その歩行者専用道と国道が交わる交差点は、オフィス街のど真ん中にある。
ほぼ東西に走る国道と、それに対して直角に交わる歩行者道。
三連休初日、午前もまだ比較的早い時間だというのに信号待ちしているクールビズの人の群れ。
俺も他人のことは言えないが、と心の中で苦笑する。
こんな時間だというのに、既に夏の日差しは容赦なく降りそそぐ。
歩行者信号が青に変わり、平日よりも若干ゆっくりめの歩調で俺たちは歩き出す。
その俺の横をスッと追い越していった小柄な影。
リクルートスーツだろうか? 折りたたんだ濃い色の上着を腕にかけ、タイトスカートに白いブラウス。
汗ばんだブラウスが背中に貼りついて、何やら線が透けて見えているのは仕方あるまい。
それよりもタイトスカートに包まれた尻《ケツ》だ。引き締まったウェストから完璧な曲線を描き、「小股が切れ上がる」とはこういうことをいうのかとしみじみ感じ入るくらい、張りよく美しい尻をしている。
それ以上に素晴らしいのがスカートの下からすらりと伸びた脚、特にふくらはぎだ。
短距離を走らせたらけっこう速いのではないか? と思うよい筋肉の付き方をしたふくらはぎ。
その下の足首につながる方はキュッと細くなってとてもメリハリがよい。
ああいうのを「カモシカのように」と喩えるのだろうが、人によっては「ガンダムのように」の方がイメージしやすいかもしれない。
ダイエットに余念のない細身の女性はふともももふくらはぎも細くて、脚の付け根から足首までスッと一直線に細くなっていくので、なんというか抑揚がない。
逆にダイエットなど諦めたような女性は、ふくらはぎは太くても筋肉ではないから足首の真上まで相応に太くて、まるで円錐形のようでやはりメリハリも抑揚もない。
しっかりと必要なところに筋肉がつき、その結果美しい体のラインが出来ているというのは、人としてというか哺乳類として正しいあり方だと思うのだ。
そしてその女性は何か武道でもやっているのだろうか?
背筋がピンと伸び、腰の位置の上下動が少ない美しい歩き方をしている。
急いでいるふうではなく、ただ「正しい」姿勢で歩いている結果スピードも乗っているようで小気味いい。
その後ろ姿のシルエットと相まって「凛としている」という表現がしっくりくる。
遠ざかる彼女を見ている俺まで、少し背筋が伸びた気がした。