関川二尋さんが『クロード葉月先生の徒然日記』二次創作的スピンオフ第二段を書いてくれました!

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『葉月の虫眼鏡~Hadsuki Loupe~』



クロードはさっきからてんとう虫を眺めていた。

「いち、にぃ、さん、しぃ、ごぅ、ろく、なな」

つやつやの真っ赤な体に、まん丸な黒い点が七つ、ついている。

不思議だ。それにすごくキレイだ。
クロードはもっと近くで見ようと地面に腹這いに寝そべり、頬杖をついて顔を近付けた。

黒い点はまるで神様が書いたみたいにきれいなまん丸だ。
それにすごくバランスよく並んでいる。

こういう形とか色は誰が考えるんだろう?
やっぱり神様なのかな?
だとしたら、すごくいいセンスしてる。
だってどう見たって可愛いし、綺麗だ。

「キミは、すごく美しいんだね」
それに答えたのか、てんとう虫はピクリと触覚を震わせた。

てんとう虫はゆっくりと葉の上を歩いて遠ざかってゆく。
「大丈夫だよ、キミを取ったりしないよ、こっちに来てよ」
するとてんとう虫は円を書くようにクロードの鼻先に戻ってきた。

「ね、ボクたちはたぶん友達になれると思うんだ」
くすくす。なんだか楽しくなって、自然と足が揺れる。

と……

「なんだか楽しそうだねぇ、クロード」
パパの声が聞こえてきた。
そして隣にパパが、同じ腹這いの格好で寝そべってきた。
たぶん会社から帰ってきたところだ。
パパは体が大きいから急に窮屈になったけど、なんかすごく安心する。

パパが同じように頬杖をついて、鼻先にいるてんとう虫を並んで眺める。

「ねぇパパ、てんとう虫の模様はどうしてこんなにきれいなんだろうね?」
「キミはいつも難しい質問をするねぇ」

そういうパパは何とも嬉しそうだった。
「パパはね、こう思うな。自然であることが美しさの条件だって」
「うーん……わかんないなぁ」
「いいんだよ、答えなんて沢山あるんだから。だから正しい答えが得られるように、ちゃんとモノをよく見るのが大事なんだよ」

そう言うとパパは寝そべったままポケットの中をゴソゴソと探った。
「お、あった、あった」
そう言いながら取り出したのは虫眼鏡だった。

「今日はおまえの誕生日だったろ? これでもっとたくさんのモノが見えるよ」
それはクロードの手の平よりもさらに大きなレンズがついていた。

「これは虫眼鏡。まさに虫の観察するのにピッタリだろ?」
そう言いながらクロードの目の前にルーペをかざした。

小さかったてんとう虫の姿が急に大きくなった。
同時にその細部がくっきりと見えた。
触覚、複眼、顎、独特の体のつくり、鮮やかな色と配色。
それはどんなに近くで見ても、肉眼ではとらえきれない繊細なものだった。

「……すごい、これ!」
「だろう?」
「ありがとう、パパ」

だが、そういうクロードの声も途中で小さくなってしまった。

虫眼鏡の向こうに広がる世界にすっかり魅せられていからだった。

おわり