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ご冥福をお祈りします

中学校の同級生が亡くなりました。今知らせを聞いたばかりで動揺しています。クラスメイトが亡くなるのは初めてのことではないのですが、ぼくにとって彼は憧れとも言える存在でもあったので特にショックが大きいです。
彼は6組でぼくは9組で、能力別の授業を受ける時だけクラスが一緒だったので、同級生と言っても友達と呼べるほどさほど深い付き合いはありませんが、背は小さくても妙に迫力のある彼は当時から気になる存在でした。彼からも言葉をかけられたり、時々はからかわれた覚えもあるのですが、詳しくは覚えていません。一番覚えているのは、ぼくが学校でトイレを済ませて出ようとした時に入り口でバッタリ出くわした彼に
「おまえでかくなったなあ」
と驚かれたことです。結局、彼の背はあまり伸びはしなかったようですが、そんなことは何の問題もない、ということを後年彼は自ら証明しています。その後、ぼくは転校してしまい、彼とはそれっきりになってしまいましたので、彼はぼくのことなど忘れてしまったでしょうが、ぼくの方はあるきっかけで彼を思い出してからは、いつもどこかで気にしていました。
格闘技が好きなので、修斗の選手に「KID」というホープがいるのは知っていました。野性味のあるルックスと荒々しいファイトスタイルですぐに人気者になった「やんちゃ」で怖い選手だと思っていました(のちのち、リングドクターを蹴って問題になったこともありましたが、その件は蹴ったのではなく「足で尻を押した」だけというよくわからない決着になりました)。なにしろ当時はあのエンセン井上の身内でもありましたから。
そんなある日。KIDの修斗の試合をテレビでぼんやり見ているうちに「あれ?」と何か記憶を呼び覚まされるものがありました。
「この人、知ってるぞ」
それでKIDが同級生だったと思い出したわけです。ミドルネームの「KID」しか目に入らなくて本来の苗字と名前が頭に入らなかったので気づくのが遅れてしまったわけです。我ながら迂闊すぎますが。
そこからの彼の活躍は改めて詳しく書く必要もないでしょう。K1に参戦して「小さな巨人」村浜武洋を下し、「HEROS」では宮田和幸を4秒でKOし、魔裟斗をK1ルールであわやのところまで追い込むなど、彼らしい常識を超えた破天荒な戦いぶりは格闘技ファンのみならず多くの人の心をつかんだはずです。ぼくが一番印象に残っているのは、ジャダンバ・ナラントンガラグのハイキックをかわしてから右のパンチでKO勝ちした試合で、「悪魔王子」ナジーム・ハメドもかくや、と思わせる恐るべき身体能力には舌を巻きましたし、少年時代の短い時期にこういう天才と一緒の場所に居られてよかった、と誇りに思いました。いや、「天才」ではなく「神の子」と書くべきですね、ここでは。
彼もいろいろ大変だったとは思いますが、彼はいつでも彼らしく生きていた、とぼくは思ってますし、堀口恭司、矢地祐介など今の格闘技界を背負うホープが彼のジムから出ていることを考えると人徳もあったのだと思います。出来れば一度彼に会って挨拶したいなあ、とは思っていましたが(彼はぼくの田舎にもよく来ていた)、残念ながらそれはかないませんでした。病気だとは知っていましたが、彼ならきっとまた健康になって戻ってくるとばかり思ってましたから、まさかこんなに早く亡くなってしまうなんて。信じられませんし、信じたくはありません。でも、ぼくは彼を忘れることはありませんし、彼はリングの中でも外でも精一杯戦い抜いたのだと信じます。

山本徳郁くん。
どうか安らかにお眠りください。
本当にありがとう。

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