この街の物語は、これにて終わりました。
レクシスの成長ぶりをここまで見てくださった皆さまには深く感謝を……。
まだまだレクシスたちの旅路は終わりませんが、覗き見をするのはこのあたりにいたしましょう。
彼らが最後の地までたどり着くことを祈りましょう。
今回の物語の鍵は『理性』と『感情』です。
レクシスはときにはゾッとするほど理性的であり、普通の人ならば迷う選択を、選択すらせずに突き進みます。その過程で出た障害や雑事は全て自分で受け止めながらも、前へ、前へと進んでいきます。ある種の自傷行為ですね。レクシスは毎日のように亡き妻であるガリテア、そして自分の育った故郷であるアルミオシオンの夢を見ています。──そう、毎日見ているのです。それが今のレクシスの根源であり、無力感の現れ、それに抵抗しようとする行いなのでしょう。あの日から、レクシスの時間は雪の中で止まったままなのです。
だからこそ、『理性的』でいられる。
常人が躊躇うようなことでも、躊躇なく実行できる。
──あの日、自分の手でガリテアの生命維持装置を止めた時のように。
そんなレクシスに傘をさしてあげるのは、レクシスよりも年上な幼馴染であるパトリツェア(パトリツィア)です。彼女はずっと後悔していました。
なぜ、あの日レクシスにガリテアを殺させてしまったのか。なぜ、あの日自分はそばにいられなかったのか……。そんな後悔を胸に、パトリツェアは帝国の下について働いています。表向きはレクシスを監視する役柄として、裏ではレクシスの理解者であろうと努力をして。レクシスに償いをするために。ガリテアに償いをするために。微かな想いに蓋をして。
なお、『監視官』の異様なまでの強さは、ワインバーグ帝国の秘術──聖女の儀を身体に受けたからです。強烈な肉体改造と薬物投与により、無敵の肉体を得たパトリツェアは、帝国でも上位に入る武力をレクシスのそばで振るおうと決めました。
レクシスは最後には成長して、『感情』で動くことができました。パトリツェアは……冷静沈着にみえて、いつも心のなかではハートが唸っています。