こんにちは。
私の作品に目を通していただき、ありがとうございます!
昨夜は、変わった夢を見ました。
『ガンダム』の新作ゲームの発表会に呼ばれた夢です。
レンガ造りの建物の三階が会場で、入ると窓際にPCが並んでいます。
その一台の前に、ゲームを開発した男性がいます。
モニターには緑色のガンダム?が映っていて、どうやらガンダム?と会話するゲームのようです。
男性がキーを打ち込むと、ガンダム?の返答が表示されます。
別のPCの前に行くと、ガンダム?の設計図が表示されていて、他の見学者と一緒に議論します。
そして他の見学者と一緒に外に出ると、会場にスパイが居たと言う話になり、尾行されたら大変だと脇道を行ったり来たりしている最中に目が覚めました。
変な夢でした。
さて、近況ノートで連載した『黄泉月の物語・水淵の姫』の最終話を載せます。
◇ ◇ ◇
『水淵の姫・最終話』
「……きぼう……」
黄泉千佳は呟き、手元の残りのジャムパンを見た。
大きなイチゴは、あの世界には無いだろう。
小さな野イチゴなら、ある筈だ。
砂糖があれば、煮た野イチゴと混ぜれば、ジャムが出来るかも知れない――。
そんな考えが浮かび、ジャムを注視する。
その横顔を見た黄泉姫は、久住千佳本人と同じ資質を感じ、言い聞かせる。
「我は、お前の本体から『ロミオとユリ』の恋物語や、『源氏』物語を聞いた。それらを生き残った者たちに伝えよ。お前が知る学問を伝えよ。新たな世界の『母』となれ」
「あたし……そんな偉い人にはなれません。おバカだし」
「お前の本体は、なかなかに頭が良い。お前も同じ筈だ。性格は阿呆だが、落ち着いて学舎で習ったことを記せ。現世の食べ物、装束、家屋、文字もな。記すべきことは、幾らでもある」
「……はい」
黄泉千佳は頷いた。
この人は死ぬ覚悟だ、と察する。
この人の願いを叶えなければならないと、何かが後押しする。
こんな気持ちは初めてだ――。
「……泣くな、カエル女」
黄泉姫は振り向かず――鼻をすする音を聞いて言い放つ。
「もう少ししたら、現世に戻ろう。クソ名月には、『帽子はトイレに落とした』と言えよ。私は、水影月の家に行く。ニセモノを始末したことを伝えねばならん」
「……はいっ」
黄泉千佳は大声で返答し、最後のパンのかけらを口に入れた。
ようやく落ち着きを取り戻した頃。
黄泉姫に手を引かれ、黄泉千佳は現世に戻った。
トイレのあの個室は、便器もそのままの状態で破壊されていない。
どこかのタイミングで、異世に引き込まれたのだろう。
黄泉姫はすぐに消え、腕時計を確認すると、ほとんど時間が経過していないようだった。
「うまく、ごまかせるかな……」
緊張しつつトイレから出て、ブッフェ会場のテーブルに向かう。
和樹は、大福をフォークで突きつつ、外の庭を眺めている。
トイレでの事件には、まったく気づいていないようだ。
(ナシロっちにバレませんように)
黄泉千佳は、足を震わせながら近付く。
『いいか、クソ名月には感づかせるな。心配事を増やさせるな』
――黄泉姫が残した言葉に相槌を打つ。
和樹が気配に気づき、微笑んでくれた。
黄泉千佳は笑おうとしたが、やはり口元が固まる。
和樹は立ち上がり、怪訝な顔で訊いた。
「どうしたんだ!?」
「……あの……あの……お帽子……トイレの中に落とした……」
「は? 手で拾ったんじゃないよね?」
「うん……落としたことを、店員さんには言ったよ。お帽子も……捨ててって」
「それで良いよ」
和樹は、穏やかに微笑んだ。
「帰りにモールに寄ろう。確か、帽子屋さんがあった」
「……怒らないの?」
「大丈夫だよ。新しいのをプレゼントするよ」
「ナシロっちぃ……」
黄泉千佳は安堵した。
そして、辺りを見回した。
人々は談笑し、穏やかな時間を楽しんでいる。
この光景とは、間もなくお別れだ――。
でも……あたしは生きる。
覚悟を固める彼女の両手を、和樹は握り締める。
「ほら、まだ制限時間が残ってる。フルーツもあるから食べよう。僕もいっぱい食べるから!」
「……うん、食べる!」
微笑み、フルーツコーナーの方に顔を向ける。
涙ぐんだ瞳を見られたくないから。
この時間が少しでも長く続くように願い、黄泉千佳は和樹の手を引っ張った。
ガラスの向こうの真夏の空は、深い青に輝いていた。
この一時を、永遠に忘れない。
黄泉千佳は、イチゴとクリームが盛られた小皿を見つけ、迷わずに取って微笑んだ。
「イチゴ、大好き! いっぱい食べるね!」
――終わり――
◇ ◇ ◇
思ったより長くなりました、ふぅ。
そして、今夜に『サポーターさま先行』の『紅鴉の国』の二話を近況ノートで公開します。
後々に修正版をカクヨム上でも公開します。
第一話は公開済みですが、今回の『先行公開版』を元に、一話は大幅修正が入ります。
ちなみに、主人公の名は『橘 一葵(かずき)』くん。
桜南高校男子七期生です。
『黄泉月の物語』の主人公たちが男子一期生。
『黄泉比良荘の凛々子』の主人公が男子四期生。
橘くんは、体育館裏の木に寄り掛かって読書を始めようと言う時に転移します。
彼が持っていた文庫本は、国枝史郎氏の未完の物語『神州纐纈城』。
この作品を知ったのは、アーサー王の『聖杯の物語』に『纐纈(こうけつ)城』と邦訳された城が出て来たからです。
私も未読ですが、青空文庫で読めるのでこれから読み進めていきます。
しかし、年代を考慮すると橘くんは、2024年の今より未来の人間になるか。
まあ、その辺はご容赦を。
そして橘くんが授かるのは、『推命の太刀』。
本編に登場した『宿曜』と対を成す太刀で、『宿曜』は月光刀。
『推命』は太陽刀です。
……設定はしてるけど、そこまで書けるのはいつになるやら。
先は長い。
mamalica