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本日、カクヨムコン10短編参加作品『創庭のガデニア』が完結いたしました!
https://kakuyomu.jp/works/16818093089431477860ガデニア様がどうして庭を創っていて、なぜその庭で不思議なことが起こるのかの答え合わせをして完結です。
たくさん妄想の余地を残しておいたので、ぜひ余白に思いを馳せていただれば幸いです。
しかも最後にアロンくんと木の王がガデニア様を巡って静かにバチバチしていましたね(笑)
一昔前に流行った「魔女集会」じゃないですが、拾って育てた男の子が成長してかっこよくなるアレです(^ω^)スキィ
流行をガン無視した不遜でクールなプライドチョモランマヒロインガデニア様が、読者様に少しでも気に入っていただけたら嬉しいです。
以下、一万字に入りきらなくて泣く泣くカットしたお庭創りシーンになります。ここで供養させてください……😇(一番重要では???)
最後にピクルーからお借りしたガデニア様のイメージイラストも載せてあります。
口元を隠すフェイルヴェールの素材がなかなかなくて断念したのですが、どうか心の目で見てください~!٩( ''ω'' )و
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今宵は月の神《ツクヨナ》の力が最も強まる満月。ガデニアの庭創りにあまり関係はないが、ランタンが不要なほど明るい月光は作業が捗る。
屋敷の人間が寝静まった真夜中に中庭へ出た庭師の師弟は、夜風に揺れる花々へ耳を傾けた。
『ガデニア様、ガデニア様!』
『さぁこちらへ。お顔をよく見せてくだされ』
『まさか今生でお会いできるとは、天候神《ユピル》様と太陽神《デイル》様のご加護じゃあ……!』
「ガデニア様、花たちは何と?」
「再会を祝すと言ってくれているわ」
アロンは柔らかい髪を風に靡かせ「そうですか」と少し誇らしげな微笑みを浮かべた。彼は尊敬する師匠が花々から愛されている様子を見るのが何より嬉しい。
「ここの手入れはデイジーが?」
『はい。庭師たちが去ってからはあの娘が一人で世話をしてくれています』
『あの意地汚い継母が我々を根絶やすと言った時も、必死に庇ってくれました』
「だから私にデイジーを助けてほしいと言ったのね」
昼間、ガデニアは豚親子の嘲笑を聞き流しながら、助けを求める彼らの声に耳を澄ませていたのだ。ランドール家の当主オリバーと同じように、彼女にも尽くすべき義があった。そのための庭創りでもある。
ガデニアは改めて中庭を見渡した。
奥行きのある四角いスペースを劣化した石壁が囲う、こじんまりとした庭だ。中央の小さな段差を利用した人工滝《カスケード》は干上がり、コマドリのレリーフが施された石の噴水には亀裂が走っていた。奥の木陰にひっそりと佇むのは愛神《ヴィーチェ》の使徒の石像だろう。象徴的な弓矢を携えた美しい女性の彫刻に、蔦が鬱蒼と這う。
時間さえあればエクステリアも新調したいところだが、無機物はガデニアの力が及ばぬ範囲だ。今回はあるものを再利用するしかない。それに、おそらくその方がデイジーも喜ぶ。
「アロン、道沿い全てにネモフィラの種を。奥の天使像《アイキャッチャー》の後ろにライラックとキングサリ、それにチョイジアを植樹させるわ。カスケードは再利用するけど、噴水は撤去して」
「はい、ガデニア様」
次々と飛んでくる指示に返事をしたアロンは、肌身離さず持ち歩いている大きなトランクケースを開けた。中にみっしり入っていたのは、瓶詰にされた植物の種や球根。ざっと百種類ほどある。どれも同じに見える瓶からネモフィラの種を的確に選び、素肌が剥き出しの寂しい地面へまんべんなく落とす。その足で庭の片隅に窮屈そうに生えていた樹木へ向かい、挿し木用の枝を手際よく切り取った。師匠に言われた通り、天使像の後ろの地面に枝を突き刺す。噴水の撤去作業も慣れたものだ。ガデニアは自然を意のままに操ろうとする古典主義が嫌いで、彼女曰く「だって水が下から上に流れるわけがないじゃない」と――。
指示を一通りこなしたアロンは、雑草に紛れて咲く花々を植え替えるガデニアの後ろ姿を恍惚とした表情で眺めた。
肌を見せない黒衣は、まるで喪服のよう――だが彼女はその姿で多くの命を生み出す。そのちぐはぐな様子に、アロンは堪らなく惹かれるのだ。
「さてと……」
準備を終えたガデニアを、古《いにしえ》に竜の姫が月へ捧げた月白鱗《げっぱくりん》が照らす。太陽のように輝く黄金の瞳を閉じ、深く息を吸い込んだ。
「これから『創庭』を始める」
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『The Lady Of Hera』メーカー様からお借りしました。
リンクはこちらです。
https://picrew.me/ja/image_maker/227881作者:헤라𝐇𝐄𝐑𝐀様(Xアカウント
https://x.com/K_pupu)