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月森Ⅱプロローグ没案

☆資料やデータを整理してた時に見つけたので、載せておきます。月森読了済の方向け。


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冬の始まりの太陽がしつこく空の縁にしがみ付いて、全てを等しく赤に染める。その鮮烈な赤の中に目覚めて、僕は真っ赤に染まる掌を見つめていた。

赤は嫌いだ。熱いものもからいものも嫌いだし、照り付ける太陽も夏の暑さも嫌い。草木の生えない砂漠なんて、想像しただけで眩暈がする。
僕は炎を連想する全てを憎んでいる。

遠ざけなければならない。彼女が思い出さないように。
隠さなければならない。彼女が傷つかないように。
その痛みは彼女の人生に必要ないものだ。誰かが不用意に暴かないように厳重に蓋をして、彼女に気付かれないうちに処理しなくてはならない。

それは、破棄すべき記憶の灰。もう取り返しのつかない日々。血と欲と炎にまみれ、それでも確かに幸せだった瞬きのような逢瀬。
自らが選んだ道に後悔は無い。ただひとつ、心残りがあるとすれば、森に彼女を連れて帰ることができなかったことだ。――だがそれも、もうじき叶うだろう。

僕たちの利害は一致してしまった。
もう逃がしてあげられない。
あの森の全てが君を捕えようとするだろう。
かわいそうなセリアルカ。僕の月女神。
君が落ちる時を、僕はずっと待っている。


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セラが主人公なのにアルのモノローグから始まってるし、結構なネタバレを含んでいる気がして、入れようか迷っているうちに完結しちゃってボツになったものです。

2件のコメント

  • アルさん、最初の時点からいろいろ思い出してて、思い詰めてたんだなぁとわかるモノローグですね。
    改めて読むと、過去の記憶のあれこれを思い出します……^ ^
  • >羽鳥さん
    思い詰めてましたねー……森に連れて行けばアルさんの望みはほぼ叶うのですが、それでいいのかと良心とあの人の意思との間で葛藤していたと思います。でもセラを思って非情に徹することができないあたり某お兄様と違って優しいなと!
    コメントありがとうございました!
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