• 現代ドラマ
  • エッセイ・ノンフィクション

お願いされた感想の件について

みなさんお疲れ様です。
お騒がせしております。
なんとか熱は、下がりました。
いつもどおりなら、治るまでに最低一週間。
完全回復まで一か月ほどかかります。
実際、病み上がりで咳は残ってますし、ふらつくし、すこぶるポンコツです。
正直、無理ができません。

今回の自主企画『第一回 さいかわ卯月賞』の主催者である犀川よう様からの、「もし作品を読まれておられてましたら、『感想を書きたい作品』1作にご感想をいただけないでしょうか」と、お願いはご辞退させていただきたく思います。

そう書くと、楽しみにしていた方には申し訳ないですし、わたしとしても、ふがいない年長者の姿を、年少者にみせたくありません。
現状、できうる限りの感想を、ここに書きたいと思います。



今回の企画には、テーマ「春」が決められています。
春ときいて、多くの人はなにを連想するでしょう。
桜や花見、入学や卒業、就職、入社。出会いや別れといったことだと思います。
作品を書くとき、みんなが思い浮かべるものを、あえて外すことからはじめると思います。だれもが思いつくものを書くということは、凡庸な発想しかできないと思われてしまいかねません。
覚え違いでなければ、桜の上に猫がいた話を二作、みた気がします。
よくできていたとしても、他作とかぶると、ありふれた発想とみなされかねません。

豆ははこ様の『春の星』では、桃の花がでてきます。春だからといって、桜以外の花を用いているところがいいです。また、「また、星の季節がきたね」の書き出しから、読者に大きな謎を投げかけ、花の形から春の星と形容したのは妻であり、彼女は昏睡状態にあるという流れで物語をいざなっていく書き方は良かったです。

佐藤宇佳子様の『佐砂井の郷』は二人称で書かれています。一人称、三人称で書かれた作品が多い中では、貴重であり、挑戦的でもあります。なにより、二人称の主人公あなたとは、読者になります。一人称とはちがった形で、作品世界である郷へといざなっていく書き方が良かったです。読者を楽しませようとする意図を感じます。

幸まる様の『繋ぐ季節』は、四季の妖精を描きながら、冬を嫌う人の声をきいて、冬の時期を減らしてしまうも、世界のバランスが崩れてしまう様子を描いています。現在世界で起こっている異常気象を別の視点から描き、四季の妖精が仲を取り戻していく結末からメッセージ性が感じられ、大人向けの童話のようでもあります。

ヒニヨル様の『ハルちゃん』は、「春の雨は冷たい」という書き出しから、そうだよねと読み手に頷かせてくれます。一つ納得すると、続きも読んでみようと思えてくるので、書き出しがうまいです。しかも、描かれているのは、ハルちゃんとガキタくんの恋の話。勘違いで失恋されるも、それも思い違いだったと二人は結ばれる流れ。起伏がよくできていて、雨が小雨になってきたことから、雨降って地固まるを思わせる終わりは実にうまい。二人揃って、ハルガキタ。だけど、ガキタはあだ名で垣田が本名だと明かされるとこも、よかったです。

大隅スミヲ様の『はるの風』の書き出しは、「梅の花が咲き乱れていた」とあり、平安時代を舞台にしているのがわかります。春の花といえば、当時は梅。春の花は桜だけではないことを選んでいるところをみても、よく考えて書かれています。しかも、お話に出てくる言葉の意味を、読者にさりげなく伝えているところから、読み手にお話を楽しんでもらおうとする作者の意図を感じます。

しぇもんご様の『春に咲くおじさん』は、SFです。春になると咲いて、次の満月の夜に散り、金言めいたことを言うおじさんを面白がって、最盛期には上野公園の桜の一割ほどがおじさんに変わったほど春の風物詩となったが、「桜は春しか見られませんが、おじさんにはいつでも会えるでしょう」と当時の都知事の言葉と、一本のおじさんが残した言葉「構わねえよ。もともと見せもんじゃねえしな」により伐採。いまでは、ほとんとみられなくなった二十年後。庭でおじさんを育てる就活生の話。シュールな世界を描きながら、リアリティーを感じさせつつ、面白いと感じさせてくれます。カクヨム甲子園だったら、読売新聞社賞が取れるのではと邪推したくなります。

犀川よう様の『別れの餞。』春の香港を舞台にした、男女の性関係を描いた作品は、読者を選ぶのではと考えます。作品から、いつごろの香港を舞台にしているかわかりませんが、性的なものを描きつつも純文学であり、表現したい意図を感じます。時代背景と春画的要素、劉との別れからテーマを描いていると考えます。知らない世界を描きみせているところは、上手いと思います。

上月祈様の『桜菫抄』は、春に八幡神社を参りを描き、桜や菫を用いて、怪異の話をですます調で書いています。登場人物の性格描写に活用できるだけでなく、時代背景や人物の立場を丁寧にできるため、作風にもあっているし、読者を意識した書き方だと思います。

大田康湖様の『桜の花びら、ひらり』は、桜まつりが行われている隅田公園を舞台にしながら、次回作に悩む漫画家の橘梨里は、マンガ『厩橋お祭り食堂 誕生篇』の制作に協力した横澤康史郎氏が一年前になくなったことを思い出し、公園で横澤康史郎の友人、丹後論たちと出会い、亀戸の『Ron』でダイニングバーを経営していることを知る。次回作は、横澤氏の家族をもとにし、フィクションの中だけでも息子さんと和解させてあげたいと思いつく話。桜が咲く瞬間を撮影した娘の話もうまく噛み合わせて、次回作に思いつく展開は、短編として上手くまとめ上げられています。

チャーハン様の『人為的な春』は、SFです。AIに春を表現させるのに苦労した主人公は、彼女が行きたかった高校の満開の桜をみせるも、制限時間となり「家族思い出しサービス、カコミ」の終了が訪れるという、どんでん返しが描かれています。テーマから連想される桜や入学、別れなどを使いながら、独特な切り口で描きまとめているところは、読者の胸を打ちます。

クロノヒョウ様の『嫌いな春と、ランドセル』は、春になると落ち着かなくて逃げ出したくなる主人公が、六年付き合った彼と別れて単身都会で生きていく話です。春が嫌い、ランドセルに好きなものを入れて家出しようとしたら重くてやめたことを前半で描き、後半は考えが変わる姿が、短い話の中で描かれてまとめられているところがよかったです。元彼からのメールで、主人公に、桜も春が嫌いかもしれないと親近感を与えてから、桜も毎年ちゃんとやってるから、気にせずやっていけばいい、一人で自由なんだし、重かったらおろして、心を軽くして頑張れとエールを送られて「初めて春を気持ちいい」と感じて終わるから、読後感が本当にいいです。

などなど。
応募されている作品には、テーマから独自に発想を飛ばし、他にはないようなアイデアで書かれたものが多く応募されています。
読んでみて、すごいなと素直に感服し、こういう方々もカクヨムを利用されているのだと知れて、とてもいいきっかけとなったと素直に思います。
じっくり読んで、感想をかけたら良かったのですが、叶いそうもないのでそこは申し訳なく思いました。
ところで、大賞にはどんな作品がえらばれるでしょうか。
一般論ならば、まだ出会ったことのない新しい王道です。
つまり、テーマ「春」から連想される、桜や花見、入学や卒業、就職や入社、出会いや別れといったものをストレートに選び、作者独自の視点で描きながら、いままでにない斬新な切り口や見方、捉え方をしつつ作品内容にあった秀逸な文章で表現したもの。くわえて読者に、読中読後に感動の変化を与える面白い作品です。この場合の面白いは、趣深い。英語では、インタレスティング。今ドキなら、エモい。
友達に「あの話、すごく良かった」と、自慢してすすめたくなるような、他の作品にくらべて飛び抜けた作品のことです。
カクヨム甲子園やカクヨムコン、ラノベや他の小説賞の大賞に選ばれる作品も、ひと言でいえば、新しい王道を書いたものです。
本企画でもいえるのかは、わかりません。
『第一回 さいかわ卯月賞』とあるように、はじまったばかりの自主企画の賞なので、カラーが確立していないと考えます。
そもそも、主催者様が選びますので、わたしには考えつかないような選考基準を設けられていることでしょう。

応募作品の一部しか読んでいませんが、個人的な感想として、上手い人が多く参加されている気がいたしました。
とくに、読者を楽しませようと意識して書かれている感じがすごくして、唸るばかりでした。

以上です。
ここだけで、読んでください。
コピペ、切り抜き持ち帰り厳禁でお願いします。


ダラダラとしたものを読んでいただきまして、ありがとうございました。

3件のコメント

  • ご体調のすぐれない中、書くも温かくまたするどいご意見、ご感想を賜りありがとうございます。

    もし可能でしたら、本近況ノートにつきましてリンクの許可をいただきたく思いますが、いかがでしょうか。

    くれぐれも無理はなさらぬようご自愛くださいませ。本件の返事もご体調が回復してからで結構です。
    この度は不躾なお願いでしたが、ありがとうございました。
  • リンクの件、いいですよ。
    無理した結果、悪化して熱がぶり返しました。
    養生します。
  • ありがとうございます。
    こちらにてご紹介させていただきました。

    https://kakuyomu.jp/works/16818093074716355261/episodes/16818093075969691751

    くれぐれもご自愛くださいませ。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する