一ノ篇「遅咲きの刃」で仇を討った蓮は、寺に帰り、涙を流した。了然は言った。「遅い花ほどよく咲く」。
だが二年が経ち——蓮の右手は、まだ刀を探していた。
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二ノ篇「蕎麦と刃」
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了然が蓮に告げた。「そろそろ出なさい」。
寺を出た蓮が辿り着いたのは、中仙道の宿場町にある一軒の蕎麦屋だった。
腰を痛めた主人と、蕎麦を打つ十六歳の娘。
蓮は蕎麦を一口食べて——十七年の人生で初めて「旨い」を知った。
◇◇◇
「帯びるのは、最後にしなさい。刀がなくても生きていける場所を見つけなさい」
◇◇◇
了然から受け取った葬月丸を布に巻いたまま、蓮は蕎麦屋の裏方として暮らし始める。
水を汲み、粉を挽き、蕎麦を打つ。人を殺す手で、人を生かすものを作る。
だが——宿場の裏を仕切る男たちが蓮に目をつけ、蓮の「強さ」は少しずつ滲み出していく。
そして蓮は、ある夜、初めての選択を迫られる。
握りを見た者は死ぬ——そのルールを、破れるか。
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新しい登場人物
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杉田仁兵衛 ── 蕎麦屋「杉田屋」主人。五十がらみ。腰を痛めている。妻を三年前に亡くし、娘と二人暮らし。
凪(なぎ) ── 仁兵衛の娘。十六歳。蕎麦を打つ手は蕎麦粉で白い。蓮に遠慮がない。
政五郎 ── 赤坂宿の裏を仕切る口入屋の元締め。商売人。蓮の殺気のなさに、逆に怯える。
虎吉 ── 政五郎の配下。腕っぷしが強く、短気。蓮に祭りで恥をかかされ、執念深く恨む。
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連載情報
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今週5月27日【水曜日】より毎週、月曜、水曜日、金曜日更新二ノ篇 第一回「石段の終わり」
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