いつも拙い物語をお読みくださりありがとうございます。
現在、更新している物語は2つ、そのひとつ「プラス的 異世界の過ごし方」は521話まで。
ご、ごひゃくって、結構な話数ですよね。
その長い物語にお付き合いくださってる皆さまには感謝しかありません!
ひとつ解決!と思ったら謎が増えるテイストが多々あり、モヤモヤさせていると思いますが、
一応わたしの目指す着地地点に恙無く向かっております。
ただ着地地点までイベントがまだまだあり、わたし書いていると増えていく傾向があるので
長すぎてドンびかれるレベルな気がしますが、リディアのいく末を一緒に見守っていただけたらありがたいです。
もうひとつは「放課後レンジャー」現代ファンタジーに挑戦中です。
女子高生の優梨が、幼なじみの健ちゃんと、自分のウチに生えたダンジョンに挑んでいくお話です。
健ちゃんのバレバレな気持ちは優梨にだけ届かないのですが。
優梨がただ鈍感なわけではなく、ある出来事で優梨は誤解しているんですね。もうちょっとしたらその話が出てくるんですけど。
本日はクリスマスイブですね。
今日はその不憫な健ちゃんの兄、和兄視点のショートを貼り付けます。
物語ではまだゴールデンウィークのあたりなので、全くクリスマスとは関係ありませんが。
よろしかったら、読んでやってくださいませ。
わたしとわたしの物語と出会ってくださった皆さまに
素敵なクリスマスイブ&クリスマスとなりますように。
seo拝
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SIDE 加藤和宏『兄から見る弟』
「兄ちゃんが、いいこと教えてやるよ」
ポーカーフェイスを装いながらも、しっかり聞き耳を立てている。
シバ犬みたいだよなーと弟のことを思う。
主を決めたら、他は見向きもしない。一途。
「優梨には、はっきり言わないと伝わらないぞ」
健太は口の中で、もぞっと何かを言った。
「聞こえなかった」
「……言っても伝わんない」
は?と思ったが、叱られた子犬のような顔をしていることからして、事実なんだろう。
一筋縄ではいかないっていうか……。
でも、優梨だって健太のことを大好きだと思うけどな。
よく家に遊びに来ていた小学生の頃なら絶対だ。
いつも誰かの顔色を窺っているようなところはあったけれど、健太と真由には心を開いていた。特に健太には。それなのに、中学生になってから全然来なくなって……。
「お前たち、健と優梨と真由。すっごい仲良かったのに、中学の時、全然つるんでなかったよな? やっぱり女子ふたりとは一緒にいづらかったのか?」
あの頃は反抗期に拍車をかけると思って尋ねなかったけど、今なら聞けるかと思って聞いてみた。
「ちげーよ。俺が一緒にいると、男子が優梨たちにちょっかいを出すから」
思わず笑いそうになったのを、鉄壁の意思で押さえ込む。
「……お前さー。なんでセイバーの免許取ったの?」
「優梨が自転車に乗せてもらうの好きって言ったから。普通の自転車だと違反になるだろ」
真面目な顔して、何当たり前のこと聞いてんだって表情だ。
我が弟、なんでそんなに素直かつ、一途なんだ。
「でも、中学の時は優梨乗せてやったりしてないだろ?」
「約束したから」
「約束? 誰と? 何を?」
「真由と。中学の時は告らないって」
「なんだって、そんな」
「真由に告られた。好きな奴いるって言ったら、優梨かって」
真由も健太を好きだったのか。
「そんで?」
「そうだって言ったら、中学の時は告るなって。もし告ったらあることないこと優梨に吹き込むって」
「なんだそれは……」
「あいつプライド高いから。自分を振った奴が親友と付き合うのは許せないって。時間をくれって。高校生になったら好きにしていいって」
「で、お前、律儀に守ったのか?」
「……優梨になんかあったら嫌だから」
思わず健太の頭を抱え込み、わしゃわしゃしてやる。
「やめろ、何すんだよ」
「兄ちゃんはお前を応援してるからな」
健太は鼻を鳴らした。
真由も大切な幼なじみではあるから、無碍にできなかったんだな。
わりと強面で1匹狼の顔してるのに、情に厚いんだよな。
真由は群を抜いてかわいい子で、そして自分のかわいさをわかっている子だった。
優梨がよく真由を守るような位置にいたけれど、そう仕向ける、とは言い過ぎかもしれないけれど、そういうあざとさはあった。優梨には本当に真由が引っ込み思案で、気が弱く見ていたようだけど。
優梨の方が怖がりで、人見知りで、知り合いに発言をする時でさえ手を握りしめていたのを知っている。みんなの気持ちを汲んで、誰も悲しい思いをしないような会話をする子だなと思っていたけれど、いつも不安そうな何かを抱えていた。
それが健太と真由といる時だけ、楽しそうに、不安を忘れたようになるから、そんな3人を見るのが好きだった。
笑いころげて、子犬みたいにじゃれあう3人が。
「よし、健。優梨にいつもと違うお前を見せてやれ」
「いつもと違う俺?」
「優梨に意識されたいんだろ? 幼馴染の健ちゃんじゃなくて、男だって見せつけてやれ」
健太は考え込んでる。
「やめとく。あいつには今、幼なじみの健ちゃんが必要だから」
俺の弟は〝男〟だな。
自分の思いより、ただひたすら相手の思いを大事にできるのだから。