「はー、ドキドキしたぁ」
株式会社翔動とのミーティングを終え、帰宅した今宮は胸が高鳴っていた。
「あの人が健吾くんが言っていた柊さんか……」
柊のことは野田から何度か聞かされていた。
「あっ! あの時のお礼を言っていなかった!」
今宮は「しまったー」と頭を抱えた。
彼女が大ファンであるPawsのコンサートに行くことができたのは、柊のおかげであった。
「私、ナマモノは対象外だったのに……」
彼女は二次創作のBLが好物であったが、あくまでも創作の世界で楽しむことを是としていた。
ちなみに、イラストレーター『まみやり』は同人誌活動を行っているが、これは全年齢を対象にした創作物だ。
実在の人物で妄想が捗るようになったのは、ある人物との出会いがきっかけだった。
「皇さん……イケメンだったな」
今宮は野田だけを恋慕しており、皇は観賞用という位置づけだ。
しかし、皇がもし同性を恋愛対象としていたらと考えただけで、自分の中の興奮が収まらなくなっていた。
「そして、あの二人……あれはズルよ! チート的組み合わせよ! 混ぜるなキケンよ!」
柊と石動を目の前にした瞬間、今宮の妄想は止まらなくなってしまった。
***
「――はぁ……はぁ……」
「皇さんと比べたら、そこまでイケメンじゃないはずなんだけど……なんで? どうして?」
今宮は不思議な感覚に囚われていた。
「まるで同じ人間どうしが並んでいるような……フレッシュな香りと醸成された旨味が引き立て合って……グヘヘ……はっ!」
今宮は野田には決して見せられない表情をしていた自分に気が付いた。
「よし、今度、皇さんと柊さんを二人同時に会わせてもらうよう頼んでみよう!」
今宮は絶対に叶わない願いを唱えた。