• 異世界ファンタジー

非有の皇子×海鮮塩焼きそば



「閣下、此方が各地からの報告となります」

「教会の関係者は?」

「残っていた者達は各地其々地下の魔封じの牢へ。しかし司祭などは見当たらず…」

「呪返しを受けたか逃げたか…まぁいい。これから総力を上げて各地の教会跡地の浄化をせねばなるまい。浄化が出来る者を1人でも多く確保せよ」

「はっ」



 ノートメアシュトラーセ帝国、首都シャインファダク中央に鎮座する皇城の執務室に、国境門を護るダリル辺境伯とランガルトが転移門を使い早朝から詰めかけていた。


「お待たせして申し訳ありません」

「かまわぬ。無作法をしたのは此方側なのだから」


 事前に…というか数刻前に登城の連絡はしていたが、辺境伯と、呪われたはずの公爵が揃って突然皇城へ現れ、一時城中が騒然としたが、現在臨時で政務の指揮を取る前皇帝の関白だったボト大臣が対応してくれ、2人は執務室に通された。

「ヤクトシュタイン伯の資料通り、各地の教会からは精霊の子と思わしき者が詰まった像があり、土地からも多数の骨が出土致しました」

「……」

「……そうか」

「帝都ではモルゲンフルス公に頂いた聖水を教会跡地に撒きましたが、地下深くまで汚染された範囲が広く浄化魔法が使える者たち総出でも浄化に取り掛かっておりますが…」

「わかった…後日また聖水を届ける」

 しばらく教会の今後について話し合い、国としてエレオノーラの教会を棄教とすることが決定した。
 それ以外にも話を聞き、元側姫…グレモリーの父ヴァニタイン公爵が、皇帝の代わりに好き放題に摂政した結果、荒れ放題となった国だったが、賢明な貴族や、僅かばかりに城に残ったまともな臣下達が、ギリギリのところで国を運営してくれていたのは行幸だった。ヴァニタイン公爵家一派が退陣…というか異形になり人ならざる者となった時も混乱を抑えられたのは彼らのお陰だ。

「…それで皇帝は?」

「帝は…目を見開き起き上がりもせず、眠りもせず…まるで等身大の人形のような有様でございます。薬師も見た事がない症例のようで…」

「…」



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 ダリル辺境伯領ヤクトシュタイン 〜海辺〜


 ダリル辺境伯家の方々は、各種魚介のフライにたっぷりと盛ったタルタルソースが気に入ったのか、料理人さん達がダリル辺境伯夫人にお願いしてレシピを購入したいと聞いてきたので、購入は不要だが、たまごに気をつける様言ってレシピを教えた。それに喜んだ料理人さん達は、夫人の許可を得てダリル辺境伯家のレシピを教えてくれクヴァルさん達が喜んでくれた。

 夫人的には燻製と貝の浜焼きが気に入ったようだ。ワインと共に楽しんでいる。
 
 俺も辺境伯家の料理人さんが作ってくれたハーブの効いた焼いた白身魚や、胡桃など森の恵みのソース、そして魚のアラのスープなどに舌鼓を打った。

 さらにお楽しみはこれからである。クヴァルさんに鉄板を出してもらい、先ほどコソコソと練り上げ蒸しあげた中華麺で海鮮塩焼きそばを作るのだ。ふふっ。

 モーゼの海割をした時、ニガリを採取したんだけどニガリってカンスイにも応用が効くんだったわと思い出し、急きょ麺を仕込んだのだ。粉やたまごの配合はなんとなくだったけど良い感じに出来た。今日は焼きそばだけどラーメンを作る野望も射程圏内である。

(ふっふっふ〜)

『楽しそうですね』

(だってラーメンだよ?前の俺の年齢だとさ、胃がもたれてあっさりしたラーメンばっかり食べてたけどこれからはコッテリしたラーメンも食べれるかなと思ったら楽しみで)

『ラーメン…奥が深そうですね』

(そりゃね!俺も深みにハマる魅力的なラーメン…作れたら良いなぁ)

 不可視の手で、あったまった鉄板に脂を敷き細かく切ってもらったタコやイカなどの魚介を野菜と炒め合わせて麺を投入。香辛料と塩のタレで味付けをし母様とティーモお兄様に持って行ってみた。

 2人とも絶賛してくれて安心してダリル辺境伯夫人と次男さんにもお出しできたよ。

 残ったものはお付きの人たちで分けた。ダリル辺境伯家の料理人さん達が作ってくれた魚のアラの濃厚出汁スープ(ちなみに小骨など除去済)に麺を絡ませて食べてもめっちゃ美味しかった。もう完全なるつけ麺じゃないかな?他の人たちも真似してスープにディップして食べていたよ。

 あまりにも大量にバーベキューができてしまったので、遠くから見学していたヤクトシュタインの民たちにも配った。最初は辺境伯様の料理人の作った料理を…って遠慮していたけど、喜んで食べてくれて一安心だ。

 作った物は綺麗に無くなり、後は俺が調理器具や使った皿などに浄化をかけて後片付けもしまうだけである。炭の後片付けも収納魔法で収納して完璧である。料理人さん達が洗い物がなくて喜んでいた。

 釣りという名の狩り?なアクティビティーもバーベキューもみんなの笑顔が絶えず、俺も辺境伯家のレシピを貰えたし、新鮮な魚介や海藻も手に入ったしとっても満足した一日だった。

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