ヤン(ヤナギ):「うー、今月は通信費がかさむなあ。特に郵便の送料。大事な書類や証拠品のやり取りが増えたのは、たくさんお仕事をいただけている証拠ではあるんだけど……」
シオ:「おうヤナギ」
ヤン:「シオ君、ここは年齢制限を設けられない場だから不適切な言動は慎んでね」
シオ:「はあ? 貴様のようなンガッ」
ヤン:「シオ君、ここで言えるのはたぶん『貴様』までだよ」
シオ:「ンググガガガ(離しやがれ)!」
ヤン:「おっと、暴力ととられる行為も厳禁だ。皆さん、今は、閉まった扉を背にしたシオ君の唇に僕が人差し指をそっと当てたので、僕の指を舐めたくないシオ君が口を開かなくなった、ということが起こっていました。僕は決してシオ君を物理的に拘束するなどの行為はしていませんが、はい、シオ君がこれを精神的な暴力であると感じる可能性があることは重々承知しており――」
シオ:「お前、さっきから何ぐだぐだ一人で喋ってんだ」
ヤン:「読者の皆様への説明だよ。ところでシオ君、どうして僕の部屋に?」
シオ:「ゲームしに来てやったんだ。喜べ」
ヤン:「わーい!」
シオ:「うるせえな。で、今日は何すっかなー」
ヤン:「ヤン・トコルダ特製新作シューティングゲーム『わんわんわんこ! キャッチ・ザ・ボールズ☆』があるよ! 一緒にやろう!」
シオ:「やるわけねえだろ。んなポコポコしたゲーム」
ヤン:「えー? あのゲーム、作った僕でもクリアできないのになあ……」
シオ:「コントローラー寄越せ」
ヤン:「わーい!」
シオ:「ったく、また無駄なボタン増えてやがるし、スクリーンもカチャカチャしやがって……。ん、何だこれ」
ヤン:「あ、これはね、『異世界探偵社クワツ』の今月の収支だよ。書類とか荷物とかの送料がかさんでるんだ。割引サービスは色々と活用してるんだけど、数が多いから、どうしてもね。ねえシオ君、経理とか興味ある?」
シオ:「んなもんに興味あるのは全世界で貴様ただ一人だけだ」
ヤン:「シオ君、人間の興味というものを数字で測るのはとても難しいから、興味がない、つまり『ゼロ』と言うことも、興味がある、つまり『イチ』と言うこともできないんだ。アンケートを取るにしても、回答者には『アンケートに答える』という意識がある以上、自身の持つ純粋な興味について完璧に表現するのは難しいし、その問題を可能な限り解消する方法や、アンケート以外の方法を使うとしても――」
シオ:「送料を浮かす方法なら知ってる」
ヤン:「――というのがここ十数年の課題で、昨年、ホバロ・ディオーロ氏が提唱した『ナグスマル法』においてはその課題についてはほとんどと言っていいレベルまで解決された一方で――シオ君が?」
シオ:「俺が知らないことなんかねえ」
ヤン:「さっすがシオ君! で、その方法って?」
シオ:「着払い」