• 異世界ファンタジー

思い付き 其の③

小ネタタイトル:『はい』と『いいえ』しか話せない激強い戦士の珍道中の3回目です

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前回のあらすじ。
戦闘力2000万パワーを誇る異世界転生したショータ・タカハシは【はい】か【いいえ】しか喋れない事が原因で怪しい人物と認定されてしまし牢屋に入れられてしまう。そして通訳を呼ばれる事態となったが彼は筋トレに精を出し始めた。

以下本編です。

通訳がくればまぁ大丈夫でしょうと思った俺は異世界転生の定番であるトレーニングを始めた。
異世界人は成長率がかなり優遇されているそうなので腕立て100回もすればボディビルだ―並みのマッチョに仕上がるだろう。
なので本来なら10回程度で十分なのだが、俺の考えは違う。

ゲームに出てくるラスボスとか裏ボスとかって第一形態が巨大なのに第二形態が人型になるじゃん?サイズが縮んだから弱くなったのかと思えば大間違い。

元々強大な力なのにその力を圧縮してさらに質を高める‥‥つまり超強化されるのだ。

なので俺が目指すのはその超強化だ。

「はい、はい、はい、はい、はいぃぃ!!(っふ、997回、998回、999回、1000!!)」

「はい(よし。腕立ては完了だ、次は背筋いくぜぇ!)」

気合を入れて筋トレに励み始めた。

そしてどのくらい時間が経ったのは解らないが、ふと前を見るといつの間にか人が立っていた。

「はい?(どちら様で?)」
「‥‥」

っく!こんな短い単語でもはいになるとは‥‥もはや呪いの類だろこれ!

ショータはそう思いながらも改めて牢の前に立った人物に目を向けた。

周囲が薄暗くて表情までは見えないが一番に目を引いたのはピン!と先端がとがった耳だった。
笹の葉に似た形をしたその耳はファンタジー世界の代表格と呼ばれる【エルフ】に特徴だ。

「は~い(まさか、この世界にはエルフがいるとは‥‥ぜひお近づきになりたいです!)」
「‥‥」
「はい(お名前は?)」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」

あ、これ通じてない?
予想ではこの人?エルフ?が通訳の人だと思ったんだが‥‥まさか違うのか!?

またしても予想外じゃ!と頭を抱えそうになったショータをよそに目の前のエルフ?がようやく口を開いた。

「おい。こちらの言葉は理解できるか?理解できていれば右手をあげろ」
「はい」
「よし。こちらの言葉は通じるな、では本題だ。難しい説明になるから簡潔にいう。私が通訳出来る時間は10秒だ。それ以上は無理だ」
「はい(え?…じゅ、じゅ…びょう?)」
「なので10秒で完結に纏めろ、さぁ、準備はいいか?」
「いいえ(待って!待って!待って!時間制限ってなに!?)

俺はこの時切実に思った。

【いいえ】が言えてよかったと。


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