を残しておきます。twitterにも書いたんですがこっちの方が後から自分で参照しやすいのと、もう少し書いておきたいことがあるような気がしたので、こういう形で。
一応、直接のネタバレは含みませんが、もし本文をこれから読んでいただけるのであれば、以下の文章には目を通さない方がいいと思います。
「無無意識の庭の殺人」書いたの:2014年7月頃
どういうきっかけだったか忘れましたが「無意識の無い部屋」というのを思いつき、その部屋で使えるロジックを絞り出したらこうなりました。事件の詳細をほとんど詰めないまま書き始めていたので、リーンとの思考実験トークは「庭」の前振りとしてのケレンのつもりでした。さすがに「この登場人物はこうなんじゃないかな?」という予感くらいは持っていましたが。この時点では連作にする予定はなく、舞台設定は脳内お花畑の探偵役が箱庭フーダニットを楽しむために私が楽した結果です。
ミステリとしては、とてもスタンダードな特殊設定ミステリといった感じで、おそらく私がこれまで書いた中で一番ほめてもらった短編です。決まり手のロジックには自信がありましたが、上述の理由で動機周りのお話は私の中ではつじつま合わせくらいの気持ちでした。読み返してみるとけっこう隙が大きいです。
東方要素としては、容疑者が古明地姉妹のように見えますが、古明地姉妹です。
「何時不明の鐘の殺人」書いたの:問題編・2014年末、解決編・2015年4月
「庭」と「墓」をつなぐために書いた話です。犯人当てに供す用に問題編だけ先に書いて、しばらくほったらかしにしてました。犯人当て用の版では実力に見合わない無茶な趣向をやって火傷を負ったので、マイルドに修正された経緯があります。具体的には、容疑者が全員嘘ついてました。ところで、ランダムに鐘の鳴る時計塔……特殊設定かこれは?
ミステリとしては、「庭」以上に一点突破の限定を試みており、魅せるポイントが完全に一点だけなのにどうやって解決編盛り上げるんだよと苦労した覚えがあります。そういう演出的には形になっていると思います。あんだけごちゃごちゃやっといてこれだけか、という肩透かし感がどうしようもないので、どうしようもないです。
東方要素としては、求聞口授に載っていた四猿が発想の元、というくらいです。
「死体礼賛の墓の殺人」書いたの:2014年9月頃
殺人事件を扱うフーダニットを書けない時期がありました。具体的には2010年末から「庭」を書くまで。なぜ書けなかったといえばひとが死ぬというのはたいへんなことなんだなぁという実感を自分の中で消化しきれていなかったからです。ですので「庭」を書けたことがとても嬉しく、これを連作にすれば思う存分殺人事件を書ける!と喜んでいろんな設定をノートに書き出していました。ふと、気付いたことがあり、気持ちが膨れて、こうなりました。
ミステリとしては、連作中もっともごちゃごちゃしています。ごちゃごちゃしているくせに例外処理に頼りすぎてルールが息をしていません。読み返してみて一番実力不足を痛感したのがこの短編です。同時に、最後に明かすホワイは発想だけなら連作の中で一番好きです。舞台は面白そう、キャラも悪くない、アイデアは好み、ただひたすらミステリが下手でした。未だに心残りがあります。
東方要素としては、素敵なお墓で暮らします。被害者の名前変えた方がいいと思う。
「六散分離の兵の殺人」書いたの:2015年9月頃
トランプ兵が殺される話を書けそうだな、と思っていました。彼らの身体構造は私にもいまいち理解できていないのですが、手足と頭部が細い線で胴体につながっている→簡単に切れそう→首切りモノにしたい!という感じで、首切りモノをやるつもりでした。通常の首切りモノが「なぜ犯人はわざわざ首を切ったのか」と問いを立てるのを逆手にとって、「犯人が首を切ったのはわざわざではない、トランプ兵は首が線だから、犯人にとって首切りこそがもっとも簡単な殺害方法だったのだ」というロジックを使うつもりでした。でもどんな事件になるかまったく思い浮かばず、とりあえず書き出してみて、さあ事件の概要を説明するぞというシーンにさしかかった瞬間まったく別のトリックを思いつきました。その結果バラバラ殺人になりました。終盤の展開は「墓」を書いたころからこうなるんだろうなと思っていたそのままです。
ミステリとしては、犯人/トリック当て入門編、といった難易度になっていて、これはこれで悪くないんじゃないかと思います。ビジュアル的に映えるトリックなので、上手く隠して使えばもっと効果的になる気がします。知人に読んでもらったのですが動機の狙いは理解してもらえませんでした。
東方要素はありませんが、この作品のトリックを思いついたのとほとんど同時に「柳の下の首無し幽霊」(赤蛮奇が主役の首切りモノ短編)のアイデアが浮かびました。
「逆様神様の塔の殺人」書いたの:2015年6月頃
「墓」を書く前にこの連作が全5話か6話になることは分かっていたのですが、「塔」を書いてみたところとても最終話っぽくなったので、最終話にしました。書いた順番が話数と異なるのは連作としての流れだけ決まっていて事件を思いつけた順に書いたからです。リリス・バースデイにはもっとポテンシャルがある気がします。親バカかもしれません。アイリ当人にはさして思い入れがないです。6話があるとしたらツワミーがコジャクを殺す話でした。書かなかったので、どんな話になるのかは分かりません。
ミステリとしては、ハウダニット特化の作ですが、弱いの一言でいい気がします。重力逆さまにしといてやることがそれか? しかも、書いてから指摘を受けたのですが、トリックの原理やスケールや象徴的なワードが丸被りの先行作があります。未読だったので慌てて読みました。よりにもよってこの人の作品かーとなりました。
東方要素としては、城ではありませんが逆さまの建物です。
「エピローグ」書いたの:2015年9月
「塔」が分かる人だけ分かってくれという自分勝手な書き方になったので、あらためて言わせました。必要だと思って書きましたが、いま思うと、きちんと物語の中で伝えるべきことだったような気がします。これを書いたときよりいまの自分はもう一歩か二歩ほど進めましたが、まだまだ手の届く距離で、書いたときの熱も冷めきっていません。誰かに届いたらうれしいです。