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『引きこもりVTuberは伝えたい』の真面目で長い裏話~PTSDの扱いについての解説~

 あまり真宵アリスのPTSDについて作中で詳しくは書いていませんでした。

 ただ第2巻が発売されたことですし、これを機に書いておきます。

 ちゃんとPTSDについて分析と線引きをしていますし、人格形成や言動に反映されています。
 そしてその後の章でも、作中の行動でその影響が描写されています(非常に細かく)。

 まず真宵アリスのPTSDなのですが第一巻の痴漢ですね。
 これは男性を忌避という単純なものではないので複雑性です。

・電車通学→行動手段の束縛
・不特定多数の人がいる
・(満員電車で)身動き取れない。反撃ができない密室の状況
・男性。

 これらが絡み合いPTSDを発症した過去があります。
 つまり真宵アリスが苦手とするトリガーはこの点となります。
 ただし13歳のときです。
 発症の現場であり、この条件がすべて揃いやすい電車には乗れません。
 でも思春期前の発症ですし、時間経過でも個々の要因に関しては改善の傾向にあります。

 そして二年後の中学三年生の時の事件は男性というトリガーがありましたが、野外で反撃手段があったため、PTSDを発症して身動きが取れない状況にはなっていません。
 けれど精神的な反動で火炎放射器という過剰防衛という結果に出ています。
 実はこのとき事件よりもトリガーに抵触しているのは学校の教室の方でした。
 行動手段の束縛に関しては『学校内でのキャラ付け(マスコット)』という形で出ています。
 条件が全て揃っているから「保健室登校」です。

 その一年後、高校進学では東京に転居しました。
『学校内でのキャラ付け(マスコット)』というトリガーが外れたため、教室に通うことができています。
 図書委員風という大人しさアピールはマスコット時代の反動で活発な印象を持たれたくないから。
 けれど優れた容姿、大人しく気弱な印象が別のトラブルを生みましたね。

 そしてネット冤罪。
 ここではPTSDなど発症する前に逃げることに成功しました(あのまま学校に所属していれば確実につぶれたので成功です)

 結家詠にとって引きこもりはトリガーと真逆にある安穏の地でした。
 ネット冤罪と戦い、世界に叛逆する牙を研ぎ澄ますことができるほどに。

 ここまでが第一章(第一巻)でのPTSDに関する解説です。
 続きは説明されていないその後の章での取り扱いについて。

 第二章の大脱走について。
 ・行動の強要(行動手段の束縛)
 ・不特定多数の人
 このトリガーに抵触したため爆発しましたが、逃げるという反撃手段に出たためPTSDの発症はありません。
 けれど過剰な行動に出る要素がそろっていたため暴走しました。

 第三章について。
 ・隠者のネコミミパーカー→メイド服を隠す以上に、隠れることに特化した機能がついた特殊衣類が精神安定要素になってます。
 ・飲み屋配信の裏側、少しの描写ですがミサキさんオススメの一人用テントで疑似的に引きこもり部屋を再現して精神安定を図っていますし、事務所もそれを認めています。

 第四章について。
 ・ギリースーツ→メイド服を隠す以上に、隠れることに特化した機能がついた特殊衣類が精神安定要素になってます。

 ・不特定多数の人がいる
 ・行動手段の束縛
 ・身動き取れない密室の状況
 アフレコ現場のスタジオは、PTSDが発症するほどではありませんが、このトリガーに近いので本領が発揮できない。
 周りの様子を気にして、周りに合わせてしまう状況でした。
 けれど一人全役収録ならば引きこもり部屋再現効果で本領が発揮できた。

 第五章について。
 会議で優柔不断になり、意思決定から遠のく。
 まだ他の人がいると本領が発揮できないことに配慮して、単独行動が多くなっています。
 けれど他の三期生が「真宵アリスと同じステージに立つ」と表明したことで、真宵アリス自身の弱点を克服する未来を示唆しています。

 第六章について
 パンダと密室→男性と認識していないだけだが改善傾向と事務所も配慮している描写。
 セツにゃん以外の三期生とコラボ配信→だんだんと単独行動ではなくなってきている。
 特にリズ姉とのコラボ配信では、リズ姉に抱き着かれて長時間束縛されて続けてもペチペチで済んでいます(中学時代は逃げる行動をとっていましたし逃げ切っていました)


 そして締めの「主人公になる」。
 これは真宵アリスのPTSDというか忌避行動についての解説になります。
 真宵アリスの痴漢事件はトラウマです。
「普通の人は電車通学電車通勤できているのに私はできない」
→「普通未満」
→「情けない」
→「別人になりたい」
 という心理的な変節から「別人になりたい」願望を持っていました。
 この願望は結家詠の根幹に根付いており「誰かを演じて別人になる」ことが防衛本能にもなっています。
 だからアフレコなど演じることへの才能にもつながっています。
 そしてアバターのキャラクターになりきる「VTuber」はある意味で結家詠の天職でした。

 そこから様々経験を経て成長して
 第四章の「ーBe yourself, Everyone else is already takenー」という言葉を自分なりに解釈して受け入れる。

 第五章の「ーBe Ambitious!」で「足掻け」と生き様を宣言。

 第六章の「ーThis is my life, This is my story.」
「別人になりたい」
→「私が主人公としてヒーローに変身するんだ」
 と自分に対する忌避からの脱却と自己形成を描いています。

 作中はエンタメに振っているため、こういう真面目な主人公の成長と精神的な克服の病みの部分の説明をあえて書いていません。
 それは真宵アリス(結家詠)を主人公とした物語の中で、真宵アリスが見せたくない部分だと思うので。
 だから結果と成長で描写しています。

 PTSD、第一章の過去編がどれだけ作品全体に影響があるかご理解いただけましたでしょうか。
 電車に乗れない。
 男性忌避。
 などPTSDの完全克服を目的としていないのでこの辺りは残ったままですが、改善はされています。

 第一章はネット冤罪がメインですが、作品全体ではネット冤罪は解決すべき問題にすぎません。
 実は過去編のPTSDから派生した「別人になりたい」→「私が主人公だ」と主張できるようになるまでが作品全体のテーマでした。
 真宵アリスが叫ぶ「下剋上」はそういう意味が大きいです。
 だから第六章でまたネットの悪評が問題になった時も、真宵アリスは即断即決で解決する方向に向かっています。
 一度解決した問題ですし、テーマではないので悩みも葛藤もありません。

 私個人の認識として「PTSD」→「精神的に弱い子」という認識が苦手です。
 ただ「弱い」でひとくくりにするのではなく、原因やトリガーをちゃんと分析して、何がダメなのかを見て分けることが対処方法だと思ってます。
「弱い子」「神経質な子」として接し続けると相手の人格を否定し続けることになり。本人も「自分は弱い子である」「神経質である」と人格形成がなされてしましますから。
 それに子供はその「弱い子」認定を免罪符にして、わがままに振舞うこともありますから。
 原因を明確して「弱点がある子」として克服させるかそれ以外の分野で活躍させるのが正しい対処方法だと思っています。

 あと和解していますし、悪い親ではない。
 むしろ善良な両親なのですが、結家詠の両親はその辺りで神経質になって対応を間違えたので、親元から引き離す必要があった。
 という裏側のストーリーも存在しますが、ここまで触れると作品全体が暗くなるので書いていません。
 作中では今は和解しているし、交流あるし、関係も改善しているで済ませてます。

 以上です。
 こんな詳細な裏の話に需要あるのかわかりませんが、置いておきます。

2件のコメント

  • 詳細の説明助かります。
    書籍の読み返しがより楽しくなりますね。
  • ふと思った。章毎に英語のサブタイトル(?)が付いてるのって、リコリコっぽい。
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