥様もマリウス坊ちゃまも、テルミスお嬢様がライブラリアンかどうかに関係なく、お嬢様を愛しておられる。
ベルン様たちが、この状況をそのままにするはずがない。
きっとスキル狩りを解決してくださるはずだ。
それに引き換え、俺は何もできない。
そんな俺がふがいなかった。

いやスキル狩りを解決する力はないが、俺にだって何かできないだろうか。
お嬢様のために何か……。
考えに考えたが、やはり俺にできることは植物の事しか思いつかなかった。
ふーっと息を吐く。
それしかないのなら、とにかくやろう。
俺には俺のできることを精一杯やる。
それしかお嬢様に顔向けできる方法がないのだから。

庭を歩きながら考える。
お嬢様はスキル狩りが解決したら、帰って来られるはずだ。
その時にこの庭を見たらどう思うだろうか。
やはり、当時の恐怖を思い出すのではないか……。
それに、もう二度とあんなことがないようにしないと。
よし! 決まりだ。庭を作り変える。
それくらいしか俺にはできないから。
お嬢様が二度と誘拐されない安全で、かつ美しく心安らげる庭だ。
俺はお嬢様に庭で悲しんでほしくないんだ。

安全面から考えると、今の自然を演出した庭はやはり死角も多い。
誘いこまれるような小道はワクワクして面白いが、それでは護衛もお嬢様を見にくいし、不審者も隠れやすい。
ならば、遠くからでも見通せる庭なら安全じゃないか?
安全第一! 
だがそれだとあまりに殺風景だ。
庭で笑ってほしいのだから、それではだめだ。
マティス奥様もお嬢様も花がお好きだから、花をたくさん使うのは決まっている。
見通し良くするなら、背の低い花を一面に植えるか?
いや、夏の日を遮るものだっているだろう。
うーむ……。

アーチはどうだ! 
広い道を作って、そこにアーチをいくつも並べて、花を沿わせる。
さながら花のトンネルだ。
小道ではないが、わくわくするじゃないか!
中に入れば、右も左も上さえも花が咲き乱れているんだ。
それなら、ぐっと心掴まれないか?
トンネルの幅が広ければ、護衛も見通しやすいしな。
後、広い道を作るなら足元が寂しいな……。
鉢を使うか。
鉢植えなら、季節によって花を植え替えるのも容易で、場所も移動させやすい。
いろんな花を楽しめる。
敷石を敷き詰めた道の上は鉢を使って花を植えよう。
以前の庭とも印象が変わるし、これなら……いける!

徹夜で書いた花のトンネルを中心にした庭大改造計画書を持って、朝一番にベルン様の許へ行く。
最初の基礎工事の間は、庭に出て花を鑑賞することができなくなるというのに、ベルン様は快く許可してくれた。
まずは、今ある植物の退避だな。
計画書をもとに、奥から順に植物を一時鉢植えへと移植し、敷石を敷く場所には、踏み固め、砂利を敷いたり、花壇にする場所は掘り返し、さらに土を足す。
鉢植えに移した植物の世話もしつつ、土まみれになる毎日。

1年半かけて改修した庭は、ベルン様、マティス奥様、マリウス坊ちゃま、その他使用人たちからも好評だ。
お嬢様の帰国の目途はまだ立っていない。
だから、どれだけお嬢様がこの新しい庭を気に入ってくれるかはわからない。
だが、どうか……。
どうかお嬢様がこの庭で、怖い記憶を思い出しませんように。

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