同棲している恋人が「今日は夕飯は不要です」と連絡をくれた。時刻は14時頃で、夕飯の支度に何一つ着手していない段階で連絡をくれるところがビッグラブ。本当に大好き。人生最後の愛する人であり、私にとって父母と並んで尊い人だと再認識する。誰よりも愛しい人だ。
その申告があった時点で、先日コストコで買ったという二本セットのプルコギ用のタレを贈与してくれた同僚に「今日はタレを使ってマグロユッケを作って一人で呑みます」と宣言した。
しかし、18時の定時を迎えた帰り道に思った。「これ、別に律儀にマグロユッケを作らなくてもどっか寄って楽しちゃってもよくね?」と。
いや、でも、マグロユッケも大好きだし美味しいし……迷うなぁ〜。と思いながらスーパーに向かっていた、はずが、気づいたら私はサイゼリヤに到着していた。アレッ!?と思いつつも、そう思うことすら茶番に思いながら、今やどの店舗の入り口にも備え付けられているアルコールを形式的に手指にシュッシュして入店した。マグロを買って切ってタレを開けて和えるとなると、後片付けが面倒くさいし……。と、使用済みの包丁とまな板を想いながら私はアルコールを手指に擦り込んだ。
サイゼリヤの注文方式は随分前に変わったらしい。(具体的にはコロナに突入したくらいだろうか)メニューに割り振られた番号を席に備えられている紙に記入して店員に紙を渡す、そういうシステムになっている。
まず最初に私が書いたのはムール貝。AA10。コレは譲れない。サイゼリヤに来るなら絶対に食べたいもの。
その次にワインのWN01。「サイゼのグラスワインは安いけど、その安さは単に安価だからではなく"本場イタリアのように水のようにワインを楽しんでほしい"という企業努力の賜物」と言う内容のツイートを見てからずっと陰ながら想いを馳せていたグラスワイン――白を頼んだつもりだったけれど赤ワインが届いたよ。メニューの写真では左白右赤なんだけど、注文用紙に記載する文言として掲示された順としては左赤右白、という微妙な欠陥にまんまとハマってしまったね。店員さんが唱える「赤のグラスワインお1つ」と言う文言にも"私が頼んだのは白ですけどね…"と思いながら口に出さずに頷いてしまったので、普通に赤のグラスワインが一番に卓に運ばれた。時すでにososhi...♡
そんなこんなで、その次に運ばれたブロッコリーのくたくたを食べながらワインを飲んで、Twitterに文章を投稿するためスマホを触る。
文章を組み立てながら、『我は本日も可愛かった#日記』という、数年前に書いて閲覧数だけ若干バズった裏垢を13個持っている女子大生の架空日記を思う。しがみつくように過去のバズに頼って社会人編の更新を始めたけど、アレはぶっちゃけ最近の自分を丸っと投影したただの愚痴なんだよなぁ。今読み返すとあの架空日記はとても酷い内容で、我ながら自分自身過去の人間性を疑うようなものである。今はある程度善良(笑)になったように思うけど…。
ちなみに、私が保有しているTwitterのアカウントは3つ。
・友人/被写体時代に繋がりのあったカメラマン/芸能活動関係
・カクヨムのアカウント(今は鍵付き)
・趣味で制作しているアニメ用のアカウント
そのうちの上記2つのアカウントで「一週間乗り越えてえらい⤴︎祝宴としてサイゼで飲んじゃおうかなドゥフフ」と言う内容のツイートを投稿している間に、"ブロッコリーのくたくた"が運ばれてきた。
名前の通りにくたくたに煮込まれたらしいブロッコリーをフォークで複数個刺して口に運ぶ。とても柔らかい食感。「何時間煮たんですか? 」と思わせるくせに、実は10分も加熱してなさそうな一品だ。シンプルな塩味が仕事終わりの舌にガツンと衝撃的なインパクトのうまみを刻む。おいしー。
続いて運ばれてきたのはAA10ムール貝のガーリック焼き。これ昔から大好きで、小学生の頃からサイゼリヤに来ると絶対に注文していた。
一般的には海鮮モノには白ワインが合うとされているが、間違いか正解かだなんてどうでもよかった〜♪
そんなことよりも、こちらは貝殻から身を剥がすときにかなりの注意が必要な代物なのである。貝殻と癒着している貝柱を剥がすのに苦労するのだ。欲張って貝柱ごと剥がそうとするものなら、勢い余って貝柱をすり抜けたフォークが貝殻に添えた左手親指と爪の間にグサリと刺さるのよ。それがとんでもなくいってえの。一人だからアピールする相手もいないのに、目を閉じて唇を噛み締めるくらいいってえの。でもおいしいの。なんてトラジックアイロニー……。
これで頼んでいた2商品が届いたけど、内訳としては貝とブロッコリーしか食べてないからこれを夕飯として済ませるのは心もとないかなー。などと思い、チーズとトマトが押しのハンバーグとグラスワインの赤を追加注文。
いや、ここで注文するとグラスワインは3杯目に突入してしまう。すでに若干フラフラしている。頭ではまともに家に帰れなくなってまてしまうからやめようと思っているのに、体は勝手に注文用紙にWN01と書いて、オーダーを取りに来た店員さんに「お願いしまーす」などとお願いしてしまったりしていた。赤か白か、それが問題だとハムレット風に脳内で自問自答してきたけど、それは本当にどうでもいい問題だった。
そうして運ばれてきたハンバーグをたべながらこれを書きつつ、Twitterに「人生ってほぼすべてギャンブルだよねえ」というような文章を投稿したりした。
だって、やってみないとわからないことだらけだもんね。
仕事や将来に向けての貯蓄について考えると不安で仕方なくなるけれど、人生における全てのものごとはギャンブルだと思えば気が楽になる。
ということを書いていると、「一旦家に帰ります」と彼から連絡が来た。(彼は彼のお父さんと出かける用事がある)
じゃあ私も帰ろうかな、と思い、精算しにレジに向かった。こんなにも美味しく充実した想いをして1,500円。
帰り道、UVERworldの"ナノセカンド"を小さな声で歌いながら帰った。たまに道端で遭遇する歌を歌う変な人は、実は今の私と同じなのかもしれないなぁと思いながら歩いた。