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いつもありがとうございます!

拙い物語をお読みくださりありがとうございます。
読んでくださったりのアクションで、書き続ける気力をいただいています。
ありがとうございます。

私は物語で、気持ちをひとつずつ進ませていくのが好きで。
この章も30話ぐらいで次の章に行くはずだったのですが
もうちょっと話数を取りそうになってきました;
次章前に終えておかなきゃいけない心の動きが、後2つありまして;
こう日常的な気持ちを追うことが多いので、戦いの最中で動きのあるわかりやすいプラスというギフトが疎かに見えるかなーとよく思います。
タイトル疎か、に見えるかなーと。
なんですけど、ラストには込めたいと思っているんですけど、ギフトであってもなくても
プラス的なことっていっぱいあると思っておりまして。
日々の生活の中に、リディアはプラスしてると思ってます。


只今494話『禍根⑤57回目の大逆転』まで公開しております。
折れていた心も、少しだけ浮上したようです。
ちょうど1日前ですね。
風邪篭城1日目。この日の夜の出来事です。
点呼に来た寮母、ローマンおばあちゃん視点です。
お読みいただければ幸いです。

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SIDE ローマン『時の癒し』

 4階まで階段をあがるのは大変になってきた。
 膝が痛むのだ。階段の上り下りに苦痛を感じたときに、寮母を辞することを決意した。
 ありがたいことに引き止められ、それから2年続けたが、体のあちこちにガタがきていいるのを感じ、お預かりしている大切なお嬢さまたちへのお世話が疎かになると危惧して、変わりを探してもらった。
 辞して半年が過ぎ、いささか寂しい気がしていたところに、どうしても寮母が見つからなくて、見つかるまでの間だけ、寮母をしてもらえないかと話をいただいた。
 ドーン女子寮の寮母が不祥事を起こしたらしい。
 それも生徒に手をあげたと。被害にあったのは1年生だったという。
 どんなに怖かったことだろう。そう思うと、怒りで身が震えた。
 ……スコッティーさん、ツンツンしている女性だった。
 自分は特別だと思っているようで、それは会話からも行動からも滲みでていた。
 学園の寮母であるから、審査はあったはずだし、身元も確かなはずだ。そう思ったのを覚えている。
 少しおかしな方と思ったのに、何もしなかった。だから子供たちが怖い思いをしたのかと思うと、罪悪感が湧き上がる。
 それで、次の寮母が決まるまでの間ならと、ドーン女子寮の寮母を引き受けた。

 貴族がひとりに、あとは平民のお嬢さんたち。
 寮母の暴挙で生徒たちは怯えていたというから心配したけれど、みんなすぐに懐いてくれる、人懐っこい優しい女の子たちだった。
 手をあげられたのは、よりに寄って貴族のお嬢さまだというから驚いた。
 スコッティーさんは自分を特別に見せたがっていたから、それで貴族のお嬢さんと衝突したのかしらとふと考えがよぎったけれど、迎えてくれた貴族のお嬢さまは、謙虚で心根の優しいお嬢さんだった。とても真っ直ぐな目をしていて、あってはならないことだけど、その真っ直ぐさが眩しくて、少々捻れているスコッティーさんが目の敵にしたのではないかと、思えた。
 まだ1年生だというのに、総寮長である公爵令嬢と渡り合っていたのには驚いた。いろいろな学園生を見てきたけれど、こんなに意思が強く、そしてやり切る力を持った子供も、初めての出会いだった。

 彼女の部屋のある4階にやっとたどり着く。
 あら。
 あの子たちったら。
 風邪で具合が悪いから、部屋にも近づかないようにと言っておいたのに。
 部屋の前には、お花や、食べ物を包んだような包紙や、ノートやいろいろなものが山積みになっていた。みんなから愛されているのね。
 そのほか、箱に詰めてきた預かったものたちを、横に置いた。
 桃色の髪の女の子。聖女候補さまだったかしら。
 深刻そうな顔で彼女を訪ねてきて、風邪で寝込んでいるといえば、その場で祈りを始めた。
 彼女が伝えたのかはわからないけれど、それをかわきりに何人もの生徒がお見舞いに来た。中には男の子もいて、寮内に入れないのはわかっていただろうに、お見舞い品だけ預けて行った。

 風邪をひいたのは心のようだけれど、あなたはとても愛されているのよ。
 みんなが元気になったあなたと会いたがっている。
 このお見舞い品たちが、傷ついた心を少しでも癒してくれるといいのだけれど。 
 9時ちょうどに、ドアをノックする。
「シュタインさん、体調はいかが?」
「大丈夫です。すみません、上まで来ていただいて」
 とても賢い子。人の気持ちを大切にする子。
 それでもドアを開ける気持ちには、まだなれないみたいだ。
「会わせられないって言ったのに、お見舞いが次々に届くのよ。
 ドアの横に置いておくわ。おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
 一段ずつ階段を降りる。1階にたどりついてもドアの開く音は聞こえなかった。上で明かりが漏れたりもしない。
 傷はそうとう深い。
 ドアベルが鳴った。
 こんな時間に?
 何かあったのかと思って急いで出れば、ラルフとメリヤスがいた。
「どうなさいましたの?」
「シュタインは、変わりないですか?」
 まぁ。報告はすぐに伝達魔法でしますのに。
「はい、返事はきちんとありましたよ」
「顔を見たりは?」
「ドア越しに声を聞いただけです」
「元気はありましたか?」
「あの子だったら、元気がなくても、元気なふりをするでしょうね」
 ふたりは叱られた子供のように、しゅんとしてしまう。
「信じて話したのでしょう? だったら最後まで信じなさい。それが道理というものです」
「ローマン女史には敵いません」
「当たり前です。あなたたちが鼻を垂らしていた時から知っているのですから」
「鼻は垂らしていません」
「女子寮と問題を起こして、先生に叱られ、よく泣いていたじゃないの」
「そんな昔のこと!」
 ふたりの顔が赤くなる。
 私にとって、いくら歳をとっても、子供は子供に見える。
「あなたたちが先生って呼ばれるんですものね」
 月日が経つのは面白いものだ。
「大丈夫よ。〝時〟というのはね、過ぎることが辛いこともあるけれど、誰にとっても贈り物なのよ」
 明日何が起こるかは、誰にもわからない。
 問題を起こしてばかりの子たちが、子供たちを教える立場になっていたりするようにね。
 時にはとても素敵な贈り物に出会える。
 あの子も時間が必要だってことが、自分でわかっているのね。
 だから休ませてあげましょう。時がきっとあの子を癒してくれるから。

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