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「まったり演劇部体験記」非公開化のお知らせ。

 初めましての方は初めまして。そうじゃない方はお久しぶりです琴葉です。
 お知らせですが、「まったり演劇部体験記」を非公開化します。
 当作品はさまざまな関係上書くのを休止していたのですが、思い出だし、大学に入ったら最後まで書き切ろうと思っていました。しかし、最後まで書き切るビジョンが見えなくなってしまったため非公開化します。(半分愚痴になりますし、感情的になって支離滅裂になっている部分もあるかと存じますのでご注意願います。

 今、部では新入生歓迎劇の準備をしています。私は去年の五、六月辺り、先輩方が引退すると同時に部長になりました。二月の終わり頃、新二年生に新入生歓迎劇をどうしたいかと訊くと「創りたい」とのことだったので、それ用に春休みの予定を組み、練習しようとしました。
 ……役者の半数も揃いませんでした。
 休みの連絡もないですし、連絡をよこす人も「野球の試合が見たいので」といったのがたまにとは言え混ざります。
 そして新学期。早く仕上げなきゃと思い、半引退から舞台監督のようなことに転じます。
 あと十日ほど。まだ間に合う。
 そう思ったら同じことを繰り返します。舞台裏はうるさいし死体は動くし笑う。セリフも頭に入ってないし間違えたら大声で「間違えた!」と笑顔で言う。そして新入生が来たから遊ぼう!という人たち。
 最後の意見には一考の価値ありだけど、君ら時間ないこと理解してる?
 そんなこんなで今日、あと練習できるのは今日をのぞいたら金曜日と月曜日。あと二日。
 メインキャストは三人。一人は問題ない。二人目は春休み全く来なかったけど声量と舞台裏で喋る以外は問題ない。三人目、一番練習来てて真面目で、だけど申し訳ないけど声量足りないし動きも棒立ちが多い。
 みっちり練習しようと思ったら見学者が来て、一回通しただけで見学者を交えて人狼ゲームをすることになった。
 早々に死んだ私は同じく死んだ音響の子に、これ終わったら劇するから準備してて、と声をかけた。すると近くにいた子が言った。
「ええ!マジスかぁ!?」
 言ったのは助監督の子だった。楽したいから、という理由で立候補した、いつも部活で駄弁ってたり、寝てたりしている子。
「もう帰りましょうよ!」
 わたしは溜息をついた。
「あのねぇ、劇見てた?」
「観てましたよ」
「どう思った?」
「え、舞台裏はうるさいし動きはグダグダだし」
「じゃあ練習しないとダメなのわかるでしょ」
「でも、変わってませんよ」
 私の中で何かが切れた。
「それをどうにかするために練習するんでしょ」
「でも変わらないじゃないですか。変わりませんよどうせ。帰りましょう」
 正直ここら辺はあまり覚えていない。でも、こんなやりとりをしたと思う。
「俺もうたくさん仕事しましたよ。クタクタなんです」
「例えば?」
「草取ってきて備蓄室の鍵開けました」
 ダンボール製の草を取ってくるなら備蓄室の鍵を開けなきゃなんないし、実質一つだ。
「それだけ?」
「それだけじゃないっすよ!机も運びました」
 私の脳裏に浮かんだのは、机を運ぼうと言った瞬間トイレに行く、彼の姿と、劇中舞台端で寝そべってスマートウォッチを弄る彼の姿だった。
「あ、やってたの?寝てたと思った」
「いやいややってましたよ」
「ああごめん。ちょっといつもの先入観で」
「先輩。偏見で人を判断するのはやめた方がいいですよ」
 本当はこの後も高説を垂れていたように思う。
「——それが常識ってものっす」
 私の脳裏に浮かんだのは夏の大会の時の風景だった。
 うちの部は二十人と県内の演劇部では多い。それ故一塊となってあまり場所をとらないよう昼食を取ろう。
 そう思って私はドーナツ型の椅子の方にみんなを誘導した。ここは広い。それに別の学校が食べているところに、反対側を陣取ろうなど勇気がいることだ。それに広いと言っても、せいぜい二十二人が限界で、うちの高校と一緒に食べるのは難しい。
 ところが大半の一年生(当時)は机椅子のある、四人机が十個ほどある方へ移動した。
 当時はいくらか緩和されたと言ってもコロナ真っ只中。四人机はせいぜい二人机だ。
 その半数を彼らは占拠したのである。
 私は彼らに「大人数で広い場所を占拠するのは良くない」と言った。すると彼らは誰の迷惑にもなってないんだからいいじゃないか、好きに食べさせろ。要約するとこう言った。
 顧問は運営でいない。副顧問はニコニコ笑う置物だ。
 そして迷惑になっていないと言うが、二校ほど席がなくて困っている。
 しかし何を言っても無駄だとあの時の私は諦めた。
「へぇ、君って常識あったんだ」
 思い出しながら、本心から拍手し言う。
 それが聴こえなかったのか。彼は私に尋ね返した。
「なんか言いました?」
「いいや。何にも」
 面倒くさくなってそう言うと、向こうはもう終わっていた。
「終わったなら劇するよ!」
 すると一番やばい役者の子がいう。
「ええ。もう一回やりましょうよ」
「もう六時でしょ。やらないとまずいよ」
「あ、ほんとだ」
「ほんとやんもう六時やん帰ろ!」
「帰ろ!」
「帰ろ!」
 1人が言ったのを皮切りに、帰ろというコールが巻き起こる。
 誰もやろうとしない現状に私はもう折れた。
「……片付けして帰るよ」
 そうして片付けを行う私の耳に、助監督の子が「俺に当たるなよ」と言った声が聞こえる。
 確かにそうだと思う一方で、私の心から生気がなくなった。
 解散して校舎の階段。そこでリフレインする「変わっていない」という言葉。
「……遊ぶばかりでやろうとしない、|君ら《二年生》がそれを言うのか」
 私は低く呟いた。
 自転車置き場に着くともう独りだ。そう思うと自然と涙が溢れてきた。
 泣くな、泣くなら帰ってからにしろ。
 そう自分に言い聞かせる。
 通りかかる人が見て、高校の風評被害にならないように。事故らないように。
 帰り道で結局、止まれ!で止まれず、待ってくれた車の人に感謝と謝罪を胸中で述べながら、私は家に着いた。
「ただいま」
 自転車置き場から、車庫の父に声をかけると、プイッと首を左に回転させた。
 声は震えてないだろうか。
 そんなことを思いながら、鉢合わせしないように早く鍵を開けようとする。
 しかししみったれたやつなんかいれたくねーよとでもいうかのように、電子式の鍵は反応しない。
 カバンから取り出してようやく反応したそれに苛立ちながら私は家へと上がる。
 荷物を置き、洗面台で花粉流すためを顔を洗うと、口の中でしょっぱい味がした。
 弁当を流しにおくと、荷物を持って二階に上がる。
 自室に入ると、言いようのない悔しさが込み上げてきて、私はポコっと力なくベッドを殴りつけた。

 なんか途中から小説みたいになってますね。まあ、こういうことがあったのでもう折れました。
 ちなみに他の三年生は、もう半年ほど前に彼らに愛想を尽かしてあまり来てません。
 ずっと後悔ばかりしています。
 最初の後悔は体調を崩してあまり部活に来なかった時です。一年生が入って、その行動に頭を悩ませることも多く、休みがちになり、副部長に頼りすぎてしまいました。結果彼は退部しました。
 他の同級生にも、頼り過ぎてしまいました。数え切れないほどの恩があるにも関わらず、彼女らが大会中一年生に誰が舞台セットを壊したか問い詰めた際、練習の空気が悪くなることを恐れて、日和ました。後でもできると問題を先送りにしました。
 私と彼らとの関係は現在も良好ですが、いつも罪悪感を感じます。
 それに引退した前部長にもたくさん頼ってしまいました。私がやるべきことなのに頼ってしまった。
 本当に、卒業して行った先輩方に申し訳が立ちません。
 後悔しない選択などない。できるだけいい後悔をするべき。これが私の座右の銘ですが、これほど後悔したことはありません。

 私にはもうこの作品を最後まで書き切るビジョンが見えません。しかし完全に消すのは、卒業した先輩方や同級生との日々を否定するも同義。故に一週間後、四月二十日を持ちまして非公開とさせていただきます。
 
 ここまでお付き合い、ありがとうございました。よろしければ他シリーズでお会いしましょう。

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